軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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離宮での王太后さまからのお話は、なんてことありませんでした。

今後のプリメラさまの公務のご予定についてと、その合間にやっておいてほしい事のリストがあるというお話だったのです。

王太后さまによると、プリメラさまは『立派な王女』として公務に対しても大変前向きな姿勢を見せているので、あまり先の予定を教えてそれがプレッシャーになってはいけないということでした。

(ディーン・デインさまの社交界デビューの予定とか、どうやって王太后さまは耳にしていらっしゃるのかしら……)

それって各家庭で話している内容だと思うし、聞いたところ随分先みたいなんですけど……。

とりあえず、私としては教えていただいた内容を元に、今後について計画を立てなければなりません。

「プリメラさま、お時間よろしいでしょうか?」

「あっ、ユリア! おかえりなさい!」

「はい、ただいま戻りました」

ニコニコ笑っておかえりなさいって言ってくれるプリメラさまは本当にもう可愛いです。

私は少しだけ考えてから、プリメラさまをじっと見つめると……不思議そうに小首を傾げながら私を見上げるプリメラさま。あっ、可愛い。

じゃなかった。

「おばあさま、どんなご用事だったの?」

「はい、プリメラさまが公務でお召しになるドレスについてのお話や、当日は王太后さまではなく王太子殿下がご一緒になる可能性もあるということについて教えていただきました」

「えっ? お兄さま?」

「公務で向かわれる先の町は交易が盛んということで、王太子殿下の見聞を広めるのにも良いのではないかと王太后さまはお考えのようです。が、王太子殿下側のご都合もありますので、まだはっきりとは定まらないとのことでございました」

「そうなのね」

プリメラさまは不思議そうにしつつも納得してくれたようです。

まあ元々今回の公務、王太后さまがついていくかどうかもまだ決まっていませんでしたから……プリメラさまにとっての正式な公務、お一人で行くべきではって声があるのも確かです。

私としてはまだ社交界デビューもしていないんだから、保護者同伴でいいと思うんですが。

そんなこんなで後のことをスカーレットに任せて私は自分の執務室に戻りました。

王太后さまに教えていただいたことを思い出し、手帳に記すためです!

色々いっぱいあったからもう忘れそう! 大変!!

(まあ、それ以外にも教えていただいたんですけどね!)

なんでもその町にあるインク屋さんに、とっておきのインクというものがあってそれで手紙を書くと良いことが起きるなんてジンクスがあるんだそうです。

王太后さまは、時間があればでいいからそれを買ってきてほしい……と私にお願いをしてこられたんですよね。

私もあやかってそのインクを買いたいなと思っております。

え? なんに使うのかって?

そりゃまあ、それを使うと恋が叶ったり願い事が成就したりするらしいんですが、それと同時に幸せを願いながら書いた手紙を送ると、その相手が幸せになるらしいっていうんですよ。

なら折角だから、これから誕生日を迎えるディーン・デインさま、プリメラさま、アルダール……みんなのバースデーカードを書きたいなって思っているのです。

(そういえばもう一年経つのねえ)

プリメラさまとディーン・デインさまがお見合いをした日はまだもう少し先ですが、それでももう一年近く経つんだなあと思うと不思議なものです。

ディーン・デインさまの誕生日はそのお見合いよりも前だったので、去年お祝いすることができなかったプリメラさまも今張り切っておられるわけですが。

(私はどうしようかなあ)

こっそり王太后さまに教えていただいたところによると、アルダールは自分の誕生日に色んな人が押しかけてくるのでうんざりしていたらしいんですよね……いやほんと、なんで知ってるんでしょう。

まあ、ちょうどアルダールの誕生日は秋の園遊会とも近いので、そちらを理由に逃げ回っていたとも教えてもらいましたが。

王太后さまの情報網、恐るべし。

(プレゼント……プレゼントねえ……)

去年は告白されて動揺しっぱなしでしたし、その後も園遊会、モンスター騒ぎ、ミュリエッタさんの登場と盛りだくさんだったからそのまま来ちゃいましたけど……今年の私はひと味違いますからね!

折角王太后さまがインクの話も教えてくださったんですから、是非あやかりたいと思います。プレゼントは考えます。

大切な人には、幸せになってもらいたいです。

気持ちを込めて、その特別なインクでお祝いの言葉を書きたいなと思っています。

とはいえ、公務のプリメラさまについていく人員の一人どころか責任者の一人として、買い物に行けるかどうか……そこはスケジュールが来てから調整ですかね……。

王太子殿下の見聞を広めるとかプリメラさまには申し上げましたが、実は王太子殿下の婚約者となる姫君がお忍びで来られるとの話なのですよねえ。

将来妹となるプリメラさまとも是非お話をさせていただきたいとあちらから打診があったのだとか。

そこで、将来妻になる女性と妹の間で上手くやれるのか、その采配を見てみようじゃないかってことらしいんですよね。

――つまり、まだこの話を王太子殿下は知らないのでは……?

ニコラスさんは知っているかもしれない。胡散臭いから。

(でもそうなると、結構な護衛の数になりそうよね……)

まずは目先の公務、そこで買い物に出られるようにしなくちゃいけないこと。

お店の名前。特別なインク。

それらをメモしてページをめくり、夏にディーン・デインさまの社交デビュー予定と記しました。

(……とうとう、プリメラさまもご婚約なさる)

私の中ではもうとっくに婚約してることになってますが、一応まだ『候補』のままです。

それでも普段の生活態度や、努力しておられる姿。なによりプリメラさまがディーン・デインさまを好いておられるということが決め手となったと王太后さまは仰っていました。

バウム家主催のパーティーでデビューを果たし、その後プリメラさまの誕生パーティーで正式に公表されるのだ……と。

ああ、なんて喜ばしいことでしょう!!

(でもその際は私も子爵令嬢としてパーティーに参加するようにって言われてしまったんだよなあ!)

ちょっとそこだけは勘弁していただきたいところではあった。

勿論上からの指示ですから? 断りませんけど!?

(あ、でもそうなるとバウム家主催のパーティーのほうはプリメラさまどうなさるんだろう?)

ディーン・デインさまのことだからお招きしたいと行動してくれそうですが……デビューを果たしていない王女という立場で考えると難しいなあ。

ちなみにプリメラさまのデビューはまた来年という計画だそうです。

まずは今年、王太子殿下が生誕祭でデビューをしてから……とのことでしたから。

はあ、本当にこの辺りはややこしいですね……。

「はい、どうぞ」

「失礼いたします、ユリアさま!」

「あらメイナ。どうかしたの?」

「お客さまがおいでですけど、こちらにお通ししてもよろしいですか?」

「お客さま?」

はて、来客の予定はなかったと思いますが。

とはいえ、メイナの表情は普段通りですし嫌な人が来た様子ではありません。

「どなたかしら」

「オルタンス・フォン・セレッセさまです」

「まあ! ええ、是非お通しして。お茶の準備は私がするからこちらはいいわ」

「はい、わかりました!」

なんと、お客さまはオルタンス嬢でした。

王城に来たから訪ねてきてくれたのかもしれません。

とにかく、未来の妹をおもてなししないと!

私は慌てて茶箪笥の中身を確認するのでした。