軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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一週間ほどの滞在を経て、今回のナシャンダ侯爵領への旅行が終わりました。

さすがに王女殿下の滞在が一日、二日といったほんのちょびっとっていうのは余裕がなさすぎて対外的にもよろしくないですから、まあこのくらいが妥当ではないでしょうか。多分。

そして帰った私たちがしたことは、まずプリメラさまのお荷物を片付けることと、王女宮の掃除からでしたね! といっても基本的な掃除は毎日なされていますし、プリメラさまのベッドメイキングですとかその辺りが中心です。

書類もちょびっとだけありましたが急ぎの案件は無いようでした。

私も令嬢としての荷物、そして頂いた贈り物の数々の片付けがありましたのでそちらは申し訳ないのだけど不参加で。

できる書類はスカーレット、ベッドメイキング等はメイナ、プリメラさまの給仕はセバスチャンさんと分担を決めて私は後程みんなからの報告を受けて日誌を書くということでまとまりました。

みんな有能だとほんと助かりますよね!

(今日はもう私はお休みでいいとプリメラさまも仰ったし、大丈夫そうならアルダールに会えないかな)

帰る時期は勿論連絡済みですし、彼も私が戻ってきていることは知っているでしょうし……とはいえ、私は近衛隊の勤務時間を把握しているわけではありませんから。

こうして考えるとアルダールが時間のある時に私の所に足を運んでくれるのがどれだけありがたいかって話で……。

不規則な勤務体系だから当然だって言ってくれるからそれに甘えていましたが、そういえば私から会いに行くということは数えるくらいしかないかも。

(……会えないか、聞くくらいなら、いいよね)

なにせ私! アルダールの! 彼女ですからね!!

表向きもこのくらい堂々とできたらいいんでしょうが……まあそこは次の課題です。

それにしてもこの贈り物の数々、どうしてくれようか。

侯爵さまのお気持ちがこもっていてとても嬉しいし感謝しておりますが、今まで持っていた服となんかこう、クローゼットの中で格差が……ひどい……。

若干顔が引き攣るのを感じましたが、まあ仕方がないよね、とそこは割り切ってぐいぐい荷物を詰めていきました。

私の荷物も、片付けるのを手伝うとメイナが申し出てくれていたんですがこればっかりは自分でやりたいと言った手前さくさく終わらせなければ!

「こんなものかしらね」

普通のご令嬢は自分で荷物なんか片付けないと言われるかもしれませんが、私は侍女ですからね! 王女宮に戻って来たからには令嬢である前に筆頭侍女という自覚を持って行動しようと思うのです。

すっかり片付いた荷物に満足したところで、執務室の方に足を向けるとノックの音が聞こえました。

「はい、どうぞ」

今日は侍女服じゃありませんけれど、このまま居留守を使うのも申し訳ないので思わずそう応えるとドアが開いてクリストファがちょこんと顔を覗かせました。

うっ、可愛い! いつも可愛いけどその顔だけ覗かせるとか追加で可愛い。

「クリストファ、いらっしゃい。今日はお使いですか?」

「……うん。これ、奥さまから」

「ありがとう。返事は必要ですか?」

「いらない」

ふるふると首を左右に振る姿がまた可愛いんですけれど久しぶりに会ったっていうのもあるんでしょうか。

それにしても、プリメラさまもそうですが……この年頃の子って。

「背が伸びましたね、クリストファ」

「……? そう……?」

「ええ、ちょっと会わないうちに随分伸びている気がします」

なんとなく手を伸ばして頭を撫でると、クリストファがちょっとだけ目を細めました。

それは嫌悪とかそういうのではなく、猫が気持ちよさそうにしているような姿で可愛いなあって思います。でもやっぱり背が伸びたよね、前よりも撫でる位置が高くなった気がする!

「そのうちクリストファも私の背を追い越していくんでしょうね。弟もそうでしたから」

「……うん」

メレクもこんな可愛い時期があったんですよ!

