軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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翌日……私はベッドの中で案の定ごろごろごろごろとのたうち回りましたとも。

お目覚めすっきりおはようございます! 記憶はばっちりでした!!

ああああ、お酒ってこわいぃぃぃ……。

(アルダールも苦笑しながらちゃんと最後は紳士らしく帰っていったものね)

あれっていわゆる据え膳状態だったんじゃないかと今更思うわけですよ。

ええ、本当に今更で大変申し訳ございません。

手を出されなかったとかそんな落ち込みとかもないです。むしろなんだかアルダールに色々気を遣わせた気がしてなりません、申し訳ございませんでしたと今なら土下座も辞さない覚悟!

……いやまあそんな真似したらあちらがびっくりしてしまうので勿論いたしませんが。

(午前半休取っておいて良かった……)

いやこんな転げまわるためにとったわけではないんですけどね。

正直『狐狩り』で私自身も馬に乗って参加しろって言われたら筋肉痛を覚悟かなって思ったから先に策を講じていたわけです。

(……だけど、まあ)

恥ずかしいは恥ずかしいですが、アルダールが家のことなど関係なしで私個人を好いていると言葉にしてくださったので、それにほっとしたことを考えれば……恥ずかしさなど乗り越えられる! いややっぱだめだ恥ずかしい!!

まあ恋愛と結婚は直結して結びつくものではありません。

私だって今すぐにどうこうってイメージはなくてですね、周囲が結婚するんでしょ? みたいに見るからそうなのかなって思っちゃうこともありますけど実際はほら、単なる恋人同士です。

将来の話などしたこともないですし、だからといってそれに対して不満とか不安があるわけじゃなくて……周囲の熱の方が怖いかなってくらいです。

多分そんな風に周りの雰囲気に踊らされている私がいるから、彼だってそういうものを匂わせないで『今』のお付き合いを大事にしようってしてくれているんだと前向きにとらえることにしました!!

前向き、大事。

「よし! 切り替えよう!!」

思い出してごろごろするのはもう止めです。

いえまだ朝なのでのたうちまわっていても大丈夫ですが、もう少ししたらメイナとかスカーレットとかが職務上わからないことが……とか言って入ってくるかもしれないじゃないですか。

そんな時に私が! この筆頭侍女たる者が!!

恥ずかしさからのたうち回る姿を晒すなど、あってはならないのです。

そんなの見られたら私、今度こそ本当に恥ずか死ぬ。

ベッドから出て着替えて顔を洗って、昨晩のアルコールがまだ少し残っている気はしますが気分が悪いとかはなくて、ただ食欲がないかな。

朝ご飯はもう少し後にするとして……。

(そういえば、昨日は戻ってきてすぐアルダールとお酒を飲み始めて、……あんまり食べてはいなかったんだけどなあ)

メッタボンの厳選おつまみセットでワインを楽しく飲んでいちゃついただけだったわけですが……うっ頭が。

いえ、頭は痛くない。いややっぱり痛い。

思い出す醜態にお酒はほどほどにしようと思いました。

「あら」

まあそれはそれとして、書類や手紙がなにか来ていないか、緊急性のものはないか。

それを確認するために自室から執務室側へ行くと、何点かが机の上に置かれていました。

とはいっても緊急性のあるものではなくて、前世風に言うとダイレクトメールが何通か届いていたっていうね。

(お、ミッチェラン製菓店で新作? あ、こっちはリジル商会からドレスの新作発表会か……)

なんて言ってもここ最近は私も割とお得意さまの仲間入りを果たしたような気がしないでもない財布の紐の緩さですからね!

ミッチェラン製菓店はともかくとして、社交界デビューして以来ドレスとかアクセサリーとかを少しずつ買って増やしている状況でやはりリジル商会みたいに大きなお店は強いよね……。

ジェンダ商会からも届いてましたよ! 新作グミキャンディができたらしいです。直筆で『食べにおいでよ』って書かれていてああもう行く! 楽しみ!! ってなりますよね。

「……」

そしてそんな中に、エーレンさんからの手紙がありました。

(とうとう出立の日が決まったのかしら?)

もうそろそろ冬から春へと季節も移り変わって、雪の気配は王都では感じなくなりました。

といってもまだまだ朝方は寒いですし、地方では雪害とかあるそうなので完全に春が来たってわけじゃないんですが。

(なになに……)

手紙は、少し小さくてどこかたどたどしい文字が記されています。

そうそう、エーレンさんってこんな字を書くのよねとちょっと懐かしさすら覚えます。

まあもともとそんな彼女の字をよく知っているわけじゃないんですが。

『ユリア・フォン・ファンディッドさま

お元気でお過ごしでしょうか。

私事(わたくしごと) ではありますが、とうとう外宮を辞する日が決まりました。出立の日はまた天候などを確認の上で改めて決まるかと思いますが、城を去るのだと思うと色々と寂しくもあり、今までの感謝や人との出会いが改めて私を育て、守ってくれたのだと感じられるようになりました。

ユリアさまにも多くの迷惑をかけ、またご指導いただいたこと、忘れずに新たな地へと旅立とうと思っております。

ですが、今回このようにお手紙を差し上げたのには理由があります。

もうお察しのこととは思いますが、ミュリエッタのことになります。

彼女は私が辺境に去る前に是非お茶会をして、話を聞かせてほしいと手紙をくれたのです。それだけでしたら旧交を温めようと、また旅立つ私への激励ともとれましたが、もらった文の中にはユリアさまのことを知りたいといった内容が含まれており、どのようにすべきか悩んでおります。

当人であられるユリアさまにご相談の手紙を出すことは憚られましたが、かといって外宮筆頭さまにご相談というのもなにか違う気がしますし、エディはあのような気質の男なのであまりあてにならず……。

私としては彼女と会って話をするにも特別なことは何も話せるものではございませんが、探りを入れるような彼女にユリアさまがご迷惑をかけられていないか心配になったのです。

ミュリエッタに対しては様々な評判があり、本人もきっと不安なのだとは思いますが……私が王都にいる間になにかできることがあるようでしたら、どうぞ遠慮なくお申し付けくださいますよう筆をとらせていただいた次第です。

不安を取り除いてくださった貴女さまへ エーレン』

手紙を読んで、私は丁寧に折りたたんで封筒の中に戻しました。

ああ、うん。

……うん。

「……」

見なかったことにしてはだめですかね。

いえ、だめですね。

エーレンさんはエーレンさんで真摯にミュリエッタさんの暴走を止めようと思っていることだけは伝わりました。いやもう遅いんだけど。言えないけど遅いんだ。

多分エーレンさんが先に知ったとしても止められる暴走じゃなかったんだけど。

「どうしたものですかねコレ……」

はぁ、と溜息が思いっきり出てしまいましたが、それは仕方のないことでしょう。

やはり行くべきはニコラスさんの所ですかね?

ミュリエッタさんのことで何かあったら報せろ、と圧がありますものね。

王太子殿下も関わって彼女が暴走しないようにとしているのなら、今回のことももうご存知なのかもしれませんが……その上で私が何も報せないというのは私の身を危うくしかねない、ということにもなり得るのでは。

まあ報せるだけで何かしろと言われるとは思いませんが……。

思いませんが。

思わないよ?

……ないよね?