軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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こんにちは、ユリア・フォン・ファンディッドです。

私の一日は大体王宮で始まります。

最近では前世で愛用していたBBクリームが欲しくて仕方ありません。

あと日焼け止めも欲しいです。

まあそれはともかく。

相変わらず可愛いうちの姫さまは、すっかりゲーム設定とは違ってまっすぐすくすく育っている。

我儘は言わないしすらっとしたお姿はこの国の美人路線を走っているよ!

金糸の髪はゆるやかなウェーブを描くようにして、まさに絵に描いたような美少女になった。

ただちょっと問題としては、例の攻略対象、伯爵令息にして騎士となる少年と婚約が整ってしまったということだ。

ゲームでは姫さまが彼に一目惚れして陛下にお願いして婚約者になったことになっていたけど、今回は王妃さまが縁戚に当たる伯爵のお願いを聞いて陛下に上奏したそうだ。

陛下としても可愛い娘がよその国に嫁ぐよりも国内で有能そうな人材を囲うほうが嬉しいからと喜んでそう決められたそうだけど……肝心の姫さまは会ったこともないそうだ。

うーん? ゲームの展開としては、姫の一目惚れから付き合ったけど、あくまで姫に対する礼しかとらない彼に癇癪を起す姫と、そこに入ってくるヒロイン……からの。

王道エンディングが『恋を知らなかった。貴女が私を好いてくれたように、私は彼女を好いているのです。すみません』と父親である伯爵と共にヒロインと寄り添いながら陛下に正式に婚約破棄を願い出るパターンと、実はその騎士はドMでわざと冷たくして罵られたがっていたのでもっと強気にあたってくれるヒロインに乗り換える闇エンディングがある。

騎士――今はまだ見習いの、ディーン・デイン・フォン・バウム伯爵子息(13)は、茶髪に青い目をしたハンサムだという話だが、彼との友情はたしか主従の誓いとかだった気がする。

しかし現段階でまだ姫は彼に興味がない。

会ったら変化するんだろうか?

ゲームの展開は来年のはずだ。王子ルートではアラルバート・ダウム王子の社交界デビューを前にめくるめくロマンスが広がって、そのデビューの日に「私は彼女を妻とする!」と宣言してエンディングを迎える設定だから。

ちなみにヒロインも貴族である。正確にはとあるイベントを経て貴族になった、とかいう設定だ。

とにかく、私としては私の大事なプリメラさまが傷つくようなことなんてノーセンキュー!

出来る限り情報を集めようと他の侍女やメイドたちにそれとなく話を聞いたのだった。

情報収集の結果。

なんと実は伯爵令息ディーン・デインさまとの婚約は、彼がプリメラさまに一目惚れしたということらしい。

ナ、ナンダッテー?!

だって姫はまだ社交界デビューをしておらず、公式の場で出ると言ってもバルコニーで手を振る程度。

いくら伯爵令息とはいえ見習い騎士が王城を闊歩できるわけでもなく、プリメラさまが暮らすのは王城の奥まったところ、つまり後宮近くの王家が暮らす生活圏だ。

後宮には正妃さまやいるならば側室さま、また3つになるまでの御子が暮らす場所であるので、今ではアラルバート・ダウム王子もプリメラさまも王城の居住区に一室を与えられているのだ。

私?

私は勿論使用人用の区画のひとつですよ。

ええ、そこは勿論身分をわきまえておりますとも! 子爵令嬢と言っても勘当されてるので、一般人と言っても過言ではありませんからね。

さて、そんな状態でじゃあどこからディーン・デインさまはプリメラさまを見初めたのか、というのが問題だ。

誰かが手引きしたと考えるのが一番有力。

では誰が? となったところで色々わかって私は脱力した。

だって、どう調べたって正妃さまご本人だったからだ。

伯爵はお願いなんてしていない。

むしろお願いしたことにしてくれと言われたと、酔っぱらって漏らしていたらしい。脳筋チョロイ、おっと失言。

正妃さま、残念!!!

まあ、私としてもフォローの口止めはさせていただきました。

私、正妃さまの事好いてはおりませんが嫌ってもおりませんよ。

何故かと言えば、正妃さまのあの態度。あれは全部陛下の所為なのだと気が付いたからです。

正妃さまはもともと狭量な方ではございません。

国母たるために教育を受け、常にきちんとしていらっしゃる、まさに王妃の鑑でございます。

ではなぜそのようなお方が側室さまとその娘を苛めるのか?

