軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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今夜はアルダールと城内の食堂で夕食を一緒にと約束しているので、ナシャンダ侯爵さまからのプレゼントについてはその時に言うとして……。

ミュリエッタさんの動向を調べたいと思います!

(基本的に関わる必要はないんだけどね……)

というか、個人的には友好的にお付き合いができないならこのままフェードアウトでも……というのが正直なところです。

でも残念ながら、彼女の行動を耳にしたプリメラさまが、私のために怒って権力を使おうとしてしまった……という件がありますからね。

私のために! 私のために怒ってくれた!!

その事実は何度噛みしめても喜びでしかないんですが、でも私が望むプリメラさまのご成長としてはちょーっといただけないものです。

そしてプリメラさまをご不快にさせたいわけでもないので、今後はそういうのはノーセンキューってなものですよ。

(じゃあどうするかって言ったらまず彼女の行動を知って対策を立てるくらいしか思いつかなかったんですよね……)

人の噂っていうのはどうしても止められるものでもありませんし、王城だけでなくプリメラさまが公務として参加なさるお茶会で、『英雄』のご息女のこととなればご令嬢方の話題にも出ることでしょう。

そういう状況で、私だって事前に情報を知っていればシャットアウト……とはできませんが、その後のケアを考えることはできますからね!

(まあ一番いいのは、色んな意味で彼女が落ち着いてくれることだけどね!)

エーレンさんのところで会った時の態度からでは、アルダールのことを諦めるどころか私が邪魔ものだくらいの勢いでしたしね。

スカーレットから聞いた治癒魔法のことだって……なにか狙いがあってやったのか、それとも怪我人を前に善意でやったのか。

(……善意だけなら、ハンスさんの治療がされてたと思うからなあ)

急激に善人になった?

それとも聖女として持ち上げられて、国王陛下からさらに認められて運命の人はアルダールだからってそういう風に持っていきたい……とか?

物語的な盛り上がりで考えてみましたが、ちょっと……いやかなり無理があるな。

流石にそこまで彼女も考えが甘いとは思えません。

なんせ今の所、色々と貴族社会の波に揉まれている状態ですものね。

(いや、私がちょっと穿った物の見方をしすぎ、という可能性だってありますからね)

可能性はいくつだってあるのです。

重傷者が出た……とは聞いていませんが、現場を知らないので軽くは言えないでしょう。

その時にそんな人を前に、咄嗟に使ったとか。

或いは彼女の能力を知る人がいて、乞われたとか。

もしくは怪我人が彼女の顔見知りだった、とか。

「城下でウィナー男爵令嬢が治癒魔法を使ったという噂が今広まっているようですが、セバスチャンさんは何かご存知ですか?」

というわけで、セバスチャンさんが来た時についでと言わんばかりに聞いてみるとセバスチャンさんはゆっくりと私を見て、薄く笑いました。

お見通しですぞってなんか言われたような気がしますが、私もにっこりと笑みを返します。

まあセバスチャンさんもプリメラさまのことが心配ですもんね! わかっておりますとも。

「事故そのものは大きなものではなかったようですな、ただその際に押し合いになった民衆が怪我をしたそうで」

「……まあ」

思わず声を出しましたが、街中でしたからね……残念ながら人通りの多い場所ではそういったパニックから怪我人が出るというのは往々にしてあることです。

しかしそんな中にいたのであれば、やはりそこは善意ですかね。

そう納得しかけた私に、セバスチャンさんは目を細めました。

「その場に、タルボット商会の方々がいらしていたそうですよ」

「タルボット商会……」

その名前に私も覚えがあります。ええ、勿論忘れてなどおりません。

お父さまが借金を負って私の侍女生活を脅かしたあの事件、そこに関わった商会。

そして、メッタボンの実家ですね!

まあメッタボンは実家とは縁を切ったと言っていたので無関係と考えていますが。

「彼女との関係が?」

「さて、そこまでは。ただその後、治癒魔法を使った英雄のご息女……ということで感謝と尊敬、崇拝の声が多く上がったため、ウィナー家では……というよりも公爵家の方で対応に追われているようですな」

「……でしょうね」

治癒を求めて声を発するのではなく、お礼や敬意を伝えるために……というだけであれば法には触れませんからね。

そこでもしよかったら……と お願い(・・・) する分には個人での会話の範疇、というグレーゾーンも良いところでしょう。

ただそんなことが横行しては国としても見過ごせませんし、宰相閣下のお立場からすれば監視の目を強めるために人員を割かねばならなくなるはず。

(でもそんなことになったら、余計窮屈な生活になるから嫌じゃないのかしら?)

私だったらそうなるのがわかっているんだから、やっぱり治癒魔法は本来のイベント時期まで黙っておくけどなあ。

最初から使うなら使うで、法に則った使い方をすれば良いのだし。

あんなイレギュラーで大々的に……ってするから騒ぎになるのだし。

「まあ、公爵家のおかげで民衆はだいぶ落ち着きを取り戻したようですが、大地主や大商人と呼ばれる民間の者たちや貴族たちの出入りが増えたのは事実ですな」

「……そうですか」

「学園の寮に入るとなれば、彼女との接触も減ってしまうことから今のうちにパイプを作っておきたいと願う者が多いのでしょうな」

ウィナー家の寄り親になりたいと願い出る貴族も出るでしょうか?

でもそうなれば、治癒師を守る法律の目をかいくぐった何かを仕出かす者が現れるかも……という懸念が生じると。

(それがいやなら、国王陛下の信ある家柄の者にウィナー家を預けるしかない)

結構厄介な状況ですね!

タルボット商会のことも気になりますが、こんなにぐっちゃぐっちゃに絡まった関係性までも彼女は見越して行動しているんでしょうか!?

いや……そこまで考えてはいない気もする。

「まあ……とりあえずこちらで問題視することはなさそうですね」

「そうですな」

「城内でも噂になっていると耳にしたので気になっただけです。ありがとうございました」

「いいえ、気にするのは大事ですからな」

知らないよりは知っていた方がいい。

それをどう扱うかはともかくとして。

……そういえばこれを教えてくれたのはセバスチャンさんでしたね。

「まあ、こちらでも気にかけておきますのでな。何かありましたらお知らせしましょう」

「セバスチャンさん……」

「王女殿下の御心安らかにお過ごしいただくのは、我々の職務ですからな」

「そうですね」

「さ、そろそろ私は戻ってあの二人と交代してまいりますが、何かありますかな?」

「いいえ、特には何も」

「それではユリアさんもあまり根を詰めないよう。もうじき実家に帰省だからと仕事を張り切らなくても我々がいるのですからな」

書類を先回りして片付けている私に対して、セバスチャンさんが心配してくれる。

ああ、もうなんてありがたいことだろう。

でもね、やっぱり責任者ですから。

できるところはやっておかないとね!

「大丈夫ですよ、みんなしっかりしているので頼りにしていますから」

「なら良いのですがねえ」

ふう、とため息を吐くセバスチャンさん。

その顔はそんな風に思ってませんよね。

まったく困った子だみたいな顔ですよね。

「まあよろしいでしょう。今夜はおでかけでしたな?」

「……といっても城内ですが」

「仲良きことは良いことですなあ。青春ですな、青春」

「……私、今日の予定告げてませんよね?」

「はっはっはっ」

笑って出ていくセバスチャンさん。

いやもう、突っ込まない。突っ込まないよ。

何で知ってるのとか色々言いたいことはあるけど、なんでか知られてるんだよね。

……解せぬ。