軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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朝、早めに起きた私は食事を摂ってから同室のメイナを起こし、それからプリメラさまの所へ行った。

髪を整えて差し上げようとすると、いつもよりもまとめ上げた髪型がいいと仰ったので編み込んでみた。どうやら今日もシャイナに乗るようだ。王女宮に居る時は、結構シャイナに構いはしていたけれど乗るのは周囲が心配しまくるからなかなかできなかったんだよねー。まあ馬よりも竜のほうが乗りこなしづらいと言われているから周囲の心配も良くわかる。でもシャイナはプリメラさまが大好きだし、プリメラさまもシャイナを可愛がっているから乗れないのはきっと悔しかったに違いない。

騎竜との訓練は護衛騎士でも男性陣の方が得意らしく、王太子殿下からその時間帯は私たち王女宮の護衛騎士と侍女は自由に過ごしてくれて構わないと言われています。

どうやら王太子殿下もその練習にお付き合いしているらしく、妹が上達したら一緒に遠乗りなんてきっと思ってらっしゃるんでしょうね。

まあ、警備上の問題でそれが実現するかどうかは不明ですが……。

そんなこんなで朝のお勤めが済むと私も休むようにまた告げられて、私は侯爵さまにも朝のご挨拶に伺いついでにお願い事をしてみた。

今日、薔薇ジャムを作りたいので薔薇を買いに行きたい。けれども口にするものだから、無農薬で育てている農家がいたら紹介してもらえないだろうか、と。花屋に直接問うても良かったのだけれど、食べるために買うんですーっていきなり言われたら変人扱いされること請け合いでしょう。

そのくらいの想像は私にだってできますからね!!

侯爵さまはそれを聞いてちょっとだけ目を瞬かせてから、紹介状を書いてくれた。でも侯爵邸の薔薇も無農薬だから庭師に言って直ぐに用意させようかとも言ってくれたので、ご厚意に甘えることにした。

なにせ試作品だからね!

とりあえず花弁で必要になりそうな本数、庭師の方と相談してみることにしました。

何に使うのか尋ねられたので正直に答えたところ、目を丸くされてその後大笑いされましたが……好意的に受け取っていただけました。なんでも庭師の方も、この薔薇の花で奥様にプロポーズなさったとかで……この薔薇の香りのジャムができるなら、きっと妻も喜ぶだろうからと良さそうな花を真剣に選んでくださいました!!

それをメッタボンの協力の元、作りましたよ薔薇ジャム!

前世ではペクチン使ったりとか便利アイテムがありましたが、なくてもなんとかなるものなんだなあと改めて実感いたしました。あ、色は鮮やかにするためにレモン汁で花を先に揉んだりとまあ努力はいたしましたよ! おかげで綺麗にできたと思います。

侯爵邸の料理長さんが焼いておいてくれたスコーンに少し塗って、食べて、お互いにちょっとずつ感想を言って、修正すべき点をまとめて……うん? この作業、私いなくてもいいんじゃ……そういう専門的なのは料理人同士でも……いやいや、私が言い出しっぺですものね。はい。

とにかく、薔薇ジャムは改善点もあるだろうけれどもおおむね好評でした!

商品化に至るかどうかはとりあえず、料理長さんがもうちょっと試作をしてから今日のティータイムに侯爵さまへお出しするそうです。

私は一旦薔薇ジャムと薔薇蜂蜜にスコーン、それと今回はパウンドケーキにクリームを塗って先日いただいたドライエディブルフラワーを散らすことにいたしました。

ケーキだけ焼いておけば、後はティータイムに飾りつけをするだけです。

本日はティータイムから給仕に戻るようにと仰せつかっておりますので。私も方針が定まりましたので、そろそろ侍女としての職務を全うする方向に力を尽くしたいと思います。

しかし薔薇ジャムも作れるということがわかりましたし、自家製にするならそこまで大量に必要とはしませんので侯爵さまにもさほどご負担にはならないと思います。商品とするならどこかで専用の農園を作って、しかし無農薬で……というのはきっと大変でしょうねえ……。