実際にはやり過ぎな感はありますが、陛下がそうしているのです。

側室さまばかりに目を向けて、正妃さまに尊敬を捧ぐと言いながらその実は蔑ろ。

そりゃぁいくらなんでも悲しくなるじゃありませんか。

しかも生まれた王子に愛を注いでくれるのかと思えば、王として接するばかりで生まれた姫には親として接している姿を見せつける。

女としても王妃としても矜持はズタズタです。

でも彼女は実は側室さまに歩み寄ろうとしていたという事実があったのです。

まだ私が宮仕えする前のことでしたが、陛下がそれを遠ざけたとのこと……なんでも側室さまが頼るのは自分だけにしておきたかったとかそういう理由のようでした。なんてことでしょう。

その際に陛下が正妃さまに何事かおっしゃって、その時ひどくうちひしがれておいでだったという証言を古参の侍女から教わりました。

それ以来、正妃さまはより王妃として立派にならねばと冷徹なまでに頑なになられたようです。

それに、プリメラさまに対して厳しい言葉ばかりかけますが実は色々と裏で優遇措置が取れるように取り計らってもくださっていたのです。

驕らぬよう厳しく教育して、立派な淑女にしてあげてください。

何処に嫁いでも苦労せぬように、義母たる自分を憎むことで励めるように。

父たる国王陛下を、決して憎まぬように。

そう言っていたことまで突き止めました!!!

表立って彼女の味方をすると、どうやら陛下が妙な勘繰りをするということのようです。

側室さまに関しても、彼女に関わると貴族は左遷させられたりしていたようです。

プリメラさまの教育係も男性が入ることを良しとせず、女性ばかりなのも陛下の意向だと知りました。

どうも陛下は“か弱く可愛いものを愛でる”ことが大好きなようです。

ですのでご側室さまの儚いお姿はとてもお気に入りで、彼女が孤立することで陛下の寵愛を何よりも安堵と喜びに彩ることが楽しかった様子。病気か。

だからプリメラ姫が“誰からも愛される”とか“皆から大事にされている”状態になれば孤立させようとするに違いないと王妃さまはお考えのご様子。

あまり使用人や侍女までは考えがおよばないのか、私たちは付属の家具くらいに思っているのか、私たちがプリメラ様をお慕いすることはなんとも思われておられぬご様子ですが……。

まあ、陛下は陛下なりに娘を愛していることは間違いないですが、病的な形だということはわかりました。

それにしたって陛下も正妃さまも、良い大人が10歳の少女に対し行う思いやりがえらく斜め下いってますよね。

ちなみに私がご側室さまのおそばになぜいけたのか、なぜ陛下がお許しになったのかと言えば。

……「貴族の娘なのにあれほど地味でみすぼらしい哀れな子に優しくする寵姫が愛しい!」ってことだったそうです。

……みすぼらしいって。みすぼらしいって。

しまいには泣くぞ。自覚はしてるが見苦しくない程度に身だしなみは整えてるっちゅーんです。

ちなみにディーン・デインさまには腹違いの兄君がおられまして、その方が近衛におられるアルダール・サウルさま。

そんな人ゲームの中にいたかしら、と思ったのですがお姿を見て思い出しました。

ゲーム中、ドMであることを告白する裏エンディングの方で唯一ヒロインに「弟は、ちょっと困ったやつなんだが……仲良くしてくれるなら、ありがたい」と一言だけのシーンがあった人です。

裏エンディングにしか出て来ない上に、この“困った”が“ドMなんだ”という伏線だと誰が気付くかって話ですよね!

まあ、今の段階ではまだディーン・デインさまはそういう性癖はないようです。

ゲーム中でも騎士に正式に叙任されて厳しい鍛錬の中で目覚めた、というような記述がありましたので。

……明日はそのディーン・デインさまとプリメラさまが顔合わせのお茶会をなさる予定なのです。

社交界デビューをしていない姫君に、この方と結婚するのだよ、と教え込むためのものです。

憂鬱です……はあ。

それでもプリメラさまに「ユリアがお茶菓子を用意して頂戴。勿論お茶もよ? ディーン・デインさまにお会いするのは初めてだけれど、どのような方なのかしら。あまり子供っぽい服でお迎えするのも失礼よね」などと子供らしからぬ気遣いをたくさん見せておいでのプリメラさまの顔を潰すわけには参りません!

と言っても私がお茶菓子を用意する、となるとできることは限られます。

前世で一人暮らしでしたから、一通りの家事はできますけどね。

お菓子だって基本的なものは作れますけど、当然料理番には負けますよ。

精々私の功績と言ったらこの世界、ケーキのデコレーションがなかったからそれを提案したことくらいです。

ちょっと生クリームの絞りとかやってみたら、料理番の手によってどんどん進化を遂げていきましたけど、なんなんでしょうねコレ。

あ、あとシフォンケーキはこの世界にありませんでしたので私が作りました。

大好きなんですよ、シフォンケーキ。紅茶のやつが特に好きなのです。

プリメラさまに初めてご披露した時の満面の笑みったら……そうだ、シフォンケーキにいたしましょう。

プレーンのものにして、オレンジティーなどどうでしょう。

きっとプリメラさまがお喜びくださいます!

ディーン・デインさまの好み? ああ一応柑橘系がお好きだということで、オレンジティーですよ。

私の一番はプリメラさまですが、プリメラさまがホストのお茶会でお客様の好みを外すわけには参りませんからね!

さあ、忙しくなってきた!!