軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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その後、フィライラ・ディルネさまはユナ・ユディタさまを下がらせてプリメラさまをお引き留めになりました。

ユナ・ユディタさまはかなり不満そうでしたが、そこはフィライラ・ディルネさまが譲らず……というか 一瞥(いちべつ) もくれず、二度目の言葉も発さなかったことにショックを受けたのかしょげて出て行ったと言うのが正しいんですが。

まあとにかく、それを見てプリメラさまは少し躊躇ったようですが残ることを決められたのでした。

ユナ・ユディタさまの姿が見えなくなって、ようやく落ち着いた雰囲気を取り戻したところでフィライラ・ディルネさまが、プリメラさまにソファを勧めてから改めて頭を下げました。

それはもう、深々と。

いいのか? 王女さま同士とはいえそこまで頭を下げて……ってくらい下げていました。

「第一王女たるプリメラさまに、我が国の者が大変失礼をいたしました。王女として、お詫びいたしたく思います」

どうやら王女ご自身は、部下を御せないだとか、物事の判断が甘いお嬢さんって言うわけではなさそうです。

プリメラさまが困惑したように頭を下げたままのフィライラ・ディルネさまにお声をかけられて、改めてお二人は対面するようにして座りました。

「……不躾な質問で申し訳ありませんが、フィライラ・ディルネさまはわたしたちを歓迎していないというわけではありませんのね?」

「勿論です。たしかにあのような振る舞いをする者を側に置いているわたくしが言っても説得力がないとは思いますが……」

困ったように微笑むフィライラ・ディルネさまと、彼女の侍女であろうお年を召した女性が……多分彼女が先ほど名前の出たルネさんなんだろう。

「もうある程度、兄君であられるアラルバートさまからこちらの事情はお耳に?」

「いえ」

んんん、やっぱり王太子殿下は色々知ってるな?

しかもフィライラ・ディルネさまの、この言いようだと……事前に相談かなにか受けていたんじゃなかろうか!

それについて王子宮筆頭が私に教えてくれなかったことは仕方ない。

彼女が口止めされていたと考えるなら決して外には漏らさない。

私だってプリメラさまに秘密だって言われたら絶対秘密にしますからね。侍女としてそのくらいは当然のことです。

でも、事前にこちらでも知っておきたかったなあっていう気持ちはあります。

だってわかっていたらあんなに腹を立てずに済んだんじゃないかなと思うとね……。

「彼女のことは乳姉妹として確かに姉と慕っていた時期もありましたし、今でもその気持ちがないとは言い切れません」

フィライラ・ディルネさまによると、こうだ。

ユナ・ユディタさまは乳姉妹として幼い頃から彼女の側におり、上の兄や姉と少し年齢が離れていたこともあって一つしか年齢の変わらない彼女のことを当時は本当の姉のように慕い、仲良くしていた。

成長するにつれ、身分差というものをフィライラ・ディルネさまは自覚したが私的な部分での関係としては支えてくれる良き姉と思っていたらしい。

ある程度の年齢になれば、当然王女としての教育が始まる。

乳姉妹ではあってもユナ・ユディタさまの身分は乳母の娘にしか過ぎず、同じ教育は勿論受けることが出来ない。

そこで彼女は王立の学校に通い優秀な成績を修め、文官として戻ってきた――ここまではこちらでも知っている話であり、とても良いことだと思われる。

「ですが……わたくしたちと思うところがどうにもユナはずれていて……」

ほうっとため息を吐いたフィライラ・ディルネさまはなんだか疲れているように見えた。

ううん? 天真爛漫な姫君って聞いていたのに、どうにも苦労人のように思えるのは何故でしょうか……。

「彼女は確かに文官として優秀で、与えられた仕事は期待以上の出来映えで応えてくれます。ですが、わたくしを妹として可愛がるあまりに時としてその立場を越えた発言をしてしまうようで……先ほどのように」

「ああ……」

困ったようにプリメラさまも相槌を打たれました。

あれですね、『ディイの方が』ってやつですね。

「失礼ですが、ディイとはフィライラ・ディルネさまの愛称ですの?」

「ええ。とはいってもその呼び方をするのはもうユナだけですわ」

幼い頃はディルネが言えなくて、ディイと呼んでいたんだとか。

それだけ聞くと可愛らしいエピソードなのになあ!

