軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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宰相閣下に呼ばれてから数日後、実家から手紙が届きました。

セレッセ家とファンディッド家の婚姻、その両家顔合わせ会の日取りが決まったというものでした。

できれば準備に携わって欲しいというお父さまからのお手紙を何度か読み返して、ため息をひとつ。

ビアンカさまのお茶会の、ちょうど一か月後。

……まさかと思うけどそれらも含めて計算の上とか言わないよね? ビアンカさま……!?

(いや、それは流石に考えすぎか……)

ため息をひとつ吐き出して、私はクローゼットの中からドレスを取り出しました。

そう、アルダールが買ってくれた、深緑色をしたドレス。

ビアンカさまのお茶会に着ていく服として買っていただいたわけですが……よくよく考えたら顔合わせ会用のドレスもそろそろ考えねばなりません。

茶会にはこのドレスを着て、アルダールにエスコートをしてもらう。

……。

ちょっと顔が引きつりそうですよ……!?

ほら、いえね?

今もまだ前世の記憶から出てきちゃった『服を贈るのは脱がせたいから☆』なんていう軽い感じの恥ずかしいことを未だに忘れることができなくてですね!?

そもそもアルダールがそれで目を合わせられない私に……いや待て落ち着け私ィィ!

どうしよう、この精神状態で贈ってもらったドレスを着てエスコートされるってかなりの高難易度になってしまった。主に自分のせいで。

しかも考えれば考えるほどですが、アクセサリーをしないわけにはいきませんよね?

髪だってそれなりに結いますよ。大人の女性たるもの、ある程度髪型は大事です。

……と、なればですね?

ネックレスはアルダールにいただいたものを使うべきですよね?

髪飾りは別のものを使用するのでも構わないと思うんですが、何かしら彼から贈られたものを身に着けるべきだと思うんですよね。ドレスで十分じゃないのかとも思いますが……。

でもそこで「どうして着けてくれないのか」とか問われたらなんて答えるよって話で、そもそも所持アクセサリーを未だに増やしていない自分が悪い。

(……買うか……)

明日にでもリジル商会に行こう。そうしよう……。

そこで茶会用のアクセサリーと、顔合わせ会用のちょっとお洒落めだけど落ち着いた普段でも使えそうなドレスを購入しよう。

オルタンス嬢とはセレッセ領で少しだけ挨拶もしてるからね!

彼女やセレッセ伯爵ご夫妻がお見えになるってことを考えてドレスを選ぶと思えばそっちはそんなに難しい話じゃない。

むしろ問題はアルダールから貰ったネックレスに釣り合うイヤリングと髪飾り……?

ちょっと今手持ちが少ないんですけども。

いやいや、髪の毛はもう編み込みで! それでいこう!!

あと少し、化粧品を買い足して……。

執務室でそんなことを考えてばかりというのもどうかなと思いますが、それもこれも平和な時間というやつですよ。

宰相閣下からミュリエッタさん関連で何かあったらニコラスさんに、と言われたことでちょっぴり警戒もしていましたが、特に何もありません。

プリメラさまは相変わらず可愛らしく優しくて、最近ではディーン・デインさまが学園に通われる前に普段からお使いいただけるような品を贈ったらだめだろうかと悩んでおいででした。

あげちゃえばいいのに。プレゼント贈ったら迷惑かしらって、絶対あちらは喜びますからね!!

思わず力説しそうになりましたが、そうやって悩むのもきっと醍醐味なのでしょう。

楽しそうに文具が良いだろうか、それとも外套のようなものの方が良いのだろうかと考えを巡らせるプリメラさま、本当に……本っっ当にお可愛くてですね!!

勿論あまり大掛かりなものですとか、贈られたバウム家の方が恐縮しちゃいそうな事態になる前には止めたいと思いますが恋する女の子の行動! 応援したいと思いませんか……!!

おっといけない、ついつい力が入ってしまいました。

「はい、どうぞ」

ノックの音に、顔を上げる。

すると入ってきたのはアルダールで、私は思わず背筋を正しました。

いえ、前回のを思い出して勝手に恥ずかしくなった身体が緊張でぴんっとしただけなんですけども。

当然、まあ、顔にはそのようなことおくびも出しておりませんが。

……出てませんよね?

「アルダール、どうかなさったんですか?」

「いや、うん。……今いいかな?」

「はい、どうぞ」

困ったように笑うアルダールの姿に、私はお茶を淹れるために立ち上がりました。

どうやら職務中に少しだけといった雰囲気ですし、短い休憩時間に来てくれたという所でしょうか?

わざわざそんな風にするということは何か大事な用事なのだろうと思うので、お茶菓子はなしでいいかな。

「お茶だけでも召し上がりますか?」

「……そうだね、一杯だけ」

アルダールがソファに座り、私が紅茶を出すと彼は胸元から小さな箱を取り出しました。

そしてそれを私に差し出して、ものすごく申し訳なさそうな顔をしたのです。

「アルダール?」

「いや、うん。私の考えが足りなかったというか、実は義母上に叱られてね」

「え?」

「新年祭の時にネックレスを贈ったろう?」

「あ……はい」

実は今もメイド服の下に着けてます、とは言いませんけれども。

大事にしてます。

「それでね、店側から揃いのイヤリングを用意しなかったが良かったのかと確認の書状が届いてね……私宛ではなく、バウム家宛として送られてきたものだから義母上がそれを読んで、揃いにしないなんてありえない、と言い出して」

「……まあ」

私としてはあのネックレスだけでものっすごく満足ですけども!?

なんだ揃いのイヤリングって。

いやまあ前世でもちょっと立派な真珠のネックレスとかダイヤのネックレスは確かにセットでイヤリングとかピアスがついてってテレビショッピングとかで言ってたな……やはりそういうのって揃いで購入するのがセレブリティってやつなんでしょうか。

……いやぁ、幼い頃から王城でメイドしてるとですね、あまり装飾品を身に着けることもなくてですね……貴族令嬢として考えたらそりゃそうかって今納得もしているわけですが、自分の身になるとこう、考えが至らなくて。

だから正直アルダールがバウム夫人に叱られたと言われても私としては自分も同罪っていうか。

っていうことはこの小箱、イヤリングが入ってるんですねわかりますよ流石に!

「私も全然気が付かなくて、すまない」

「いえ! 私も、あの……普段イヤリングなどを身に着けないものですから失念しておりました」

「遅れたけれど、それも使ってくれたら嬉しいよ。そういえば義母上から、観劇の御礼状と花が嬉しかったと伝言を預かっているんだった」

「お気に召したなら、なによりです」

良かった良かった、まあ無難なところを選んだからね!

バウム夫人にもお世話になったからにはちゃんとお礼をするのは社会人として当然のこと。

あの観劇の時間は最高だったし、新年祭の時にはアルダールにアドバイスもしてくれたって思ったらお礼だって言いたいじゃないですか。

それに、プリメラさまの侍女として、恥ずかしくない振る舞いをしないとね。

勿論、アルダールの恋人がお礼も言えない女だと思われたくないから、という気持ちもありますけど……ね……! 言わせんなよ恥ずかしい!!