軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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本当にBBクリーム欲しい。あれの万能さを痛感する日々です。

うん……まあね、避暑地への移動って基本馬車だからね。

別にいいんだけどさ。でも暑いんだよね!

さて避暑地への移動となりました。早くねってツッコミがありそうですが、国王陛下からお話が出てからあれよあれよと準備が整ったのです。お針子のお婆ちゃんがあっという間に夏ドレスを作成し終えたことが大きいような気がします。あの人一体全体何者なんでしょうか。底が知れません。

あ、勿論私も作っていただきましたよ!

腰の高い位置で紐を結ぶため、スカートがものすごくひらぁっとする感じのやつです。わあ、エレガントな……と思いました。着る機会あるんですかね、避暑地とはいえお仕事で行くんですし……。プリメラさまほどではありませんが、複数枚作っていただけて恐縮です。思わず申し訳なく思って謝りそうになりましたが、針子のお婆ちゃんに「……もう甘えては、くれないの……?」ってそっと微笑まれたら受け取らざるを得ないでしょう。おばあちゃああああああああんん!!!! 勿論代金はきちんとお支払いしました。でもきっと破格なんだと思います。

勿論侍女服も夏服ですよ! こちらは国からの支給品ですが、夏仕様になると濃紺のロングドレスが上品なグレーカラーになるのです。勿論袖は長いままですが……それでもリネン仕様になってるので割と涼しいのですよ。エプロンはコットンです。エプロンも夏仕様でデザインが少し違うのですよ!

意外と侍女やメイドであろうとも、しっかりオシャレなのです。

おっとそうそう、移動ですが私、魔法の馬車を初めて使いました。使ったというよりは同乗させていただいたというべきですが……。

一体どういうことかって?

そりゃまあ、王族の方専用馬車というやつがあってですね、そこまでならば良くある話。王家の紋が入っているものに王族の方が乗り移動する。別に変な事じゃありませんね。

ただしこの世界、剣と魔法の世界です。私が魔法を使うように、魔法の道具というものも存在しているのです! 王家所蔵の魔法の馬車は、一見普通の豪奢な馬車ですが、中は空間魔法が使用されていてまるで王宮の一室かのような広さです。そこで王族の方が退屈なさらぬよう娯楽の品を携え、護衛騎士をひとりつけ、従者や侍女が食事や飲み物のお世話をさせていただくのです。

本来、王太子殿下専用の馬車の後ろにプリメラさまの馬車がつくものですが……どうせなら一緒に乗ろうと仰るお二人の兄妹の仲の良さから(内部が)大き目の馬車を使うことを国王陛下がご許可くださったのです。正妃さまがどう思われているかはわかりません。

で、そんな便利な魔道具さすがに王室くらいしか持っていないような代物だそうで……。

乗る時緊張したわあ。まあ乗っちゃえば部屋の中みたいなものだから給仕に専念しちゃうけどね!

先日リジル商会で買った茶葉も持参させていただきました。お茶菓子は日持ちするものをメッタボンが用意してくれましたし……問題は護衛騎士のお二人でしょうか。プリメラさま付きの護衛騎士は今回ローレンさんが、他の方は馬車の後方についていらっしゃいます。

こちらのローレンさん、栗色の巻き毛をお持ちの何ともたれ目で色っぽい雰囲気を持つ女性です。おっとり穏やかに喋られますが、セクハラにはとても厳しいナイスバディの持ち主です。

対する王太子殿下の護衛騎士は……たしかエディさんだったかしら? 見るからに脳筋タイプの逞しい方です。先ほど挨拶を交わしてからも睨み合っているようですが、せめてこの馬車の中だけでも仲良くしてくれないかしら……幸い、王太子殿下もプリメラさまもおしゃべりが楽しいようでそちらの様子は気にならないみたいだけど。私は王太子殿下の侍従であるアーロンさんと視線でお互い大変ですね……とため息をこっそり吐き出すくらいしかできませんでした。

とはいえ、お兄さまお兄さまと無邪気に笑うプリメラさまは可愛いので良いでしょう。

アラルバート・ダウム殿下でも紳士としてのスキルが上がっているのか、プリメラさまに会うなり「新しい夏用のドレスを用意したのか。とても似合っている」とすかさず褒めるとは……やるな!

