軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「……それで、どこに行くんです?」

「前にとっておきのワインを贈らせてもらうと約束しただろう、良い機会だからそれを取りに行こうかと思って」

「そうですか」

若干納得できないままに馬車に放り込まれるように出発となったことに不満がいっぱい、ユリア・フォン・ファンディッドです。

馬車に乗って流れる風景を眺めつつ、私がつっけんどんに問えばアルダールが苦笑したのを感じました。

……大人げない態度ですみません。

嫌なわけじゃないんですよ?

ただほら、よくわからないままに狐狩りは解散でじゃあ出かけておいでって言われたんですもの。

(いえ、王太子殿下が急務でお戻りなのは仕方のないことと理解できますよ)

そこは私もベテランの域に入っている侍女ですからね! 理解できます。

むしろあのお若さで大人も顔負けの仕事量をこなしておられる王太子殿下の勤勉さにはいつだって尊敬を覚えておりますとも。

ただほら、あれよあれよという間にプリメラさまとディーン・デインさまが出立なさって、私が何かを言う前にアルダールが乗ってきたバウム家の馬車に私を押し込んだセバスチャンさんが去り際にサムズアップとかするからいらっとしたとかしないとか、いえ、大丈夫です私は落ち着いております。

ちゃんとセバスチャンさんの行動は痛みも無理もないもので、私が上手に抗えないままにあれよあれよと馬車に乗せられたのがいけないんです。

(ただほら、悔しいったらないわぁ……!!)

全てはいい笑顔で去っていったセバスチャンさんがいけないんですよ!!

はぁ……まあ、あの人がついているならばプリメラさまたちは大丈夫です。そこは信頼しておりますから一切心配しておりません。

「ユリア?」

「……いえ。ごめんなさい、嫌な態度をとりました」

「いや、問題ないよ。セバスチャン殿も悪気があったわけではないと思うんだが……」

「そうでしょうか」

っていうかアルダールにもセバスチャンさんが原因だってバレるんですね!?

顔に出ているんでしょうか……って前後を見ていたら誰でもわかるか。

ああもう、なんだかただ狐狩りに来てプリメラさまたちを眺めて幸せに浸る予定だったのがだいぶ違います。疲れました!

……まあ、予定外にデートできるのは、良いんですけど。

これが不幸中の幸いってやつですね。不幸は特にないんだけども。

素直にこの『嬉しい』気持ちを受け入れて、気持ちを切り替えてデートを楽しむのがやはり大人の対応ですよね。

「……まあ、当初の予定とはだいぶ変わってしまったし、色々あったからね」

「そうですね」

苦笑するアルダールも、狐狩り側で何かあったのかもしれません。

もしかしたら急務で王太子殿下が嫌な顔をなさって使者が顔を青ざめたとか?

いやそういうのは想像できないから王弟殿下がなにかやらかしたとか。そっちはあり得る。

ウィナー男爵とミュリエッタさんも今頃は城下の自宅に到着している頃でしょうかね。今回のことでデビューまで予定が決まってしまったから、忙しくなることでしょう。

ミュリエッタさんといえばエーレンさんももうそろそろ出立の日が決まる頃合いかもしれません。

(タイミングが合うならば、お見送りくらいしようかな……?)

エーレンさんともなんだかんだありましたけどね!

それでもこれからの未来を頑張ろうとする人を応援したいなあと思うわけですよ。甘い考えだとまた自分でも思いますけれどね。

でもやらない善よりやる偽善なんて言葉が前世にもありましたし、私にできる範囲のことで祝福できることがあるならばやっぱりしておきたいなって思うんですよ。

彼女が辺境に行ったらもう会えないかもしれませんからね……それで後悔するくらいなら。外宮と王女宮という違いもありましたし、立場も違いましたけれど侍女仲間だったというのは事実ですもの。

「また考えごと?」

「えっ」

「たまには私のことだけ考えてくれる日があってもいいんだけれどなあ」

くすくす笑うアルダールのその言葉に、思わず顔が赤くなる。

からかわれているってわかってるんですけれども、やっぱりまだ慣れないっていうか正直そろそろ慣れろよ自分!? って思わずにはいられません。

いつになったら慣れるんですかね、もう!!

