軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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夜中の芋ようかん会はみんな大満足、ということをここに報告いたします。

とりあえずアレに合う紅茶は大至急必要だろうとメッタボンが申しておりましたので、そこについてはセバスチャンさんが請け負ってくださいました。

そして私がコクを増したいから黒糖も少し加えたらどうだろうと言ったところ、メッタボンがそれならジェンダ商会が取り扱っていると教えてくれました。

あとはわかるね?

そう、私の買い物と称した商会巡り、それでセバスチャンさんから預かった紅茶のリストをリジル商会で、黒糖をジェンダ商会で。

それぞれに注文するという名目ができたのです!!

本当に今回は色々試す目的でもあるので、御用聞きを呼びつけてってするほどでもないから私が買い物をするついでに買ってくるということで落ち着きました。

いやうん、私としては堂々と買い物に行ける名目ができたので嬉しい限りですが。

(……それは、いいんだけども。いいんだけども!)

王城からリジル商会へ行き、そしてジェンダ商会へ。

夜になる前に帰る……ということでレジーナさんと打ち合わせもしてあって、どこも抜かりはない。そう思いました。

思いましたが、今、私と一緒に馬車に乗っているのは護衛のレジーナさん……ではなく、なぜか、ハンスさんだったりするのです。

(どうして、こうなった……!?)

思えばハンスさんと言えばアルダールと私がお付き合いを決めた時に現れたりとタイミングが悪い男性というイメージがありますが、近衛騎士というだけあって実力者には違いないのでしょう。

とはいえミュリエッタさんにメロメロになっていた姿だとか、スカーレットに軽薄だと叱られていた……などという話を聞いているせいであんまり良い印象がないっていうか……うん、黙ってれば結構イケメンだと思いますが。

なんでしょう、私の中でハンスさんはやっぱりアルダールにアイアンクローを食らっている姿が印象深すぎて……。

「いやあ、そんなに見つめられると困っちゃうな!」

あははと朗らかに笑ってますけど、そういうことじゃないんだよな!?

レジーナさんとの待ち合わせの場所に行くと、現れたのは難しい顔をしたレジーナさんと何故かハンスさん。

なんというか、彼女に用事ができたからリジル商会で買い物を終えるまでは自分が代わりを務めるよなんて言ってきたハンスさんですが……。

どっからどう見たって怪しい。

というか怪しさしかない。

あきらかに何かありますよ! っていう形でこうやって馬車に一緒に乗っているのに、かといって話してもこないハンスさんに私は何とも生温い気持ちになります。

そうやって考えるとニコラスさんって胡散臭いけどそういう点ではやはり上手い人なんだなあ……。

(胡散臭いし怪しいって思わせるけど、ちゃんとそれがそうと匂わせることができるものね。まあ、ハンスさんがわざと怪しいと思わせてそれ以上言わないという可能性もあるけれど)

にこにこ笑っているハンスさんに、私はそっと息を吐き出しました。

ご丁寧にリジル商会で買い物を終えるまでだなんて、その間に何があるというのでしょう。大した用事があるわけじゃありませんし、監視でしょうか?

「……ハンス・エドワルド・フォン・レムレッドさま」

「お、おお? フルネーム呼びとはこれまた仰々しいなあ。アルダールの同僚なんだし、初めて会うわけじゃないんだから……」

「なにがあるのか、言っておいていただければこちらでも気を付けるくらいはいたしましょう。何をお求めですか」

「……」

何も聞かないで知らないふりをして買い物をし、ジェンダ商会に向かってはいさようなら。

それが多分スマートなんでしょうね。

だけど、なんとなくそれは癪だったというか、また自分が知らないところで勝手に話が進んでいたりするんじゃないかと思うといやじゃありませんか。

それが上の方々からの指示で言うことができないならばそれはそれで仕方ありませんが、そうじゃないなら言っておいてくれって思ったりします。

まあ、言われたからってそれに大人しく従う義理もないんですけどね!!

