軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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私ことユリア・フォン・ファンディッドは前世、OLでした。

一般的な学校を出て、普通に就職活動をして、そしてOLになりました。

突出した能力は特になく、かと言って悪いところもほぼない。

中肉中背、顔立ちも凡庸。スタイルも日本人平均。お給料も平均でした。

そんな私もオシャレに憧れたり恋に憧れたりという時期はありましたが、すぐにそれに対する努力が面倒くさくなって諦めモードに入るくらいにはモテない地味女子でした。

BBクリームと色付きリップ万歳。

さてそんな私でも疑似恋愛くらいはしていたわけで、ええ、まあ所謂女性向け恋愛ゲーム……乙女ゲームですね!

ちょっとそれが気になって満を持して買った新作をやるのに真冬だったんです。

その時丁度給料日前で節約とか思って寒い中暖房もつけず、やりこみました。

その結果、肺炎になりまして。ちょっとした風邪かなーなんて油断してたんです。ええ、もう自業自得です。

結果、肺炎が悪化してぽっくりと……。

油断ダメ、絶対。調子が悪いなと思ったらそのうち治るなんて思わずちゃんと病院行きましょうね!

とまあ、そんな前世を思い出したのはなんと赤ん坊の頃でした。

鏡にごつんとぶつかった衝撃で前世を思い出すとかどんだけ、と思わず遠い目をしました。

それまで愛らしい赤ん坊だった我が子が急にチベットスナギツネみたいな顔をしだしたのには両親も大慌てだったことと思います。

まあ、ファンディッド子爵家の長女に転生したんだなということは成長して理解しました。

しかも生前最後にやった乙女ゲームの世界観そのものの世界です。要するに転生です。びっくりですね!

私の父は文官、母はその縁者。

けれども優しい母は流行病であっさりと亡くなってしまい、父は仕事の知人の紹介で後妻を迎え、弟が生まれました。

継母がいるからって別にいじめはありませんでしたし、父の愛情を奪われる! なんて危惧から弟をいじめたりも勿論しません。寧ろ弟超かわいいの。

ふわふわの茶髪に緑の目。白い肌。もう可愛がる以外できません。

まあ、跡継ぎは男児とよくある貴族の慣例がありましたので継母も長女の私に辛く当たる理由はないのでしょう。

たださっさと良縁を見つけて嫁いでいって欲しいというあけすけな感情ははっきりと理解できましたし、貴族の子女に生まれついたからにはそういうことからは逃れられないのだろうと私も諦観しておりました。

ですので通例の行儀見習いに出る時には継母の応援にがっつり応える気だったんですよ。ええ、本当に。

弟には「ねえさま、およめにいかないで!」なんて可愛い事言われて揺らぎましたけど私としても弟が守る家にいつまでも居着くつもりはありません。

目指せ自立です。

――ところがどうでしょう!!

行儀見習い用の特別なお仕着せ(貴族の子女であることを明確にするために特別な 誂(あつら) えとなっているわけですね)に袖を通して思ったのです。

「あ、落ち着く……」と!!!!!

一見黒に見えてしまうほど濃い藍色の、上品なロングワンピースにオフホワイトのエプロン。

ブーツは濃い茶色の編み上げのもので、とても落ち着くのです。

パステルカラーのドレスばかり強要されていた地味な私としてはなんとも夢心地でした!

勿論、行儀見習いに来ているのでレッスンの日々です。

特別に侍女らしく働くわけではありません。

一応、貴族の方々にレッスンにお付き合いいただくという形で給仕をさせていただくことはありますが、これは面通しのようなものです。

ですがある日、本当に本当に驚くほどの偶然にも、私は休憩時間にご側室さまにお会いしたのです。

当時、王には正妃さまとご側室さまがおられました。

ご側室さまの方が陛下とのおつきあいは長く、相思相愛だったそうですがご身分が低かったご側室さまを無理に正妃にはできなかったそうです。

なにせ現在の正妃さまはこの国に3つある公爵家のご出身。ご側室さまの生家が肩身の狭い思いをすることは火を見るよりも明らかでした。

とはいえ、この国は割と貴族同士も表面上は仲が良いのです。

正妃さまを正式にお迎えになって間を置かずご側室さまをお迎えした陛下は、敬意を正妃さまに。寵愛をご側室さまに。

そんなことをするから正妃さまはご側室さまを目の敵になさいました。

そうして正妃さまがまず嫡男であらせられるアラルバート・ダウム・クーラウム殿下をご出産し、そしてその3年後にご側室さまは第一王女プリメラさまをご出産したのです。

ちなみにこのアラルバート・ダウム殿下。ゲームの中で攻略対象でした。

愛称はアリィ。母親である王妃さまに妹君とは決して懇意にならぬように言われつつも、時に優しく接する完璧超人かと思いきや『裏エンディング』でヒロインの登場で兄の優しさが減ったと暴走する姫に対し、宥めるふりをして金持ちの老人に嫁がせて介護させるというエンディングを持ってくる怖いヒトです。

