軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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未来予知の能力。

扱いきれないにしても、それはどう転んでも便利でかつ危険な能力。

「ミュリエッタさん」

「それで、あたしが見た未来なんですけど」

「ミュリエッタさん!!」

私は淑女としては注意を受けてしまいそうなくらい強く、彼女の名を呼んでそれ以上軽率にしゃべらないよう遮りました。

私の剣幕に驚いたのでしょう、ミュリエッタさんが目を丸くして私を見ていましたがそのおしゃべりな口を閉ざしました。

それに安堵している場合でもありません。

「エーレンさん」

「は、はい! 直ちに!!」

私の呼びかけに何を求められているのか理解したのでしょう、顔色は悪いですがエーレンさんは周囲で誰かが聞き耳を立てていないかを確認した後、家中のドアや窓の施錠をしっかりとしてから戻ってきました。

うん、なかなか良い動きです。

結婚退職というのが惜しまれる有能さ……ってまあエーレンさんもミュリエッタさんの“未来予知”によってちょっとした醜聞を園遊会で起こしたから焦りもあるでしょうね。

「……このようなことを私から申し上げるのは大変遺憾ですが、ミュリエッタさん」

「は、はい!」

「貴女は、あまりにも無知です」

「えっ」

イライラした。

いや驚いたけど、この子なにもわかってない!

わかってないだけならまだいいんだよね、うん、それは反省を促せばそれで済むんだから。

でもね、もう園遊会の時にエーレンさんがごたごたに遭ったってだけでも注目されてるんだって気づいた方がいい。

そもそも巨大モンスターを英雄と一緒に倒した娘ってだけでも注目を浴びているのよ?

(生誕祭の時には王弟殿下、そしてついこの間父親経由で王太子殿下からも……そしてそれとなくニコラスさんだって何か釘を刺しているに違いないのに)

それらを加味してもなんとかなるなんて悠長な考えでは、ミュリエッタさんに関わる人がどれだけ迷惑を被ることか!

とはいえ、私の言葉に目をこれでもかと大きく見開いた少女の姿を見てちょっとかっとなってしまったなと反省しました。

悪いとは思いませんが、ちょっと大人げなかったな、と。

「良いですかミュリエッタさん。その能力がどれほどまでに人の目を引くものか貴女はわかりますか?」

「わかってます! お父さんにもすごく念押しされて、何かが見えても本当に必要な時にしかそれを口にしちゃダメだって」

「……ウィナー男爵もご存知なのですね」

となると、王太子殿下は彼女たち父娘をどう扱うんだか。

ここは私も言葉の選び方を間違えると厄介だなあとちょっと思ってしまいましたよ。

エーレンさんの方はもうすでに園遊会の時に色々ありましたからね、何か言おうとして手が宙に浮いたままおろおろしています。まあそうなるのもしょうがないか……。

「不用意にそれを口にしてはいけません。勿論書面に残すなどいけません。私とエーレンさんを信頼し、それを言葉にしようとしてくれたことはありがたいと思いますが私も彼女も王家に忠誠を誓う者なのですよ?」

暗にそんな便利能力あったら上の人に伝えてしまうぞって言ってるんだけどね!

いえ、ミュリエッタさんだってニコラスさんとかに何か言われているだろうからいい加減察してくれと思わなくもないんだけどね?

色々世の中が綺麗ごとだけで回ってない、厄介な人たちとはもう何人も会っているんだから気を付けてくれないと……こっちまで巻き込まないでっていうのが正直な気持ちなんですけどね。

とはいえ、巻き込まないでと思いつつ、彼女は私を名指しで伝えたいという内容には興味がないとは言わない。口にはしないけど。

だってミュリエッタさんの“未来予知”は私の予想ではゲーム知識。

即ち、ゲームクリアまでの期間……そしてエンディングで語られるごく僅かなその先。

もしかしたら隠しキャラ関係のことかもしれませんが、でも現実はまったく違うわけだから時系列的に登場人物が 似ている(・・・・) だけに終わっているこの状況で、彼女は何を言い出すんだろう?