(相変わらず直視は厳しいしね!)

キスまでした仲といえど相手の顔面偏差値が高すぎるといまだに眩しさを覚えるってモンですよ……あれ、これ私だけか……?

周囲の顔面偏差値が高いからついついね。自意識過剰になるよりはずっと良いと思ってますけれど、卑屈にならないようにも気を付けませんと。

「……ちゃんと考えてますよ?」

私がそういえば、アルダールはおやっという顔をして私を見ました。

そんなにびっくりすることかな!?

「一緒にいる時は、ちゃんと考えてますよ。前にも言いませんでしたか?」

「一緒にいる時は、だろう?」

「……一日中なんて無理ですよ」

「わかってる。言ってみただけだよ」

どこまでが本気で、どこまでが冗談なのかと問い詰めてみたい気はしますが上手にかわされそうな気がします。

アルダールが新年祭からどんどんと距離感近いなって思えることも増えたし、それはまあ嬉しいからいいんですけどね。

時折、私から一歩詰めてみると引かれる……そんな感覚があるような気がするんです。気のせいだといいんですが、きっと気のせいじゃありません。

でもそれが嫌われたとかそういうものじゃないと思うので、私としても気にしないようにはしているんですけれど……。

「それはまあともかくとして。そういえばエーレンさんたちの出立の日がそろそろ決まるんじゃないかと思ったんです。お見送りできるようならしたいなと考えていたんです」

「ああ……雪の季節が終わったら異動だとそういえば言っていたな」

辺境の地は遠く、街道の整備も城下に比べれば荒いという話ですから雪の季節の移動はとても大変だと耳にします。

それゆえ春をもって彼女たちは移動していく……ってなんだか渡り鳥とかそんな感じみたいですね?

「まあ時間が合えば、ね」

「ええ。……やっぱりなにかこういう時、お別れの品を贈った方が良いのかしら?」

「上司でもないし同僚と言っても親しかったわけじゃない、あまり気を使いすぎたら向こうも申し訳なく思ってしまうんじゃないか?」

「そうよね……」

アルダールの言葉に頷いて、私はまた外を見ました。

ふと私たちの馬車も城下に向かっているのだと気が付いてアルダールの方を見ると、私の視線に気が付いたのでしょう。

「城下にあるバウム家の町屋敷に行くんだ。前回の約束の時に、取り寄せておいたんだけどなかなか渡すタイミングがなくてね」

「そうだったんですか?」

「どうせだったらそれを一緒に飲みたいと思って。バウム家の屋敷では変に思われるかもしれないから、ユリアの部屋に行こうか」

「じゃあ私、何かつまめるものでも用意しますね」

「うん」

一緒にお酒かあ! そうですね、バウム家の屋敷の一つに出入り……というのはちょっとまだ敷居が高いので、王城内の私の部屋で夜遅くにならないなら問題ないと思うんです。

いえ、私たちは恋人だってもう割と大勢に知られてしまっているので問題っていう問題はないんだろうけども。

(なに作ろうかな、それともメッタボンに用意してもらおうかな。ああその方がいいかもしれない、お客さんをほっぽってツマミを作りに行く女はモテないよね……!?)

いや、アルダールは『お客さん』じゃないけど。

れっきとした『彼氏』だけどね!

まだ冬だから外は寒いし、夜になれば凍えてしまいそうな日だってあります。

だけれど、こうして暖かい馬車の中から見る景色は。

もうすぐ、春が来るんだな、って思わせるものでした。

単純って言うことなかれ!

あとついでにバウム家の町屋敷に行けるんだって思ったらちょっと浮かれたとか内緒だからな!!