まあ誰も死なないシナリオはこれが唯一だったので評価も結構高かったんですが、私としては現代日本を彷彿とさせて釈然としないエンディングでした。

このゲーム、タイトルは何故か思い出せないのですが攻略対象は合計4人とプラスアルファ。

先の王太子殿下と、その友人でありこの国一番の商人の跡取り息子、期待の新人騎士である伯爵令息、王家の闇を担う若き暗殺者……そして何故かのプリメラ王女との百合エンディングを含めた攻略の他に、お決まりの女同士の友情エンディング、各キャラの友情エンディング、通常のハピエン、複数キャラとの友情エンディング、逆ハーエンディングと来て各キャラの闇エンディングが存在する超マルチだった。

話を戻すと、私はそのご側室さまに妙に気に入られてお茶に誘っていただく仲になったのです。

当時まだご側室さまはプリメラさまを妊娠中。王の寵愛もあって、すっかり籠の鳥になった彼女はとても退屈していたのだそうです。

慣例により、いかに仲良くなろうとも社交界デビューしていない私は貴人の御名前をお呼びすることが許されませんでした。

ご出産したご側室さまが、産後お亡くなりになったときに私は彼女の名前を呼ぶ資格を永久に得られなくなったのだと酷く泣きました。

そこで私と王家の縁は切れるとばかりに思っておりましたが、プリメラさまが私に懐いたのです。

どんなにベテランの侍女や乳母がつこうとも、一度ぐずり始めると私が呼ばれたのです。そういう経緯もあって陛下に行儀見習い期間中王女の専属侍女になるよう言いつけられたときは驚きつつも納得してしまいました。

何と光栄な事だろうと勿論お断りなどしませんでした。当時私は12歳で、プリメラさまは1歳でした。

とはいえ、勿論私以外にも侍女はたくさんおりました。

侍女として城に勤めている本物の侍女です。

私は王女の専属侍女と言いつつ、王女のご機嫌を取るためのアイテムみたいなものだったのでしょう。

王女が4歳におなりの頃には、ゲームにある“ぽっちゃり・我儘・食欲”というキーワードの理由が理解できました。

原因は陛下にあったのです。

ご側室さまを思い出させるほどにプリメラさまは美しい少女でした。

明るい金の髪に白い肌、空色の瞳。人形なの? ってくらい整った顔立ちです。

しかもとてもご聡明で、そのお歳で家庭教師たちを驚かせるほどの頭脳をお持ちでした。

ですので、なんでもにこにこと可愛い可愛いしか言わない陛下にご不満があったのです。

王太子殿下にはきちんと叱ったり褒めたりとしていらっしゃるのに、姫さまにはただただ可愛い可愛い蝶よ花よと……ご聡明過ぎた故に、姫様はこう思われたのです。

愛されているのはわかるが、それは娘としてではなくいずれどこかへ嫁がせるための姫としてだけではないのか? と……。

悪戯をして叱っていただこうにも姫君がそのようなことをできるわけもなく、また聡明故にそれにより迷惑を被るもののことまで思いを馳せては諦められたプリメラさまはストレスから過食に走るのです。

それまでただただおそばに控えていた私でしたが、どうしても心配になって本来の行儀見習い期間を過ぎてもおそばに仕えさせていただきました。

そのことで継母と揉めて勘当されましたけどね! まあ跡継ぎに弟がいるので安心です。

それで私が17歳、プリメラさまが6歳の時にふたりだけになった数分に私は姫さまにご無礼を承知で厳しいことを申し上げました。

姫さまは最初は酷いと私を嫌いになる勢いで睨まれましたが、その夜、私を呼ばれてこうおっしゃったのです。

「ユリアだけね、わたしをちゃんと心配してくれるのは。皆が心配してくれるのは、私が姫だからでしょう。でもユリアは私が大事だと言ってくれたのよね。泣いてごめんなさい。心配してくれてありがとう。……こんな主だけど、まだ一緒にいてくれる?」

「勿論です、姫様!」

「プリメラよ」

「……私は社交界デビューをいたしませんでしたから、お名前で呼ぶことは叶いません」

「いいの、2人きりの時は呼んでちょうだい。……あのね、私ね、ずっとユリアが私の母様だったらいいのになあって思っていたのよ。本当はユリアの年齢ならお姉さまなんだろうけれど。ね、こっそり母様って呼んでもいい?」

もうね、この時の私の心境は語り尽くせないね。

ああああああああああ王様見れなくてざまあみろ!! この子の可愛さ!!!!

聡明な我が主、赤ちゃんの頃から面倒見てきた可愛い子!!!

結婚できなくたって(そして社交界デビューをしてもきっと私は選ばれないだろうなと思っていたから)子育て(っぽいこと)をしたしいつかお嫁に行くまで私面倒見るよ!!

いや! お嫁に行く先にも侍女としてついていくよ!!!

それが私ことユリアとプリメラさまの始まりなのでした。