軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

356

キース・レッスさまから説明を受けた後、私たちはファンディッド家へ寄り、王城へ戻りました。

別れ際、お義母さまは私の手を握ってこっそり、マルム・フリガスさまに絶縁状をたたきつけたのだと教えてくれました。

その時の笑顔は、とても素敵で……次は、城下町に遊びに行くと約束してくれました。

結局の所、パーバス伯爵家に弔問後はなにがあったのか……ミュリエッタさんはどうなったのか、私が知ることはありませんでした。

なにをする予定で、それがどう作用するのかということはわかったわけですが、それだけです。

(まあ、それが普通なんだけど)

ミュリエッタさんは分類するなら知人ですからね。

私が王城に戻った翌日にはニコラスさんも王太子殿下の後ろにいましたので、きっとすぐにパーバス伯爵家をお暇したのだとは思いますが……。

彼の方から、私に接触してくることはありませんでした。

まあそんな感じでいいんでしょう。

ついでに言うと、エイリップ・カリアンさまがどこに行ったのかも知りません。

本当に出かけていただけなら、多分戻って大目玉を食らうのでしょうね。

その責任をこちらになすりつけようもんなら今度こそ警備隊に突き出してやろうと思います。

「ねえユリア」

「はい、プリメラさま。いかがなさいましたか?」

「ううん、明日の、ビアンカ先生とのお出かけなのだけれど」

「はい」

そう。お出かけの日です!

なんと、王城に戻ってすぐクリストファが来ましてね?

口頭での伝言の他に、必要事項を記した無記名の手紙をもらいました。

こう、秘密のやりとりっぽくてビアンカさまの笑顔が見えるようです。

……いやまあ、クリストファが伝令に来ている段階で公爵家ってバレバレではありますが。

ということで!

ビアンカさま担当である、礼儀作法の授業がある日をまるっと一日お出かけの日としたのです。

名目上は、城外での実地訓練みたいなもの……となってますがそれどういうシチュエーション?

思わずツッコミそうになりますが、他の人がなにも言わないならそれで押し通せばいいのでしょう。

プリメラさまを含め比較的地味な格好で待っているようお手紙をいただきました。

お忍びだから地味な格好というのはわかりますが、一体どこへ行くのか……そこは秘密らしいのです。

「ユリアもやっぱり知らないのよね? どこへ行くのかとか、なにをするのかとか……」

「はい、私も知らされておりません。ただ、馬に乗るようなことはないということは聞きましたが……」

城下町に行くとは聞いていますが……行き先までは聞いておりません。

まあ、ビアンカさまが計画を立てたのだからきっと楽しいことばかりなはずです、最近変なことばっかりだったので嬉しいですね!

「一体なにをするのかしら、楽しみにしていてねって以前お会いした時に仰っていたけど……」

「きっとビアンカさまのことですから、素敵な予定を立ててくださっておられますよ」

「そうよね! どうしよう、楽しみで夜は寝られないかもしれないわ!」

「まあ、プリメラさまったら」

本当に可愛いんだから! もう!!

でも気持ちはわかります。

社交シーズンも落ち着きましたし、ビアンカさまもきっと楽しみにしておられるに違いありません。

「だけど、護衛は連れてきても一人って話だったんでしょう?」

「はい、そちらはすでに決めておりますので」

「そうなのね、ああ、楽しみでどうしよう。秘密ってわかっているのに、おばあさまに話してしまいそうよ!」

くすくす笑うプリメラさまと私は、今日王太后さまと共に貴族家のお勉強です。

いえ、私は侍女として後ろに控えるのがメインですがね!

私は私で、侍女として他家の侍女や執事、秘書官で気にすべき人間について教えていただく意味合いも含まれております。

王女としての公務、これから忙しくなる中で主人同士が駆け引きをするのと同時に私たち使用人勢もそういった駆け引きや、端々に目を光らせなければならないのです。

雑多なことでプリメラさまを煩わせるわけには参りません。

そういう意味でセバスチャンさんは陛下の執事であったことから百戦錬磨ですが、私はその点まだまだですからね……。

とはいえ、王女宮を預かるのは私です。

私がしっかりしないといけません!

王太后さまのお話は、聞いているだけでためになりますからね……。

脳内メモをフル活用しても追いつかないから知恵熱が出そうですが、そこは涼しい顔をしてやってのけるのがオトナってもんです!

(でもボイスレコーダーがほしいと思う日があります。今日みたいにね!)

……若干弱音を吐きたい時もありますが、私は元気です……。

明日になれば楽しいイベント!

そう思って今日も乗り切りたいと思います!

「そうそう、今期の社交シーズンが終わったから、次のシーズンに向けてドレスを作ってもらわなくてはね。プリメラにも参加してもらうから、ユリアもそのつもりでいてちょうだい」

「かしこまりました」

「そうね、王女とはいえ社交界ではまだ新参者。華やかすぎず、かといって地味すぎず……色は明るめ、装飾品は子どもだから控えめにしてちょうだいね?」

王太后さまの言葉に、私は頭を下げました。

おお……本格的にプリメラさまの社交が始まるのですね……!

プリメラさまも王太后さまの言葉に緊張の面持ちですが、なんとなく、私も緊張してまいりました。

いやほらだって、社交場に私もついていきますからね!

メイナやスカーレットだと年若いという理由で侮られそうですし、セバスチャンさんだとドレスやなにかにトラブルがあった際にあまり手が出せない場合もありますから。

なんたって、私、王女宮筆頭ですが同時にプリメラさまの専属侍女ですし?

私がついていかないで、誰が行く!

「ついでだから貴女もドレスを何着か作っておきなさいね、ユリア」

「はい。……はい?」

「あらいやだ、もう耳が遠くなったの? まだまだ若いのだから体には気をつけるのよ?」

「いえ、そうではなく。なぜ私も……」

「貴女だって子爵令嬢なんだから、買い揃えるばかりじゃなくてきちんと専用のものを持つべきよ? 今回はわたくしが手配してあげますから、大人しくなさい」

くすくす笑う王太后さまがひらりと手を振れば、針子のおばあちゃんがいつの間にか私たちの傍にいました。

手にはメジャー。

ニコニコ笑うその姿は愛らしいですが、どことなく……気合いが入っているような……?

「プリメラはわたくしとあちらで次の社交について考えましょうね。わたくし主催で行う茶会からの参加になるから、招くのは高位貴族になるわよ」

「公爵家の夫人たちですか?」

「ええ。だけれどそこで注意なのは……」

あああ、なんだか重要そうな話をしておりますが、私はおばあちゃんに連れられて採寸のために別室へ。

ちょっぴりその話、聞きたかったです!

後でプリメラさまに教えていただきましょう。

幸いにも、社交界デビューの時とサイズは変わっていないと言われて胸をなで下ろしました!

これでほら、色々サイズアップしていたら慌ててダイエットでしたよ……!

「ババア、頑張る、ね……」

「いつも素敵なドレスやワンピース、ありがとうございます。後ほど代金は支払いますので……」

「王太后さまは、ああ、言ったけれど……」

はにかむように笑ったおばあちゃんが、そっと私の手を取って優しく撫でてくれました。

最近忙しくてなかなか一緒にお茶もできませんが、ああ、おばあちゃん……!

思わず手を握り返した私ですが、誰も見ていないので許して。

「頑張ってる、孫に、ババアからの、ご褒美……ね?」

お、おばあちゃあああああああんん!!