軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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戻ったらアルダールときちんと話をしよう。

ちょっとなんだかアレな感じでアレ過ぎてアレなんですけどね! 何が? よくわかんないけどアレなんだって!!

でもとりあえずそれは『戻ったら』なので、一旦横に置いておくのです。

逃避ではありません。

離れていることで冷静になれる部分もあるのでしょうし、会える時までに色々考えをまとめておかなければ! ええ、そうですとも。

「ユリア、どうかしたの?」

「この色合いの薔薇は初めて見るなと思っただけです、申し訳ございません」

「ううん、大丈夫よ! ルイスおじいさまのお庭は本当に色んな薔薇があるものね。見たことがない薔薇がたくさんあって、とても楽しいわ」

「さようにございますね」

そうなのよね、咄嗟に誤魔化したけど本当に見たことない薔薇がいくつもあるってすごいよね!! いや、そんなに植物に詳しいわけじゃないんですが……薔薇ってみんな似ているのかと思ったらこうしていっぱいあるとやっぱり違うなってわかるもんですね。

色とりどりで花びらの形がちょっと違うとか、同じ色合いなのに雰囲気が違うとか。

こうしてみると、何と個性的なことでしょうか。

「そろそろルイスおじいさまも来られるかしら?」

ぼんやりと薔薇を眺めている私の横で、そわそわとした様子のプリメラさまが視線を館の方に向けておられる姿が、んんー可愛い。

本日はプリメラさまのご希望でもあった外でのお茶会を開くことになったのです。

勿論侯爵さまは快くそのお願いを聞き入れてくださって、薔薇が楽しめる侯爵邸の東屋にお茶の準備を整えてくださいました。

そして、出入りの商人を呼んだから楽しみにしていてくれと言っていたわけで……そうなるとプリメラさまも私も、心当たりのある商人といえばそう! ジェンダ商会の会頭さんですよね!!

(プリメラさま、会いたかったんだろうなあ)

なんと言っても公には認められていなくとも、実の祖父にあたる方ですものね。

以前にお会いした時ほんの少しだけ言葉を交わし、その後はディーン・デインさまへの贈り物を届けてもらって、……後は私への誕生日プレゼントを用意してくださった時に頼られたと耳にしていますから、都合三回ですか。

あまりにも少なく、祖父と孫という触れ合いなどできない中でもそのわずかな時間がプリメラさまにとってどれだけ大切なものなのか、私にはわかりませんが……それでも、きっと尊いものなのだということくらいわかります。

(きっと、会頭さんも同じように思ってくださっているだろうし)

そう、プリメラさまを見る眼差しがどこまでも優しいのがその証拠。

だからきっと今回も、侯爵さまが招いてくれたのだろうと思っております。

「あっ、ルイスおじいさま!!」

「やあやあ、レディたちをまたしても待たせてしまったね。申し訳ない」

「ううん、いいの。プリメラの我儘を聞き届けてくださって、ありがとう」

「このくらいのことでしたらいつなりと」

ふわりと笑った侯爵さまが、私の方にも視線を向けてにこりと笑いました。

ロマンスグレーの笑顔は尊い……!! ただ、私の胸中はまだ少しだけ複雑なので何とも言えない気分になってしまいましたが、なんとか笑顔を返せたような気がします。

(侯爵さまは悪くないし、養女になろうがなるまいが態度を変えるような方ではないとわかっているけれど……いや、そういうことじゃないんだよなあ……)

まあ、その辺りに関してはアルダールとの話し合いですよね。

実家から何かを言ってきていないということは、おそらくまだあちらに話はいっていないのでしょう。

冷静に考えると普通は養子縁組なんて家と家での話し合い。

色んな意味で今回の場合は家ではなく個人っていうか、まあなんかもう色々複雑すぎてアレなんですけど。

おかげでストレスからかちょっと朝方は化粧がね!!