そんな気持ちを込めてあえて貴族にとって正式な問い合わせともいえるフルネーム呼びまでしてからそう問うたので、彼は驚いていました。

ちょっとやりすぎたか……と後悔し始めた私に、ハンスさんはにんまりとした笑みを浮かべました。

「まさか正面切って問われるとは思わなかったなあ」

「お答えできないのであれば、それはそれでかまいません」

そこんとこはきっぱりはっきりさせていただきましょうか。

そもそもの話、筆頭侍女とはいえ侍女の護衛を近衛騎士が護衛騎士の代理で立つなんて方がおかしすぎて誰からも突っ込まれるところではありますので、私がこうして疑問に思うこと自体は彼も想定していたはずです。

アルダールとお出かけの際に護衛がつかないのは単純にアルダールの強さが折り紙付きであることとプライベートだからと気を遣ってくれた護衛騎士の方々の厚意です。

(もしこれで私がプリメラさま関係とかで命を狙われているとかだったらたとえデートであろうと護衛がつくことは理解してますけどね、今回のこれは絶対違うでしょ!)

私がまっすぐにハンスさんを見据えれば、彼はくすくすと笑って姿勢を正しました。

そうやって真面目な顔をしていると、アルダールよりも少し年上だという雰囲気がしてそちらの方がモテるんじゃないかなって私は少し思いましたが、彼はすぐにまた笑顔を見せました。

「まあ、色々あるんだけどね。いくつか理由を挙げるとするなら、まずきみがナシャンダ侯爵家に養子となるかどうかの問題で、かな」

「……やはりその件は多くの貴族家に知られているのですね」

「まあ、さすがに侯爵位にある家のことだからね。うちも同じ侯爵家だからさ」

レムレッド侯爵家は軍閥だったはずだから、バウム伯爵さまがどこの派閥と手を組むのかが気になるってことかなと私は顔に出さないよう考えました。

でも、私がもし侯爵さまの養女になったからといってパワーバランスが崩れるとは思わないけどね!

「アルダールがあそこまで一途になってるんだから、ミュリエッタちゃんには悪いけど入り込む余地はないと俺は思ってるし、二人のことは応援してるよ」

「え?」

「個人的にユリア嬢と話をしたことはないけど、アルダールってやつのことは俺も知ってる。あいつがそう簡単に女性に騙されたり手のひらで転がされるような可愛い野郎じゃないってね」

「……それ、は、どうも……?」

何と言って良いのかわからず曖昧にそうとりあえず言えば、ハンスさんはおかしそうに笑いました。

その笑顔は無邪気なんですが、え、ミュリエッタさんのことを彼は好いていたのでは。

(ああ、そうか、アルダールと私がきちんと結ばれた方が彼にとっては都合がいいのか)

ミュリエッタさんが諦めることができたら、その時こそ彼にとってチャンス。

誰もがわかる、構図です。

(……だけど、それだけ?)

違う気がする。

これは、ただの私の直感に過ぎませんが。

「その目はまだ納得してないってとこかな? 残念だけど、聞かせてあげられるのはもう一つくらいかな」

「他にもあると?」

「うん、そうだね。とりあえず、きみの存在は近衛騎士が派遣されるほど重要視されているということを、人の目があるところで見せつけるってのが目的だってこと」

「……だから、リジル商会について行くと」

「そ。理解が早くて助かるなあ! 俺もこの後に別の任務が入ってるからリジル商会までなんだけど、本当はジェンダ商会までついて行きたかったんだよねー! ほら、ミュリエッタちゃんにプレゼントも選びたかったし」

へらへらと笑って言うその内容に、私は若干の気持ち悪さを覚えました。

ミュリエッタさんにプレゼントを選ぶ云々のところじゃないよ!

(……私が大事にされている、って見せつけるのは一体誰相手になのかしらね)

そこについてはおそらくもう話してくれないのでしょう。

世間話に切り替えられてしまったのですから、私も『言えないならばそれでいい』なんて言っちゃった手前聞けません。

そんな私のことに気づいているのでしょう、ふっとハンスさんはへらりとしたものとはまた違う笑みを浮かべて、私を見ました。

一瞬背筋がぞくってしましたけど、でも目の前にいるハンスさんの笑みは優し気なものです。

(……気の、せい?)

「大丈夫だから、ユリア嬢はどうかアルダールをよろしくね!」

「え……?」

「あ、ほらリジル商会が見えてきたよ」

にっこり笑ったハンスさんに、私はただ頷き返すしかできませんでした。

近衛騎士、やっぱり一筋縄ではいきません……侮れない!!