「彼女は自分が乳母の娘であることをきちんと理解しているはずなのです。それなのに、時折他の者よりも己が上の立場であるような錯覚をしているようで……長くわたくしたち王族と共にあった弊害かもしれませんが」

いやいや、それは……教育をきちんと受けて育った以上、それでは許されないんじゃないかなあと思うけれども!

失言しそうになるのをぐっと堪えて、私はなにも聞いていないという態度を貫きました。

「何度も注意をしておりますし、わたくしの側を離れさせることも考えました。ですがそうしようとするとどこからか聞きつけて騒ぐものですから……乳母が責任を感じ憔悴していく姿を見てしまうと、わたくしたちも非情になりきれなくて」

そりゃまあ、越権行為……ってほどではないにしろ小さい積み重ねの罪で大きく裁くことも出来ないし、左遷させようかなってなるのもわかる。

その親が責任を感じるのもまあ、わかるっちゃわかるし親だけが悪いとは思えないしなあってなるよね……。

一番いいのは、ユナ・ユディタさまご自身で周囲が迷惑がっているって気づくのが一番なんだけどね……。

「今回も彼女は置いていくつもりでしたの。ご迷惑をお掛けすると思って」

「まあ、そうでしたの?」

「そうしたら、アラルバートさまが連れてきてはどうかとご提案くださって……」

「……お兄さまが?」

ですよねー!!

内心で大きく頷いてしまいましたよ。

こんな感じの文官を連れて行くのは普通に考えてあちらの国からしたら問題を起こす可能性大ですからね、私があちらの国の立場でしたら絶対に、多少無茶な方法でもユナ・ユディタさまを同行させないようにしたと思いますよ!!

それを連れてきたらどうだと提案したってことは、なにかしら意図があってのことと思いますが……。

「これまでの彼女の行動が目に余るとは言え、決定的なものではなかったのであれば今回の同行でどのような行動をするか見定めてみてはどうかと提案されたのですわ」

「まあ!」

プリメラさまが驚いてしまいましたが、私も驚きましたよ……。

いやいやいや王太子殿下、プリメラさまの初公務でなに ついで(・・・) に面倒な相手を排除できたらいいなとか企ててらっしゃるんですか!

勿論、これからのことを考えたり婚約者であるフィライラ・ディルネさまのお気持ちを考えれば穏便にユナ・ユディタさまが退場してくれたら一番だってのはわかりますけども。

(なにごとにも適したタイミングってもんがあるでしょーよ!?)

きっと、こう思ったのは私だけじゃないと思います……。

多分、プリメラさまもケイトリンさんもそう感じているんじゃないでしょうか。

「無論、今回がプリメラさまの初めてのご公務とも伺っておりました。ですので一度はお断りしたのですが……その、わたくしが至らないばかりに……」

フィライラ・ディルネさまの方が常識人じゃないですか!

困ったような、申し訳ないというお気持ちは十分伝わりましたが相手は王太子殿下ですからね……きっとあれやこれやと説得されて、負けてしまったのでしょう。

想像できてしまいました。

「本当に申し訳ありませんでした。嫌な思いをさせてしまって」

「いえ、そういうことでしたら……お兄さまがいけないんですわ」

「プリメラさま……」

「わたしも、フィライラ・ディルネさまとお話をしたいと思っておりました。ですから、序列を見せつけるようなことをされて拗ねてしまったのです。わたしの方こそ、まるで子供のするような振る舞いでした」

にこりと笑ってフィライラ・ディルネさまの謝罪を受け入れ、自分も悪かったのだと示すプリメラさまの大人対応……!!

思わず感動してしまいましたが、本当に立派に成長なされて……。

「でもこれで、ユナを国に戻す口実も出来ましたし、わたくしが嫁いだ後も連れてこない算段も立ちました。代償はそれなりにありましたが」

「代償ですか?」

「……本当にアラルバートさまったら、プリメラさまになにもお伝えしておられませんのね?」

ぱちぱちと目を瞬かせたフィライラ・ディルネさまは、この場にいない王太子殿下に対して呆れたようなため息を吐いたかと思うと、にっと笑ったのです。

その笑顔はそれまでの貴婦人然としたものではなく、どことなく王弟殿下を思わせました。

「わたくし、実はこれでも市井で商人として海運業を営んでおりましたの。そこで手にしている造船の、設計図を差し上げたのですわ。それも最新式のものを」