軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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あの後、なんとかアルダールを宥めて……というか、話は結局馬車の中でゆっくりと、ということになったので私にとってはなんだかお説教コース一直線に違いないっていうかなんですけれども、とにかくお客さまの出立を見送らなくてはと外に出ました。

するとそこにはもう出発を始めた馬車の姿があって、思わず呆然としますよね!!

お父さまがちょっと何か言いたげでしたけど、笑顔のキース・レッスさまに封殺されたっていうか。

え、貴方が原因の一端を担ってますよね。

そう口に出さなかった私、偉い。

「いやぁ、パーバス伯爵はユリア嬢にお別れの挨拶をしたかったようなんだが、エイリップ殿が少々具合が悪そうだったのでね! 早々にお帰りになってしまったよ!」

「……さようですか」

「うんうん。我々もできれば準備ができ次第出立したいと思うんだよ。それでいいだろう? アルダール」

「私は構いませんが……」

「ユリア嬢も良いかな?」

「ま、待ってください。まだ支度が済んでおりませんし、アルダールももう少し休憩しておかないと辛いのでは? 王城からここに着いたのは先程ですよ?」

「ははは、ユリア嬢! 騎士の体力はなかなかのものですぞ?」

キース・レッスさまは楽しそうに大笑いしてアルダールの背を叩いてるけど!

アルダールも苦笑してるけど、えええ、そういうもんなの? いや強行軍が必要な事態で体力がないと困るのはわかるけど、休める時に休んだ方がいいんじゃないのかなあって。

まあ、あまり遅くに出発してもキース・レッスさまはご自身の領に早く戻られたいのかもしれないし……。

「メレク、そちらの支度は?」

「も、もうできると思いますので確認してきます!」

私が問えばメレクは慌てて中に戻っていった。

うん、まあ私は元々王城からの帰省だしそんなに荷物はないけど、メレクはそうじゃないものね。

家人が準備をしてくれているだろうけど、なんせ急なことだったからなあ。

レジーナさんが言っておいてくれたから私のももう済んでるんだろうけど。

アルダールをちらっと見れば、にっこり笑顔で返されるし。

「……ではお父さま、お義母さま、私も準備の確認をしてまいります」

「あ、ああ」

「出発の前に、少しお時間をいただいても?」

「勿論だとも」

「ありがとうございます」

お父さまが即答してくださったのでそれが嬉しい。

お義母さまとはまだ、少しだけぎこちない雰囲気が残っていたけど笑顔をお互いに見せれたと思うし……うん、うちの家族はがったがただったけど、それなりにちゃんとお互いの気持ちが今回は見えた気がする。

今まで見なかった部分とか、気付かなかった部分とか。

もっと、言葉にしなきゃ。私も、わかってくれるとか甘えていないで。

(そう思うと)

自分の部屋に向けて歩く私の隣を、アルダールが当たり前のように歩いてくれる。

それをなんとなしに見やって、思う。

(アルダールは、すごいなあ)

悩んで、幼い頃にやさぐれたっていうのは本人の言葉だけど。

そう思うと彼の家庭環境から考えれば、家族と心を開いて話すっていうのは結構な勇気が必要だったはずで。

私みたいに、ぐじぐじ悩んだり、泣いたり拗ねたり……なんてアルダールはちょっと想像ができないけど、悩んだりはきっとしたんだろうなあ。

「どうかした?」

「えっ」

「こっちを見ていたから」

「……アルダールは、すごいなって」

「え?」

「えっ。あれっ? ええと。後で、……馬車の中でお話しします」

私がいきなり褒めたからアルダールは小首を傾げたけど、今ここで立ち話するような内容でもないなって思って馬車の中でって先延ばしにしました。

だってお父さまに時間くださいとも言ってあるし、準備の確認もしなくちゃだし、……家族と喧嘩したわけじゃないけど仲直り? をしたなんて話は廊下ではしづらいじゃない?

思わずすごいなぁって言っちゃったわけですがいや、まあすごいなぁって思ったのは事実ですので嘘はないんですが、だからって本人にそんなこと言うつもりではなかったっていうか。

アルダールだってすごいって言われてそれが家族と向き合う勇気がうんたら言われても微妙な気持ちになるんじゃないですかね、いやぁ私ったらアルダールを前にするとどうも失言が多い気がしてきました。これは気をつけねばなりませんよ!

「あっ、お嬢さま! お荷物、まとめておきましたが他にもお持ちになるかどうかご確認をお願いいたします」

「ええ、ありがとう」

部屋に着くと丁度、年若い侍女が私の荷物をまとめ終わったところでした。

ちょっぴりアルダールの方を見て頬を赤らめていたのがなんていうか……うん、まぁ確認するまでもなくイケメンだもんね、しょうがない。

私は荷物をざっくり確認して、持ってきたものはお土産以外当然持ち帰りますが他に必要なもの……うぅん? 実家から持っていくもの、ねえ。

特に思い当たらないなあ。なにせこれから他の領に行って、こちらに戻ってこないで王城に戻るようになるでしょう。

(顔合わせについての家族会議はもう後は手紙でやり取りするとして……)

部屋を見回して、やっぱり持っていくものは思いつかなかったので侍女に荷物を運び出してくれるようお願いしました。

アルダールは室内をちょっとだけ見まわして、物珍しそうにしてましたが……うん、まあ。世間一般の貴族令嬢に比べたら、私の自室は普段暮らしていない分、どうしても物がないですからね。自分で言うのもなんですが殺風景だと思いますよ。

下手したら王城にある私の部屋よりも殺風景だよね、実家の自室……女子力が今、フェードアウトして行った気がする! もう気にしたら負けな気がする!!

いや何と戦ってるんだよって誰かに突っ込まれたら何も答えられない気がしますけどね……今度、こっちにもちょいちょい帰ってくるってお義母さまとも話をしたんだし何か飾ろうかな……。

「ユリアは、十歳くらいから王城で暮らしていたんだっけ」

「え? ええ」

「……それまでは、ここで過ごしていた?」

「ええ」

「なんだか、不思議だな」

「不思議、ですか?」

「ああ」

そっとアルダールが、壁を撫でるようにして私に笑いかけてきました。ちょっぴり、照れくさそうな、楽しそうな、そんな表情を見せるからまるで少年みたいだと私も思わず笑みを返しましたけど。

「子供の頃のユリアはどんな子だったのかなってちょっと思ってね。その頃、私ときみが会っていたらどうなっていたかなぁって……ね」

「まあ」

子供の頃に会っていたら、かぁ。

どうなんだろう。

中身が大人だっただけに、子供らしさがまるでなかった可愛げのない私と。

複雑な家庭環境からいち早く大人になりたくて、ちょっとやさぐれていたアルダール。

うん? 想像できないな!

「……ちょっと想像できないです」

「うん、私もできない。だけど、こうして君が幼少期を過ごした部屋にいるんだなぁと思うとちょっとそんな馬鹿げたことを考えてしまって」

おかしな話だね、と笑ったアルダールの笑顔がとても楽しそうなので、私は何も言いませんでした。

多分アルダールのことだから、子供の頃の私も可愛かったんだろうとかそんなこと考えてそうですからね。実際はそんなことありませんよ、なんて夢を潰すような真似は人間としても恋人としてもできませんからね……!!

デキる女は、口を噤むことも忘れないものです!