軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「うん、会いたかった。私と同じだと言ってくれて嬉しいよ」

くすくす笑うアルダールに、その余裕っぷりがまたもうね、なんていうんでしょうね?

勝てなくて悔しいってところでしょうか! まあいいんですけども!!

そんな小さなことで不機嫌になるほど私も子供ではありませんから、何事もなかったように振舞うなどお茶の子さいさいですとも。

「それで、話なんだけれどね」

「はい」

「……ここではちょっと、話しづらいから後日時間を取ってほしいんだ。私の方でも色々とその間に片付いて、きちんとユリアに説明できるところまできていると思う」

「わかりました」

迷うことなく私が返事をすると、アルダールはどこかほっとした様子を見せていました。今すぐ説明しろ! って私が詰め寄るとでも思ってたんですかね?

以前、ちゃんと話せるようになったら話すと約束してくれたのですから、待ちますよ。まったくもって心外です。

そんな私の心情が伝わったのでしょうか、アルダールは少しだけ気まずげに視線をさまよわせてから、私をまっすぐに見ました。

「信じてくれているとわかっていても、色々話せないことが多くて申し訳なかったと思っているんだ」

「……はい」

「ありがとう、ユリア」

「それはきちんと説明していただいて私が納得できるかだと思いますが」

思わずちくりと言ってしまいましたが、そこは譲れません。

そりゃまあ色々あると思いますよ。貴族の関係性とか利害とか、体面とかどうやって丸く収めようとするのかとか。

でも私が関わっていて私に知らせずなにかをしているのに、説明は後回しってされたら誰だってそこは不満に思うものです。

それが『私のため』だとわかっているし、それをしているのが私が信頼している人たちだと思えばこそ、待てるのです。

「……ちゃんと、話してくれるんでしょう?」

隠さず、今度こそ最初から。

互いに立場があって、それは仕方がないと理解はできていてもどこかに残る『どうして?』がちらりと顔を覗かせてしまい、またはぐらかされたらどうしようとか、そんなネガティブな気持ちが滲んで。

アルダールに掛けた声が、少しだけ揺れた気がします。

ああ、しっかりしなくては!

けれどアルダールは、そんな私のことを笑うでも気づかないふりをするでもなく、真面目な顔でじっと見つめて私の手を取りました。

そして何かを誓うかのように私の手を持ち上げて指先にキスを落としました。

いつもの甘い雰囲気とは何かが異なるそれに、思わず息を呑むとアルダールはどこか熱っぽい視線を私に向けてきているではありませんか。

「アル、ダー、ル?」

「きちんと、話す。そのために、私も尽くしてきたつもりだ」

「え、ええ。信じて、います、よ?」

「だからユリアも、聞いてほしい。最後まで」

「最後まで……?」

「……。さて、私はそろそろ戻らなくては」

「えっ? あ、ああ! そうですよね!!」

アルダールが私の手を離して、いつもと同じように優しい笑みを浮かべたことにほっとしたような、これこのままにしていいのかって思うような、そんな気持ちになりました。

けれど休憩時間の合間に来ているということと、なんとなくいつもと違う雰囲気ということに私もまた、何事もなかったというように振舞うことにしたのです。

(いや、なんていうか、……怖かった、とは違うんだけど……)

なんだろう、どこかで前にもあったような空気だったんですが。

心臓がバクバクしてうるさくて、頭が回らなくなってしまうのはちょっといただけないのです。だって、話し合いにならないでしょう?

だから、きっと、これで良かったはず。

「わざわざありがとう、アルダール。私の方も予定がわかり次第連絡しますね」

「いや、私の方が不規則な勤務体系で迷惑をかけているからね。会いに行くのは当然のことだよ」

当然って言うけど多分違うよ……?

そうは勿論声に出して言えませんでしたが、割とアルダールってマメだと思うんですよ。多分。

世の女性のコイバナを耳にした限り。めっちゃ理想的な振る舞いをしてくれていると思いますよ!?

「あ、ありがとう……」

「私が会いたいと思って通い詰めているだけなんだから、ユリアは気にしないで。むしろ迷惑だったらちゃんと言ってほしい」

「迷惑だなんて!」

「良かった。……ああ、そうだ」

不意に手が伸びてきたかと思うとアルダールが私のことを抱きしめてきて、瞬間的に何が起きたのかわかりませんでしたよね。えっ、良い匂い。

抱きしめられたのだと理解した瞬間には顔が赤くなったと思いますが、アルダールは私に向かってとてもよい笑顔を見せてくれました。

「ユリアを補充していかないとって思っていたんだ。ありがとう」

「どっ、ど、どういたしまして……!?」

「それじゃあまた連絡する」

ひらり、と手を振って出ていったアルダールの姿が見えなくなってから、私は思わずへたり込みそうになりましたがそこは気合で堪えました。

だってほら、今、私は勤務中ではないにしたって、いやほらね、へたり込んだらもう立てない気がしてしまったもので。

(大分、慣れたと、思ったのにいいいィィ!?)

まだまだ、恋愛初心者だってことですかね……。

抱きしめられるにも覚悟ってものがいるんですよ!!

って言えたら楽なんでしょうがそうなったらそうなったでそのうち『言わなくても察してくれたらいいのに』とか思い始めるんでしょうから贅沢極まりない悩みです。

(でも)

補充していきたい、ですって。

それってつまり、私がいないと困っちゃうってことですよね。

ほんの少し、一週間程度離れていたっていうだけなのに。アルダールが、あのアルダールがそんな風に言うっていうのは、自惚れでも何でもなく私って愛されてるなって思うわけです。

そう思うと顔がにやけるのが止まらなくて、思わず手で押さえ込んでしまいました。

でもきっと今の私は、緩み切った顔をしているに違いありません。ついでに顔も真っ赤だと思います。

(照れるけど、めっちゃ嬉しい……!)

アルダールは、知らないんだろうなあ。

私がこんなに、好きなの。いやバレてるのかな。

顔に出さないようにしているつもりだけど、彼と一緒にいるようになってから随分侍女として以外の私がポンコツなのが知られている気がするし。

でも、私は好きだって言葉にするのが苦手で……っていうか同じ恋愛初心者の人でも積極的だったらもっとこう……ぐいぐいいけたのかなあと思うと自分が奥手過ぎて呆れるくらいなんですけども。

(大丈夫、アルダールはちゃんと話してくれる)

ただその内容がどういうものかっていうのがね、

私にとって納得できるものかどうかは別だってワケで……。

となると、やはりあとは納得できるまで話し合いすればいいんだから今は考えないことにしましょう!

それにしても王城では話しづらいというのはどういうことなんでしょう。誰かに聞かれると困る話なのか、それとも王城だとその話をするのに邪魔をしてくる人間がいるかもしれないとか?

(その辺りのことについてもアルダールが説明してくれるのかしら)

とりあえずプリメラさまの今後のご予定と、自分の休みの両方をしっかり確認した上でセバスチャンさんにも相談して調整がいつでもできるように整えておくことにいたしましょう。

色々気になることはあっても、お仕事に手を抜く気はありませんからね!

(あ、ビアンカさまのお誘いはいつになるのかしら)

そこも大事だった!

まあビアンカさまのことですもの、きっと今回の養子縁組の件とかも耳にしているはずですしアルダールとの話し合いが重なってしまったら延期とか、言って……くれるかなあ、ビアンカさまもお忙しい方なのよねえ。

できたら全部の予定が、上手くかみ合いますように!