今だって勿論可愛いですけどね! でももうお嫁さんももらっちゃう年齢の弟にいつまでも可愛いなんて口に出してはいけないので、心の中でね。

「ユリアさまも」

「なんですか?」

「綺麗になってる」

私の手から離れたクリストファが、軽くふるふると頭を振ると私に撫でられて乱れた髪が一瞬で戻りました。なんというキューティクル。

思わずそんなことを思いましたが、なんだか今爆弾発言を耳にした気がします。

「く、クリストファ?」

「あの人が嫌になったら、いつでも言って」

「あ、あの人、です、か?」

いかん、思わず動揺してつっかえつっかえになってしまいましたが、あの人って誰のことですか。

私の問いに対してクリストファはいつものように無表情なままコクンと頷いて見せましたがそうじゃないのよ、クリストファ?

「誰のことを言っているのかはわかりませんが、大丈夫ですよ」

「……大丈夫?」

「ええ! 私も大人ですし、たくさん頼りになる人たちがいますからね。でも心配してくれてありがとう」

「なら、いい」

なんだかよくわかりませんがクリストファが納得した様子でまた一つ頷いたかと思うと、失礼しますとお辞儀をしてさっさと出ていってしまいました。

……だいぶ仲良くなったと思っていましたが、まだまだ彼の考えていることが読めません。未熟!

(あの人って、エイリップ・カリアンさまのことかしら。それともミュリエッタさんかしら)

もし、クリストファを頼ったらどうするつもりだったんでしょう?

ビアンカさまに伝えるとか……まあ妥当なところですよね。あの子は公爵家の使用人なんですから。

そうそう、ビアンカさまからのお手紙でした!

「ええと、なになに……?」

一目でわかる上質な紙に美しい文字が一行。

えっ、これだけ?

『遊びに行きたいわ、行きましょう』

えっ、これだけ!?

しかも拒否権がない感じなんですけど!?

詳細がないんですけど、お返事要らないってことはあちらで準備だのなんだのをするから身一つでいらっしゃいねってことだなコレは!

(……あれかな、侯爵家へ遊びに行くってプリメラさまが話した時に羨ましそうにしてたからそれかな……)

ビアンカさま、社交界のレディたちからすると憧れの君って感じだけれど実際は結構こう……お茶目な行動派だからな……そう思うと何を計画しているのか若干心配だけど。

まあビアンカさまは公爵夫人としての立場を忘れることなどないでしょうからきっと大丈夫でしょう。

「プリメラさまもご一緒できることだといいんだけどなあ」

びっくりはしたけど、お誘いは素直に嬉しい。

手紙を封筒に戻して、口元が緩むのも構わずくるりとその場で回ったところでまたノックの音が聞こえました。

今日は来客の多い日です。

「はい、どうぞ」

「失礼するよ」

「……アルダール」

あらやだ、私から連絡しようと思ったら向こうから来るだなんてこれなんて以心伝心? 嘘です、ついさっきまでビアンカさまと遊びに行くことに想いを馳せておりました!

ちょっとだけびっくりしていると、私の反応にアルダールは不思議そうにしてくすりと笑いました。

「そんなに驚かなくてもいいじゃないか。帰ってくると聞いていたから、様子を見に来たんだ。休憩だからすぐに戻らないといけないんだけどね」

「そうだったんですね。私も後で連絡しようと思って……」

「会いたいと思ってくれた?」

「……手紙を送ったじゃありませんか」

「うん。その内容もちゃんとわかっているよ。それ以外に」

にっこりと笑ったアルダールに、私はやっぱり勝てないなあなんて思いましたね。

でも簡単にそれを認めてみせるのは悔しいので、にっこりと笑って見せました。

「そうですね、アルダールが私に会いたいとこうやって来てくれるのと同じくらいには」

どうですか! 大人の女の返しだと思いません?

いやまあ、この間読んだ推理小説で出てきたキャラクターがこれまたかっこいい女性でそれの真似なんですけどね。

……うん? 私が思い描いたのとはかなりかけ離れてるっていうかやっぱり慣れないセリフは言うもんじゃない。照れてきた……。

目の前でアルダールはきょとんとしてから、私を見てまた笑ってるしね!!