軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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翌日、朝食の後で王太子殿下は約束通りお時間を作ってくださいました。

というか、びっくりしたことにプリメラさまに……その上、私にまで謝罪の言葉をくださったのです!

その時はきちんと淑女の礼を執ってただただそのお言葉を受け止めましたけれど、心の中は『この王太子殿下、本物か!?』ってなってましたよ。ええ。

ニコラスさんが後ろに控えていたので本物だと思いますけれど。

まあ、そこで説明を受けていわく……。

ユナ・ユディタは婚約者とその家族にとって、大切な家族同然の存在だが同時にその分厄介なモンスターに成長してしまった存在で、切り捨てるわけにもいかないが結婚と同時に連れてくるわけにもいかない。

だが本人はそれらをいくら説得しても納得せず、暴走する面が見られ最終的には強硬手段に及ばざるをえないかもしれないと心を痛めていた婚約者を見て、さすがに気の毒になったんだそうです。

そこで、今回連れてこさせることで王太子殿下の前でなにかやらかしたのを理由に叱責して控えさせ、母国へと送り返しフィライラ・ディルネさまが輿入れの際はユナ・ユディタさんのことは出禁にする……と通達を送る計画だったのだそうです。

(商会の利権とか、船とかはまあ副産物であって、何も受け取らないとフィライラ・ディルネさまの立場がなくなるから……ってそんな優しさ持ち合わせてたんですね……)

若干失礼なことを思ってしまいましたが、顔にも態度にも出さなかったのでオッケーでしょう。オッケーですよね?

ところがまあ、王太子殿下のその計画はユナ・ユディタさんが思いの外とんでもない人だったってことで崩れたわけで……。

プリメラさまと私の仲睦まじい様子に対抗してなにかするだろうとは思っていたけれど、それはきっと『自分たちの方が仲が良い』というところを王太子殿下に見せつけるようにしてくると予想していたらまさかのもっと手前で行動してきたっていう。

そうですね……うん、まあ、あれはなかった……。

というわけで、王太子殿下は想定外のことでプリメラさまと私に早い段階で迷惑がかかってしまったことを詫びてくださったのでした。

いやまあ、王太子殿下の性格が思っていたよりも悪くなくて良かった……って思うべきなのでしょうか、決してイイとは言えませんが。

ある意味イイ性格ですけども。

そういったこともあってプリメラさまは面食らったご様子でしたが、きちんと王太子殿下に意見しておいででした。

『お兄さまが心配してくださるのはわかりますが、プリメラももう守ってもらうだけの小さな子供ではありません。事前にこの件を教えてくださっていたならば、もっと対処のしようもあったでしょうし、フィライラ・ディルネさまを責めるような言葉を口にしないで済んだかもしれないではありませんか』

『……すまない。お前は初めての公務で、このようなことに巻き込むに当たってこちらで片付けるつもりだったんだ』

『お兄さまのお気持ちはわかりました。フィライラ・ディルネさまのこと、わたしのこと、双方を思いやってくださったことも。覚えておいてください、プリメラもお兄さまのお役に立ちたいのです。できないことは、無理にいたしません。ですから、これからは相談してください』

『……わかった、必ず約束しよう』

お兄さまを思って許した上に役に立って見せますよ宣言のプリメラさま、大変可愛らしゅうございました。

アレには王太子殿下もニッコリです。

(まあ、結局の所〝有能〟って言われていたから あんなこと(・・・・・) を仕出かすなんて想定していなかったって言うか、そこは王太子殿下の読みが甘かったってことなんだろうけど……普通は想定できないか……)

ため息ものですよ、ホント。

でも王太子殿下がプリメラさまを単純に利用しようとかそういう目線でなくて良かった。

ただ、次はないからな?

そういう意味を込めて私も王子宮筆頭に「次はよろしくお願いしますね?」って微笑みかけておきました。

意訳すると「お前んとこの王子なんとかしろや」になります。侍女マジック。

ってなわけで色々なことが解決しきってないけどまあ解決したところで公務は順調です。今日は町の見学でした。

とはいえ、王女殿下の尊い身で市場などを見て回るわけにはいきませんから、町の中を馬車で回ったり大きな教会を慰問したり、そのほか組合のお偉いさん達と会食したりがメインなわけですが……それでもプリメラさまにとってはとても大変だったご様子で、夜はもう早々に寝てしまわれたのでした。

私も割とくたくたなんですが、幸いにもプリメラさまもお休みですし、先ほどセバスチャンさん経由でクリストファから連絡をもらったと聞きました。

作業が落ち着いたから時間がある時に町に行こうとのことで、まずは今夜大丈夫か聞いて護衛騎士達に相談しなくては、と部屋の外に出たところで思わぬ人が立っているじゃありませんか。

「……なぜこちらにいらっしゃるのでしょうか?」

「いやはや、実は大変なことがおきまして。王太子殿下がボクを貴女の傍につけるよう指示なさったのですよ」

胡散臭い笑顔は相変わらずで、お元気そうですねニコラスさん!

いや、ちょっと待て、王太子殿下がなんだって?

「ユナ・ユディタが室外に出たようです」

にっこり笑ったままのニコラスさんのその言葉に、私は眉を顰める。

ニコラスさんが派遣されたってことは、彼女がこちらに現れる可能性を考えて、というかその可能性が高いと王太子殿下が判断したからに違いない。

その場合、騒ぎになる前に王太子殿下が引き取ってフィライラ・ディルネさまのところに引き渡すのが一番穏便ということになるのではあるだろうけど……。

「……少しお待ちください。スカーレット!」

「はい、どうかなさいまして? あら、貴方は専属執事の……」

「ニコラスと申します、お嬢さん」

「挨拶はそこまでで。スカーレット、私は少しこの場を離れますがプリメラさまのことをお願いします。護衛騎士たちにも声をかけますが、決して彼女たち以外の言葉で扉を開けないよう」

「かしこまりました。何かありましたの?」

「事情は後で説明しますが、困った御仁がいるそうです。注意に越したことはありません」

スカーレットに指示を出して私は隣の部屋にいるセバスチャンさんにも声をかけました。

護衛騎士たちにも念を押したところで、ニコラスさんを見上げれば彼はにっこりと微笑んでいるではありませんか。

「……それで、こちらは対処が終わりましたけれど?」

「そうですねえ、ですがユリアさまはこれからどこかへお出かけだったのでは? なんでしたら、お供いたしますが」

「結構です、貴方も王太子殿下のお傍を長く離れるわけにはいかないでしょう」

「つれないお言葉で」

とっとと帰れ、そう言外に告げるもののやはりニコラスさんは引かない。

これ以上厄介なことに巻き込まれたくないので再度お断りの言葉を紡ごうとした私よりも先に、ニコラスさんが口を開く。

「でも王女殿下の為に、彼女をおびき出す役をしてくださる方がいるととても助かるんですよ。王女殿下が眠っている間に万事穏やかに解決できれば、みなさま揃って良い朝を迎えられるじゃありませんか」

私はその言葉に口を噤む。

ああ、だから嫌だったんだよ、先に口を開かれたのは私の失態だ。

王女殿下の……プリメラさまのために、厄介な人が行方知れずなんてことは早く解決できた方がいいに決まっているのだから!