そういえば忘れがちですけども、プリメラさまってゲーム設定では悪役なんですよね。

しかも太っていて超我儘で、それをアラルバート・ダウム殿下は哀れに思って仲良くしていた、という設定だったんですよね。大分変わっちゃいましたが、まあ 障害(苛め役) がいなくたって本当にヒロインが王子と結ばれるという王道ストーリーが進むならきっと大丈夫でしょう。

なにせ、現実問題で考えたら苛め役よりも大きな障害はちゃぁんと存在しているのですから。

そう、最大の障害は礼儀作法に行儀作法です!! 田舎の辺境地で一代限りの男爵位を賜った冒険者の娘、そういう主人公設定です。たしか恐ろしい魔獣を倒すのに冒険者である主人公の父親が大変功績をあげたとかで一代限りの男爵位を与えられ、その娘ということで国王陛下が王城にお招きになり行儀作法やそのほか、城下にある国内最高峰の学院に入学する許可を与えるのです。

そしてゲームでは男爵令嬢とはいえ一代限りのことという夢のようなものなので、出会いがあればがっちり捕まえろよという宰相閣下のありがたくないお言葉で(勿論本来はもっと言い方は丁寧かつナチュラルなものですよ)スタートです。

基本は城下に用意してもらった館に父親と二人暮らし、王城に通って礼儀作法・行儀作法の勉強からの学院で魔法やそのほか歴史や算術など学校らしい勉強、という繰り返しです。そこで出会う攻略対象たちと会話やイベントを重ねて、というロマンスもの。

何故に王城で礼儀作法を学ぶんだ、と当時は思いましたが――そうですね、学院で学ぶにもあそこは基本的に貴族の子息や子女が通うので基本的にマナーとしてすでに学んでいる状態。

そこに冒険者の娘がただ放り込まれるなんていうのはフォローがなっていないということだったのでしょう。実はその辺スキップしててまともに読んでませんでしたごめんなさい。

まあとにかく元気な女の子系主人公であったことは覚えています。

最近よく思い出せないことが増えてきました……って別に頭が悪くなったとかじゃないですからね!? 前世のことを思い出せない、というもの。まあ人間の記憶能力には一般的に覚えることよりも忘れることの方が得意だと何かのネットニュースで見たことがあって納得した覚えがあります。

というか、思い出せないのはこのゲームの内容限定ですけど。

まあ細かいことは思い出せなくてもあんまり支障はない気がします。そういえば暗殺者ルートはクリアしてないので誰が暗殺者かわからないんですが……攻略ページで先に裏エンディングを間違って見てしまってまさか殺されて食われるなんていうオチを迎えるなんて思ってもいなかったのでそっ閉じしちゃったんですよね。

正規ルートのエンディングとかどんなだったのでしょう。今更ながらやっておけばよかった。勿体ない……。あのゲーム意外と高かったんだぞう。

というか私よく考えたらモブ未満なのにいつの間にか攻略者とかと近い距離に居ますよね。

いや、メインではないな。今でも。

それでもプリメラさまが悲しい未来を迎えない方向にはなっているから一安心かな? やっぱりね、生まれる前から知っているとものすごい愛情があるんですよ。ただでさえゲームでのあの惨状は親の愛情欲しさだとかこうやってそばに居て知っている以上ね。

プリメラさまはとても良い子に育ってくれたんだもの。アラルバート・ダウム殿下の妹に向ける愛情は、偽りなんてない。

この避暑地での短期間の兄妹水入らずの生活で、どうかおふたりの絆が今以上に深まりますように!

それにしても……美形兄妹とか本当に可愛いなあ! 可愛いなあ!!

「ねえねえユリア、このお菓子お代わりしてもいいかしら?」

「はい、ただいま」

「こらプリメラ、今からそんなに食べては昼食が入らなくなるぞ」

「はぁい……でも、ほんのちょっとならいいでしょう? お兄さま!」

「……ちょっとだけだぞ」

ほらね! ほらね!!

可愛い。癒される。思わず微笑んじゃいそうです。きゅっと顔に力を入れておかなくちゃ。

……視界の端で、まだ護衛騎士ふたりが睨み合っているのが見えた気がしましたが……見えなかったことにしようと思います。