軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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さて、王太后さまとのお茶会を終えて素敵な衣装もいただいて、私はアルダールと一緒に城下へ食事に出ています。

ちなみにおばあちゃんが作ってくださったあの素敵な衣装は、後ほど王女宮に届けてくださるとのことでしたので、旅行の時のお楽しみですね!!

本日は野苺亭ではなく、また別のお店に来ているんですが、個室なのでちょっとした内緒話にはもってこいっていうのが良いです。

こういう場所でなくては王太后さまから聞いたお話なんてできやしませんよ!

どこで誰に聞かれているかと思うとヒヤヒヤしちゃうじゃないですか、特に後ろめたいことがあるわけじゃないんですけども。

「……へえ、なるほど。それじゃあ日程を決めて提出すればいいのか」

「ええ。王太后さまはそう仰っていたけれど……いつがいいのかしら。バウム伯爵家へ行くのでしょう?」

「そうだね、義母上はいつでも構わないと言っていたが……念のために確認させてもらいたいな。寄らないと機嫌が悪くなるのが目に見えてわかっているからね」

苦笑しながらそう言うアルダールですが、私はバウム伯爵夫人であるアリッサさまにお会い出来るのは嬉しいですよ!

前回はちょっと慌ただしい感じでご挨拶でしたから、今度はもうちょっとお話を色々伺ってみたいなあ……なんて思ってもいます。

ほら、アルダールの子供時代の話とかね!

本人が嫌がる所まで聞こうとは思ってませんし、色々複雑な関係なのでそこまで期待しているわけじゃなくて、ただ……こう、私が知らないアルダールを知れたら嬉しいなって話です。

すでに私たちの中でバウム領に向けて旅行するというのは前提で話を進めていたので、後は日程を決めて予定を埋めていくだけなんですが……いざ、『好きな日にしていいよ』と言われると困ってしまうのはどうしてでしょう。

あれを引き継いでおかないととか、あの人の家庭事情があるから迷惑をかけたくないとか、あれこれ話をしているとなかなかかみ合わないのです。

(お互い同僚に迷惑をかけたくないんだからしょうがないといえばしょうがないんだけど……)

本当に予定を合わせるって難しいよね!!

あえてこちらから休みを入れるスタイルってなると、どうしても周囲に気を遣ってしまうというか、気を遣わざるを得ないというか……。

アルダールは近衛騎士隊では若年層に入るから、上の人たちに気を遣うし。

私は私で、役職持ちということで王女宮のみんなに迷惑をかけないように考えたいし。

「難しいですね……」

「うーん……いざ好きにって言われてもね……」

顔を見合わせて思わず苦笑してしまいましたが、でもこうやって一緒になにかについて考えて悩むのってのも楽しいものです。

「そういえば、バウム領で行きたいところがあるんですよね?」

「え? ああ、うん……」

アルダールから誘われて軽くオッケーしてしまいましたが、正直私は今回『アルダールが今までのことについて話してくれる』ってことばかりに気を取られていました。

でもこれって旅行ですし、うん、まあ、ほらカップルでのラブラブデートの延長って言うかそんな感じ?

……だめだ、軽いノリでなんとか乗り切ろうと思ったけど余計に恥ずかしくなったな!?

でもわざわざ旅行って形でバウム領に行こうと誘ってくれたのって、話をする他になにか理由があるんじゃないのかなとふと思ったんです。

「……私が、育った場所を見てもらおうと思ったんだ」

「え?」

「今、私にとって大切な家族が暮らすバウム家も、私が育った……バウム領内にある、小さな館も。幼い頃に隠れてやり過ごしていた、秘密の場所もね」

アルダールが少しだけ複雑そうな表情で、微笑みました。

彼にとって、育った場所は……あまり良い思い出がない場所で、もう割り切っていると言ってもやはり楽しいものではないのでしょう。

それでもそこに足を運びたい、そう思ったのは彼なりに何か思うところが有ってのことだと思います。

そして、そこに私を連れて行ってくれるというのは……なんというか、とても嬉しいです。

だって、私はアルダールを信じていますが、アルダールも私のことを信じているから傍にいてもいいって思ってくれている証ですから。

やだ、相思相愛!

自分で思うとこっぱずかしいな!!

(だめです王太后さま、惚れ直させるどころか私が惚れ直してます!!)

いや王太后さまは新しい服を着て惚れ直させろって言ってたんでした。

何気ないこの信頼に胸が打ち抜かれるってこういうことなんですね……改めて実感いたしました。

普段、プリメラさまの行動にときめきを幾度となく感じてましたがそれとはまた違うこの……ええ、ええ、私もやっぱり乙女だったんですね。

そう思うと感慨深いものがあります。

「とりあえず、日付はもう少し悩むとしても予定だけは粗方決めておこうか、その方が引き継ぎ方法も考えやすいし」

「え、ええ! そうしましょう!」

「夕方か夜に王城を出て、城下の町屋敷で一泊して朝早く出るつもりだけど」

アルダールの言葉に私は首を傾げました。

だって、わざわざ町屋敷に一度寄って翌朝出かけるってなんとなく非効率的じゃないかなって。

「え? 町屋敷にですか? それなら王城から朝早く出るということも出来るのでは」

「それはそうなんだけど、……その、それだと仲間内にはバレているから冷やかしが現れないかと思うとちょっとね」

「あ。ああー……」

それは主にハンスさんとかハンスさんとかハンスさんですよね。

うん、理解しました!

確かにあの人、悪い人ではないでしょうがこういう時に悪ノリを見せそうです。

今までも何度かタイミング悪く姿を見せたこともありますし……けれど、そうですね、あの方もただチャラいだけじゃなさそうな人だったなあ。

その辺については私が知るべきではなさそうなので、特にアルダールに尋ねるってこともないんですが……どうしてこう王城で働く人って内面が複雑骨折してそうなんでしょうね?

私みたいに素直に給仕出来て幸せ……っていうパターンは少数派だと自覚しておりますけど……それでもちょっとみんな人生幸せに生きよう?

そんなことを思ったついでにふと思い出して、私はアルダールに尋ねました。

「ねえアルダール。今回公務先で、プリメラさまに教わって知ったのだけれど……クリストファが公爵家の影だって、アルダールは知っていた?」

「直接的には知らなかったけど、そうじゃないかなとは思っていたよ」

「えっ……」

「それがどうかしたのかい?」

「い、いえ……なんでもないの」

やはり、私が鈍いだけなのか!

自分で聞いておいてなんですが、私はショックを受けたのでした……トホホ。

「ああ、そうだ」

「え?」

「会えなかった分、ユリアを補充しておかないとね」

アルダールはそう言って笑うと、テーブル越しに少しだけ身を乗り出して私にキスをしました。

触れるだけの可愛らしい……というには私としては照れるシチュエーションですが、それでもなんとなくそれも嬉しくて、私はテーブルの上に置かれたアルダールの手をそっと握り返しました。

するとアルダールが嬉しそうに微笑むから。

あーもう、あーもう。

やっぱり惚れ直すのは私ばっかりです!