(まあ、あんまり良い話じゃなさそう)

大体予想するならアルダール関連、ってとこだよね。

だとしたらプリメラさまとディーン・デインさまに関して? あのお二人の状況はラブラブですけど。手紙の返事が来るたびに花のような笑顔を見せて私に教えてくれるプリメラさまったらもうね……って話が逸れた。

「……わかってます、でもあたし、今回は絶対に伝えなきゃって思ったんです」

「ミュリエッタ、いい加減に……!」

「エーレンだってあたしのチカラで怖いことは回避できたじゃない! あたしはユリアさまにもそうやって回避して、幸せになってほしいだけよ!」

「……そっ、それは……」

ミュリエッタさんの言葉にエーレンさんも覚えがあるから強く出られないようで、ぐっと抗議の言葉を呑み込んでしまいました。

ああ、もうこれは聞いてあげないとあれだ、王城まで追っかけてきそうだ……そうなるとそっちの方が厄介なのか、それとも王城でやらかしてくれた方がニコラスさんに押し付けやすいのか?

だめだな、王城でやらかされたら私の責任度合いが増える。

ニコラスさんだって王太子殿下に言われて行動をしているとはいえ、表立って大きくは動かないはずだ、王太子殿下に僅かにでも迷惑がかかるのは彼が望むところではないと思うしそうなるともうここで聞いて判断するのが一番かな。

聞きたいかどうかで問われれば聞きたくないけど。

「ユリアさま、あたし夢で見たの。アルダールさまとユリアさまの歩いている横を、別の人が来てアルダールさまは、悲しそうな顔をして離れるわ。あたし、それを助けたいんです」

「……それがなんだっていうんです?」

悲しそうな顔をしたアルダールがいて、その話を信じるならば彼は何かしらの悲しいことがあって、私から離れる……と言いたいんですよね?

私が悲しみで落ち込んでその場から動けないような可愛らしいタイプの女なら、それもしょうがないかなって思いますけどアルダールが何も言わずに私から離れようっていうなら私はどうしてなのかをきっと聞いてしまいますよ、私が悪いんなら直したいもの。

いえ、嫌われたくはないからきっと躊躇しまくってから行動するんだろうなあとは自分でも思いますけど。その辺はきっと誰もがそうだと信じてます!!

「いいえユリアさまは、それを受け入れます。だって、ユリアさまは貴族だから」

「えっ?」

「アルダールさまを苦しめるのは、家族です。ユリアさまは子爵家の人間だし、王女さまの幸せを願っておられるんでしょう? だから、動けなくって悲しくなります」

「……」

「でも、あたしは違います」

綺麗な緑色の目が潤みつつ煌めいて、私をまっすぐに見つめる。ああ、こんな風に見つめられて真剣に訴えられたら『そうなのかな?』って思う人が続出するのも頷けますね。

それは、私のことも案じている……そう思わせるだけの魅力をミュリエッタさんはお持ちです。それは認めましょう。

だけど、残念でしたね。

私自身はそういう魅力とやらは残念ながら持ち合わせておりませんが!!

そういった手合いの訴えをする女性とか、男性とか、商人とか、文官とか貴族とか仕事をさぼってお菓子をねだる某ヒゲ殿下とか色々見てきてるんですよ。

簡単に呑み込まれたりしませんよ、それに……私は決めたんです。

(アルダールとのことは、周りに何かを言われるよりも本人とちゃんと話そうって)

誰かに何かを言われて私のことを好いたわけじゃない。そう彼が言ってくれたんです。

なら私がそれに見合う女として応えなければ、かっこ悪いでしょう?

私が動揺を見せないことに彼女は苛立ったのでしょう、それまで案じていますというような心配そうにする表情が少しずつ、歪んでいきました。

「あたしは! あの人を自由にしてあげられます。クレドリタス夫人の呪縛から、あたしだけが助けてあげられるんです!!」

「……なんですって?」

なんか、とんでもない名前がここに出てきたぞ?

私が思わず反応すると、ミュリエッタさんは何かを勘違いしたのか嬉しそうにほほ笑んだのでした。