軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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重々しい雰囲気のギルド職員に、ミュリエッタさんが眉を寄せました。

一体当事者とはなんのことか、そう言わんばかりの態度ですがさすがにそれを口に出すこともなく、大人しくウィナー男爵の横に座って姿勢を正しています。

そういえば冒険者であったウィナー男爵は、あちらの酔っ払い冒険者さんたちとお知り合いだったご様子ですがギルド職員さんとはどうなんでしょう。

英雄と呼ばれる方だけあって……というかミュリエッタさんの尽力あってめきめきと冒険者としての格を上げていったとは耳にしていますが、それがイコール人脈に繋がっているとは限りませんしね。

「今回そちらの旅人お二人に、冒険者ギルドに籍を置く人間が酔っ払った挙句難癖をつけ絡んだと報告を受けている。それに関しては目撃情報多数ということで本人に確認を取る必要はないとこちらでも判断した。……酒臭くもあるしな」

じとりとした眼差しで縛られている冒険者たちを睨むギルド職員さんは、まあぶっちゃけ「面倒ごと起こしてくれてよくも」って目が語ってますよね。ええ、なんとなくわかります。

さすがにそこは酔っ払い冒険者たちも自覚はあるし後ろめたくもあるのか、その視線を受けて睨み返すことはせず不満そうではありましたが項垂れた様子です。

ミュリエッタさんもなんとなく状況が飲み込めたのでしょう、私たちと酔っ払い冒険者たちを見比べて、口をきゅっと引き結んでいる姿が見えました。

その隣でウィナー男爵がすごい汗ですけど。

キース・レッスさまはもう、目が笑ってませんね。顔は笑顔ですけど。

「さて、難癖というのがなんであるのかそれを聞こう、その上で各自に意見を求めたい」

「ちょっと待ってください! あたしたちはどうして呼ばれたんですか?」

「……ミュリエッタ、その……」

「えっ、お父さん心当たりあるの!?」

ミュリエッタさんが当然の疑問を、びしぃっと綺麗に手をあげて質問した瞬間にウィナー男爵が泣きそうな顔で娘に向かって何かを言おうとして、また俯いてしまいました。

その様子に彼女もこの件に関係しているのは自分ではなく父親なのだと思ったのでしょう。

それはもうびっくりした顔ですよ。うん、それでも可愛いとか本当、美人って得だなあ……。

(っていうかミュリエッタさん自身は関与していないっぽい……?)

あの驚きようでは本当に知らないと思っていいですよね。

いくらなんでもミュリエッタさんが超演技派女優とかじゃない限り。

色々わからないことの多い子ですけど、私から見ると宰相閣下とかみたいなタヌキタイプじゃないと思うんですが……おっと失言失言。声に出してないよね? オッケーセーフ。

(ってことは今回のことは偶然? それにしては素早く関係者を全員集めるとかどれだけ素早いのかしら)

いや、よく考えなくても今や話題の『冒険者上がりの英雄』ウィナー男爵となれば冒険者ギルドとしても期待の星っていうか、冒険者たちの憧れの的ですものね。

それが祭りで賑わう土地で起きたトラブルに関与しているとなれば……ただの巻き込まれならともかく、男爵のあの様子だと心当たりがあると言っているようなものです。ギルドだって急務扱いにするかな。

それにしてもウィナー男爵ですが、本当に腹芸のできない方なんでしょうね。

前にお会いした時もそう思いましたけど。

(よく言えば実直、だけどそれじゃあ腹黒い貴族とかに絡まれたらたまったものじゃないんでしょうね……)

ウィナー男爵とは直接言葉を交わしたことはありませんが、なんでしょう。

うちのお父さまを彷彿とさせるっていうか……いやうちのお父さまはあれでもね、生粋の貴族なんですけど。でも今あそこでしおしおになっちゃってる姿がこの間の我が家を思い出させるっていうかね?

「お父さん、どういうこと!?」

「い、いや、それは」

「どういうこともなにもお嬢が袖にされたってウィナーの旦那に聞いて俺らァ……!」

「えええ!?」

あっ、なんか察した。

冒険者仲間に会ったウィナー男爵、ついついお酒の席か何かで冒険者時代のような気安さでちょっと盛った感じにお話をした……ってところですかね?

