軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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あれから。

ようやく話し合いや調整を重ねた結果、三週間後に予定を組むことが出来ました!

いやあ、びっくりするくらい日程が合わず、アルダールと一緒に苦笑してしまいましたよ。

ああでもないこうでもないと悩んでいたら、最終的には統括侍女さまと近衛騎士隊長さまから『早く決めるように』って逆に叱られてしまいまして……。

さすがに私たち個人の都合を押し通すのもなあと色々と悩んでいたんですが、結局好きな日を選んでフォローをしてもらうということで落ち着いたのです。

いやあ、持つべきは良い上司……ですかね?

まあおかげで予定がきちんと決まりましたし、それに向けて調整は順調です!

何かがあって王女宮で対処せねばならない時はセバスチャンさんは勿論、万が一の場合は統括侍女さまもお力添えしてくださると仰ってくださったので、これ以上ないくらい安心です!

……もしそうなった場合は、メイナとスカーレットが大変でしょうけれども。心境的に。

それはともかく。

「すみません、ケイトリンさん。わざわざお付き合いいただいて……」

「いえいえ! 職務ですから!!」

私は護衛騎士であるケイトリンさんと共にリジル商会に向かっております。

何故かって?

だってバウム領に行った折にはバウム伯爵邸に行って夫人とお茶会をするわけです。

そう、それなのに客人として招かれたとはいえ、身分も年齢も下の私が! 手土産の! 一つも持っていかないなんてあり得ません!!

王宮の侍女は何を学んでいるんだって言われ……言われないな、私個人の問題です。

「しかし、何が良いものかしら……」

日持ちしそうなお菓子?

お花?

アクセサリーや小物はそれこそセンスを問われそう。

勿論、何より家族であるアルダールに相談することも考えたんですが……日程が決まってから彼は彼で隊の仲間たちとの調整やら何やらで忙しいようで、なんだか申し訳なくて。

そういうこともあって品数と言えばリジル商会!

安心安全で無難なものを選ぼうと意気込んでいるわけです。

レジーナさんに護衛を頼もうかと思ったんですが、どうやら彼女も別件の仕事があったらしくケイトリンさんが付いてきてくださいました。

「お土産品ということでしたら、最近リジル商会で売り出した扇子が人気だそうですけども」

「扇子……ああ、そういえば話は私も耳にしました。人気だそうですが、ケイトリンさんは実物をご覧に?」

「いえ。実家の母が社交の場で見かけたそうです。綺麗な紗を用いたもので、何でも小ぶりの宝石が織り込まれているのだとか。見た目は一見地味に見えるそうですが、それがまた落ち着いた女性に見えると評判だそうです」

「そうなのですね。買うかどうかは別として、是非見ておきたいですね」

ケイトリンさんは貴族の子女ということでやはりこういったことも詳しく、ある意味今回は最適な人材だったようです。

しかし彼女のお母さまってことはレムレッド侯爵夫人でしょう?

そんな高貴な身分の方が参加するような社交の場で見かけたって……結構なお値段がしそうっていうか。

流行を押さえている社交界の淑女たちなら手に入れてそうだなあと思いました。

(ああ、でも……アルダールは、あまり夫人はそういうことに興味がないと言っていたっけ……)

観劇がお好きだけれど、必要以上に着飾るのはお好みでないとか。

花とお菓子を好まれるので、伯爵が領地にお帰りの際は必ずミッチェランのチョコレートを買っていくって聞いて仲の良いご夫婦だなあと思ったものです。

(そうだわ、チョコレートと扇子、両方をお土産に出来たらいいんじゃない?)

それに公式で使うかどうかは別として、そんなに人気の品ならば特注でプリメラさまの普段使いにも良いかもしれません!!

紗は春から夏にかけて使われる布地ですが、扇子なら結構普段から使いやすいのでは?

これからはディーン・デインさまとのデートで観劇や夜会などもあるかもしれませんし……そんな時、気軽に使える扇子などの小物はこれからいくつあったって良いのです。

プリメラさまの社交界デビューは王太子殿下の立太子の儀を行う……つまり、ゲームで言えばエンディングの時期ですか。

それが済んでからなので来年の話ですけどね!!

社交界デビューがなくたって夜会などには参加もできるのです。

というか、単独公務を終えたプリメラさまは今後公務の一環として夜会なども参加する可能性があるわけですから……私としても流行には触れておきたい。是が非でも。

「折角ですから、ユリアさまもお好みの色で誂えられてはいかがですか? 確か、オーダーメイドも扱っていると母から聞いていますよ」

「ええ。リジル商会がセレッセ伯爵領の職人と契約しているので、とても質の良い物ができあがると聞いています。ですが、やはり直接見てから考えましょう」

「はい」

馬車での移動はスムーズで、通い慣れた……ということは一切ないのですが、何度か足を運んだこともあるリジル商会にはもう臆しません!

初めて来た時は確か、王女宮発足で筆頭侍女になってすぐだったでしょうか。

あの頃はまだまだ子供だった私からしてみると、大変ハードルの高い商会でした。

それでも筆頭侍女として、持ち物には気を配るべきであるし、また良い物を見て目を肥やすことも大事であるとセバスチャンさんに連れられて必死で学ぶつもりで見学したものです。

当然ですがちゃんとお買い物もしましたよ!

セバスチャンさんがご褒美に紅茶を買ってくれたこともちゃんと覚えています。

(懐かしいなあ)

その後は何度か個人でも利用しましたし、お父さまの借金問題で返済計画を持ち込んだりと……おや? 意外と利用していた。

「いらっしゃいませ、ようこそリジル商会へ」

「……え」

いつものように馬車が止まり、御者がドアを開けてくれる。

幼い頃は一般のお客さまと同じ正面の入り口からでしたが、今は筆頭侍女としてそれなりに頭角を現した私は貴族専用の出入り口で対応してもらえるようになっているのです。

……幼い頃も子爵令嬢には違いないだろうって?

そりゃ、私が小心者なことといくら貴族令嬢でも格差ってのは存在するんですよ。

そして店に入ると店員が出迎えてくれた……のですが、私は予想外の出迎えに思わず立ち止まりました。

「今をときめく王女宮筆頭侍女さまをお出迎えできるだなんて、今日のぼくはとてもツイているなあ。そうは思わないかい? ユナ」

「……さて、私にはわかりかねます」

なんと、私たちを出迎えたのはリジル商会のご子息、リード・マルクさまともう会うこともないであろうと思っていたユナさんだったのです!!

彼らの登場に私だけでなく、ケイトリンさんも驚いているようでした。

そして更に驚くべきことに、そんな彼らの近くにはタルボット商会の会頭もいらっしゃるではありませんか。

なんだこの組み合わせ!

「ああ、残念だなあ。申し訳ございませんが、ぼくはこれから別件の仕事があって……本当なら直接ご案内したかったんですけどね。色々と父から貴女さまのお話を耳にしていたもので!」

「……さようですか、それはお耳汚しでございました」

私は客で、彼はお店の跡取り息子。

その関係で言えば私がへりくだる必要はないのだと思います。

ただ、王太子殿下のご学友でもあるし、なによりユナさんの身柄を預かる云々ってこともあって私は距離をとることも兼ねて丁寧に接することにしました。

ザ・他人行儀。いや、他人行儀で当然なんですが。

なんせ、知り合いですらありませんからね!