軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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ビアンカさまの講習会であれこれと高位貴族と下位貴族における『お茶会』に対するものの見方、招待する側される側での対応について、使用人に主人が求めるもの、その逆……とにかくあれこれと学んだ夜。

私はアルダールと城内の食堂で夕食を共にしていました。

城内にある食堂は誰でも利用することが可能で、空きさえあれば個室も利用可能という至れり尽くせりな場所なのです!

時には偉い方が部下を連れて食堂に……なんてこともありますから。

勿論、お値段もお手頃価格、それなのにお城の料理人が作るお料理ときたらそりゃ利用しない手はありませんよね。

これぞ王城で働く醍醐味!

……なーんて、実のところを言うと平民出身だったり下級貴族出身の使用人は実家からの仕送りがなかったりしますので、こういう場所がないとやりくりが厳しいんですよ。

現実は世知辛いのです。トホホ。

城内で部屋を与えられている人はその家賃を差し引いた給金だと思っていただければわかりやすいでしょうか。

それでも普通に城下で部屋を借りるよりもずーっとお安いですけどね!

食事は食堂を使うのが一般的です。

王女宮では賄いが出ることもありますが、それは専任のシェフを雇っていることと少人数だからできることであって……本来なら私たちも食堂を利用するのです。

私もアルダールもこの食堂にはいつもお世話になってますからね……!

今回は個室も借りられたのでのんびりお喋りしながらです。

ちなみに今日のディナーセットは魚のパイ包みにサラダ、パン、オニオングラタンスープでした。

男性陣の中には足りなくて他のお皿をお願いする人もいるんですが、アルダールもガレットを追加してましたね。

「……というわけで、ビアンカさまからご指導いただいてアリッサさまを実際におもてなしするという課題を与えられたんです」

表向き、ビアンカさまが『茶会を開く』という淑女レッスンの一つとしてプリメラさまに課題を出したということになっています。

その相手に陛下の信も厚いバウム伯爵さまの奥方、更に言えば婚約者候補であるディーン・デインさまの母君を選びプリメラさまのもてなしについて話を聞こうというものなのです。

対外的には将来の嫁姑関係を公爵夫人が橋渡しをしている、貴族派と軍部派、王家は恙ない関係を築いていると示すものにもなるわけで……。

中身はただ単に仲良くお茶したいですね! っていうだけなのに、なかなか小難しい話ですよね!

まあそんなこんなでこの話題は別に隠すものでもないからここでも話すことが出来るんですよね。

アルダールは私の言葉を笑顔で聞いていましたが、少しだけ考える素振りを見せました。

「なるほど。じゃあその日は私も夜勤は外してもらわないといけないかな?」

「え?どうして?」

「義母上のことだ、その茶会の席が済んだら私に面会を申し込んでくるんじゃないかと思ってね。あれやこれやと自慢話を聞かされるのだと今のうちから覚悟しておくよ」

「まあ!」

自慢だなんてそんな。

まあプリメラさまと直接お言葉を交わす機会なんてなかなかありませんからね……アリッサさまも将来の娘、あるいはバウム夫人を継ぐ相手との対話をきっと楽しみにしていらっしゃることでしょう。

それらを差し引いても天使のようなプリメラさまとのお時間、これを楽しまない人などいないと私は思っておりますけども。

私もアルダールの幼い頃の話なんて聞かせてもらえたらなあと思っているので、実は楽しみでなりません!

これは彼に秘密ですけどね……バレている気がしないでもありませんが、秘密なんですってば。

「それはそうと、私たちの婚約について……顔合わせの日程調整を両家で始めることになったと親父殿から言われたよ。それに先駆けて、というのもなんだけれど次の休日に町に出られないかな」

「町に? ええ、構わないけれど……」

「婚約に際して指輪を贈るのに、ユリアの意見を聞きたいんだ。今のうちから発注しておけば、顔合わせが済んで婚約式の前には完成しているだろうし……少しでも早く、贈りたいと思っているから」

「……え、ええ……あの、でも、そんなすごいのじゃなくていいのよ? シンプルなやつで……」

「またそんなことを言って。こういうのくらいいいだろう? 一緒に選びたいんだ」

うう……確かに! そういうことに! 私だって夢見たことがないわけじゃないですけども!!

正直なところをいえば、特別なものですからね。一生の宝物ってやつでしょう。

それなら確かに細部までこだわって、長年愛用できる品を選ぶのが大事なのです。

特に婚約指輪は貴族令嬢にとっては華やかなものが良いと昔からいわれており、どれだけ相手(とその家)から大切にされているかを示すものともされていますからね……。

婚約式には両家家族の他に親しい方々や、横の繋がりで上位の方にもお越しいただいたりするのが貴族式。

その時に将来の花嫁がちゃちな指輪なんて着けていたら品位を問われるんですから!

「まあ、私は騎士爵になるのだし婚約式だって内々のものになるだろうけれど……せめて、きみが恥ずかしくないようにこのくらいはさせてほしい」

私が言い出せないことを見越してアルダールがこうして誘ってくれているのだろうとわかっちゃいるのですが、どうにもこうにも恥ずかしくて素直に……ああもう!

「……ありがとう、アルダール。仕事中はお互いネックレスみたいにすることも考えて、チェーンも注文してもいいかしら」

「いいね。そうしよう」

少しずつ、少しずつ、現実的なものになっていくこの過程はそれでも夢みたいだと思ってしまうのです。

今だってなんかこう、ふわふわとした気分にですね……。

ついつい緩んでしまいがちな表情を引き締めるのが大変なんですよ。

でもそうですね、お互いの両親が祝福してくれているので、問題なく婚約までいけるでしょうし……もうその先の、婚約式について考えてもいいんですよね。

「ああ、そうだ。指輪の件もだけれど、一つ相談があるんだ」

「相談?」

なんだか照れくさくて笑い出してしまいそうなのを堪えている私に、アルダールは少し困った顔をしながら頷きました。

「実はね、婚約する予定であることを近衛隊の隊長に報告したんだ。まあ、親父殿から条件を出されてそれを隊長も了承しているからどういう事情かはあちらもご存じだし、報告をね」

「ええ」

そうよね、アルダールが私と婚約するためにバウム伯爵さまにかけあった結果、何故かアルダールが各地のモンスター退治に駆り出されることになったんだから隊長さんは知っていてもおかしくないのよね。

上手くいったんだからそりゃ報告もするよね、私もそのうち、顔合わせの日が決まってから統括侍女さまに報告する予定だし。

あくまで予定でこれからの日程は不明ですなんて報告したら叱られると思うので、私はある程度情報がまとまってから報告するだけですよ!

決して後回しにしているわけではございません!!

「それでね、隊長が是非一度ユリアに挨拶したいって」

「まあ、挨拶ですか。……え? 挨拶?」

「そう。挨拶」

「誰が」

「うちの隊長が」

「誰に」

「ユリアに」

にっこりと笑うアルダールのその表情に、私は拒否権がないことを悟りました。

ええ、ええ、将来の夫の上司である方にご挨拶くらい当然ですよね!

でもそれって、こんなかるーくお話がくるものだったのかな!?

「わ……わかりました。都合の良いお時間とかわかったら教えてね。こちらで合わせるから」

「ありがとう」

でもそれなら腹を括りますとも!

王城内でのご挨拶、そのくらい筆頭侍女として如才なくこなしてみせますよ!

……いえ、アルダールの婚約者としてね!!