BBクリームとかCCクリームってそういう時は本当に偉大でした……誰か生み出してくれないかなって思う今日この頃です。

(ミュリエッタさんがチート能力持ちなんだからそういう開発してくれないかなあ……)

いや彼女は素で美少女だからそういうのって必要ないのか。

神さまって不公平!!

そもそもミュリエッタさんが原因といえば原因でした。世の中難しいです。

「お待たせしたお詫びといってはなんですが、商人を招きましたからお好きなものを選んでください。ユリア嬢もね」

「ありがとう、ルイスおじいさま」

「……ありがとうございます、侯爵さま」

にっこりと笑い合うプリメラさまと侯爵さまはとてもとても眼福ですが、好きなものを買っていいよとかなんでしょうあんまり縁がないセリフが私にまで飛んでくるとかどうしていいかわからない……!?

実家にいる時でも父から好きなのを買っていいよとか一度も言われたことありませんからね! むしろあんまり高いのを選ばないでほしいな……? っていう空気がバッチリでしたね。

うんうん、わかってますとも。私は貴族令嬢ですが、庶民的感覚がバッチリありますからお父さまを困らせるようなことは一度もありませんでしたよ!

(いや、一度くらいは我儘言っておけばよかったのかな、子供らしくない子供だったに違いない)

家族関係を 慮(おもんぱか) ったからこそだったんですが、子供らしい癇癪とか我儘も言えばよかったんじゃないかなあと最近は思うのです。

いやあの頃は前世の記憶の方が勝っていてですね、子供らしく振舞うのが若干恥ずかしかったっていうか……今思えば変な意地があったような気がします。

じゃあ前世ではどうだったか? 聞くんじゃない。

そんなリア充してたんだったなら暖房消した部屋でゲームに興じているわけがないじゃないか……あっ、なんかすごく悲しくなってきた。

「それでは商人を呼んでもよろしいですかな? ああ、ああ、先にお茶を用意いたしましょうな」

控えていた家人の方々が侯爵さまの言葉を皮切りにテキパキと用意していく姿に、私は感心しつつそれを手伝うメイナとスカーレットの姿もしっかりチェックしました。

さすがは私の後輩たちです、熟練の侯爵家侍女たちに勝るとも劣らない動き。

立派になりましたね……!!

「以前にもご紹介させていただきましたが、此度もジェンダ商会の会頭を呼んでおりましてな」

「ええ、ルイスおじいさまにご紹介いただいた後、わたしも一度お買い物をお願いしたのよ」

「さようでしたか」

「とても助かったわ!」

「それはよろしゅうございました」

にっこり笑った侯爵さまは、嬉しそうでした。

なんだろう、ここ、天使しかいないのかな?

「ユリア嬢には私から色々贈り物をさせてもらったがどうだろうか、今回はブローチなど贈らせてもらえるかな?」

「え? いえ、今でも良くしていただいておりますのにこれ以上は……!!」

「きみは本当に遠慮深いなあ」

遠慮する私に対して苦笑する侯爵さまの後ろで、やってきたジェンダ商会の会頭さんが呆れたように笑っているのを私は見過ごしませんでしたよ!

「いいじゃないか、少しくらい。恋人と出かける時にでもつけてくれたら私としては嬉しいんだけどねえ。親戚からもらった贈り物くらいの気持ちで気軽に受け取ってくれて良いんだよ?」

「ユリアはおくゆかしいの。ですからおじいさま、あまりいっぺんに贈ってはユリアも困ってしまうわ」

「プリメラさま……!!」

鶴の一声ならぬプリメラさまの一声!

思わず拝みそうになった私に、プリメラさまは輝かんばかりの笑顔を向けてくれました。

「だから、少しずつ贈ってくださいませ。おじいさま!」

「そうかい? じゃあそうしよう」

あーっ、可愛い! 浄化される!

でもちょっとずつでもだめです!!

ジェンダ商会の会頭さんが、緩く首を振ってましたけど私はあきらめませんからね!