いえ、そういうのを考えてこそ商品化につながるのでしょうし、そこは私の領分ではありませんので何とも申し上げられませんが。

「それじゃあメッタボン、蜂蜜の方お願いね。ダンはカトラリーの方で良いのがあったら工房を調べておいて。二人とも、金額の面で問題があるようなら慌てずまずは一旦持ち帰って検討しましょう」

「おう、了解しました」

「は、はい!!」

ここは侯爵邸で、あくまでも私たちは客人であるプリメラさまの侍女。ということで当然邸内のお掃除等は“お手伝い”程度ならお願いされることはあっても、本腰を入れてやっては相手方に失礼になりますし、また相手方もこちらに頼んでは立つ瀬がないということで実は私とメイナはそんなに仕事がないのです。

とはいえ、侯爵邸に勤めている使用人たちはいずれもレベルの高い人たちだと思います。

ナシャンダ侯爵家は現当主である侯爵さまが厭世的というか、社交界嫌いだから影が薄い感じはしていますが元々由緒正しい家柄です。そしてご側室さまの義父となられていることから外戚でもあるのです。ここで仕えている方々は代々仕えているという方が多いらしく、親子で働いている姿も見られます。

なるほど、密接した関係性から技術が受け継がれていくということもあるのですね。

ここでは王宮で見るよりも互いに恐らく長い付き合いがある親子関係と上下関係が結びついているんだろうと思う。だからどことなくフレンドリーで、そう、言うなれば親戚関係みたいな雰囲気があるの。だけど仕事は仕事で割り切っているというか、昔の下町の工場みたいな? ううん……上手く、表現できないけれど。

とりあえず、ここで年若い子を教育する人たちの姿は温かみがあって、うん……私もああいう風に接してあげようかなって思いました。家を離れて王城で暮らす女の子たちにとって、私は上司だけど寮母さんみたいな立場になれたらいいかなと思います。なんだかそう思いました。

「あ、あの! ユリアさま」

「あらどうしたのメイナ」

「あの……王女宮のみんなにも、お土産とか買ったりとかしても、いいんでしょうか?!」

「ええ、勿論よ。先日街を見て回ったけれど、薔薇の紅茶とかがやっぱりお土産としてはいいかしらね? 日持ちするでしょうし……今度貴女も見てらっしゃい。護衛騎士の方についていただけるよう私の方からもお願いしておきますから。いくつかお土産になりそうなものを私も選んではいるけれど、メイナからの意見も聞きたいからよろしくね」

「はっはい!!!」

「ほら、あんまり大きな声を出さなくても聞こえるから」

メイナは元気がいいのが素敵なところだけど、ちょっと勢いがあり過ぎるのが難点ね。

でもそれを叱ったら一気に萎れちゃうと思うとあんまり強くも言えないなあ。そこまで悪いってことでもないから。でもここ、旅先だからね。王女宮でいつも通りってわけにはいかないからね。ああ、まだまだ私も未熟だなあ。年下の女の子相手にどう接していいか難しくて悩んじゃうよ……。

これが会頭とかのおっさん連中だともう敵わないってわかってるから正直諦めに似た気持ちでそれでも誠心誠意対応するけどね、私はメイナにとって上司で、手本にならないといけない人間だからきちんと指導できないといけないのにね。こういう時、前世ではどうしてたっけなあ。

ああ。そうか。

「メイナ、私は貴女の傍にちゃんといるから。慌てなくていいから、わからないことや心配なことがあったら一度自分で考えて、それでもなんともならないと思った時に私に言ってみていいのよ。貴女はちゃんと頑張れているのだから、自信を持ちなさい。王女宮の侍女メイナは立派な侍女なのだとね」

「……ユリアさま」

「さあ、それじゃあ私たちもプリメラさまの所へそろそろ戻らなくてはね。昼食のメニューと段取りを料理長さんと侍女頭さんに確認しておいて頂戴」

「わかりました」

しゃきんと背を伸ばして綺麗な所作で歩くメイナ。

うんうん、褒めて伸ばす作戦、一旦成功かな?!

さ、私もプリメラさまの所へ行ってお茶を淹れなくっちゃね。

そろそろシャイナとの時間も終わって戻られるでしょうからね!