どうだろう、私の推測あながち外れてないと思うんだけど! あのしどろもどろっぷり。

「ちょ、ちょっとお父さん!? どういうことよ!!」

「い、いやだからな? ほら、お祭りに来てつい懐かしい顔に会ったから、ほら、な?」

「な? じゃないよ! えっ、袖にされたってなに、どういう意味?」

「袖にされたというのはね、要するにフラれたってことだよ」

本気で意味が分からないらしいミュリエッタさんが解説を求めたのはギルド職員さんで、そして困った顔をしながらも真面目に答えてくれる職員さん。その答えを聞いて唖然としてから段々と怒りを顕わにしたミュリエッタさんがウィナー男爵に詰め寄ってなんと親子喧嘩が勃発っていうかなにこれなんの騒ぎで私ここにいる必要あったかな……?

ウィナー男爵も、冒険者気分に戻ってしまったっていうオチなんでしょうが……そこだけの話題で済めばこんな騒ぎにならなかったのにね……。

(しかし、ミュリエッタさんも相当だと思いましたがまさかウィナー男爵までもとは……)

いや、これが普通なのかもしれない?

だって一般人の生活をしていたら裕福だけど窮屈な生活になっちゃったんだものね。

憧れていた“貴族”の生活は思ったよりも自由度がなくて、って思ったところに昔馴染みと顔を合わせてつい張り切っちゃった、みたいな?

酒の席での失敗あるある、みたいな……?

ちょっとそのレベルの問題がアレすぎてアレなんだけど。

なにせキース・レッスさまが笑顔だけどあんまりにも無言っていうのが、不機嫌そうな気が……。

「ちょ、ちょっと失礼ねっ! あたしは別に まだ(・・) フラれてなんかないんだから!!」

まだってなんですかね、まだって!

思わずアルダールの方を私も見ちゃいましたけど、アルダールはしれーっとした表情で紅茶を飲み始めましたね……?

「だけどよう、ミュリエッタちゃんは貴族になったばっかりで苦労ばっかりって……!!」

「そうだぜ、そっちの兄ちゃんや姉ちゃんとかみたいなお貴族サマは冒険者上がりのウィナーの旦那たちを……!!」

「もういいだろう、そこまでだ」

私たちの方に視線を向けて怒鳴るように喋り出した冒険者たちを制したのは、ギルド職員の方でした。

こめかみに指をあてている姿はなんとも頭が痛そうですけど、この場を収めなければならない立場って辛いですよねー、他人事なので私としてはただげんなりするだけで済みますけども。

ウィナー男爵は顔を蒼くして時々ちらちらとキース・レッスさまへ視線を向けたりギルド職員さんに視線を向けたり、ミュリエッタさんの方を見たりと忙しい様子です。

冒険者たちを押さえている冒険者さん(ややこしいな)たちは素知らぬふり、ですね。

わぁ、なんだろうなあ。

すごくどうでもいいから帰っていい? って言いたくなるんだけどそうはいかないよね……?

「さて、そうなると我が領で起こった問題は、そう複雑ではないと思うのだがね」

全員が一旦口を閉ざしたところでキース・レッスさまがおもむろに口を開きました。

当然、この場において最も地位と権力を持つ人であるキース・レッスさまですから注目はそちらに集まります。

本来ならばギルドは国よりの民営ということで、特別へりくだる必要はないはずですが今回“冒険者ギルドに所属する”人間の不始末であるということから立場がやはり弱いようです。

「ウィナー男爵とそのご息女が旅行の帰りに立ち寄ったこの街で旧知の仲である彼らと出会い、再会を祝して宴席を設け話に花を咲かせた。酒の席であるがゆえにご息女は参加しなかった、ということで良いのかな?」

「……はい、あたしはその時宿屋の部屋に戻りました。父はみんなと一緒に、その宿屋が営む酒場で飲んでいたと思います」

「ウィナー男爵。相違ないかな?」

「は、はい!」

「ふむ」

キース・レッスさまは、少し考えるそぶりを見せてから全員を見回し、そして再び口を開きました。

「それぞれに、誤解があってのことのようだが何も咎めなしとは当然行かないほどに今回は騒ぎが大きくなった。それについてギルドより謝罪の意味を込めて領主である私が偶然この街にいたこともあって、裁量を任されているのでそのつもりで聞いて欲しい」