軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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優秀な御者のおかげなのか、紋章がついていないにしろどう見たって立派な馬車のおかげなのか、とにかくファンディッド子爵領に順調に入り、その後は何の苦も無く懐かしのわが家へと到着いたしました。

とはいえ、すっかり時間は遅いものでしたけど。

夏以来なので、まあ半年ぶりと思えば懐かしのと言っても良いでしょう!

王都を出るのがやはり一番の難関だったようで。

ほら前世でもあったでしょう、ユーターンラッシュは主だった都市に向かってが密度を増す、その逆パターンですから。一斉に出ればそりゃ詰まるってもんですよ……。

しかし見るものがない田舎だと思っていたんですが、今回は本当に見るものがないっていうか見えないっていうか。途中吹雪き始めて思わず御者さんが無事かと心配になりましたよ!

そうしたらまあ、この馬車なんとですね……魔法がかかっているタイプのものらしくて、御者さんは余裕そうでした。でも覗いたからにはと思ってメッタボン特製のサンドイッチを差し入れしておきました。

さすが王太后さまがご用意くださった馬車ですよ、防寒用に魔法がかかってるってどういうこと。

いやまあ馬車内に小さいながらも調理キットがある段階でお察しだった!

因みに我が家に着いて御者さんと立派な馬車が、ファンディッド子爵家の 厩(うまや) に立派な馬を休ませてその横のガレージにある姿は、なんだか……ええ、まあ、どんな言葉で言い繕っても仕方ありません。なんだか場違いっていうか、うちももう少し立派な厩舎とかを用意しないといけないなって思いました!

「あら、お父さまわざわざお出迎えくださったんですか? ありがとうございます」

「ゆ、ユリア……先ぶれは確かにきていたが、その、あれは……」

「この雪道では難儀だろうと王太后さまがご厚意で馬車をご用意くださったのです。先だっての園遊会での行動に対する褒美のようなものです」

「そ、そうか」

久しぶりにお会いしたお父さまは、少し痩せたでしょうか?

とりあえず積もる話は確かにありますけれど、外でしていては凍えてしまうので家の中に入れてもらいました。御者さんは優雅に一礼したかと思うと執事の方に歩み寄って何事か話し、そして去って行くという……なんという手腕。いえ、彼に関しては『自分のことは自分でさせるから、ユリアの手を煩わせないわよ』と王太后さまから伺っておりましたけども。

それはさておき。

「お父さま、こちらは王女宮料理人、メッタボン。それと護衛騎士団所属、レジーナさんです。此度の帰省で私の護衛を務めるため、二人は私と共に来てくださいましたので客人として遇していただけるようお手紙でもお願いいたしましたが……」

「あ、ああ。部屋は用意してある。ファンディッド子爵家へようこそ、お二方。ごゆるりとお寛ぎくだされ」

「ありがとうございます、ファンディッド子爵さま。護衛騎士団所属レジーナと申します。ユリアさまの護衛の任を王太后さまより拝命しておりますので、どうぞ滞在中も帯剣をお許しいただけますようお願いいたします」

「おっ、王太后さまより、で、あれば……勿論、それは、当然……そのう、我が娘は一体……」

しどろもどろにお父さまが問えばレジーナさんは不思議そうに小首を傾げて、それからきりっとした表情でお父さまを真っ向から見据えました。

その凛とした表情、カッコよいです! メッタボンはもうやる気がないと言いますか、興味がないんでしょうね。ただそのやりとりをぼんやりと見ているようです。でも視線がちょっと厳しく我が家の玄関ホールを見ている辺り、もしかして本当に警護とかがっちりやる気なんでしょうかね?

元・腕利き冒険者とは聞いてますけども、私はメッタボンがどの程度すごいのかとかはわかってないんですよね……。世間知らずってこういうことよねえ。

「ユリアさまは王女宮筆頭侍女としての地位もありますし、王家の方々の信頼も厚く、また先だっての園遊会に於かれましては来賓の方に対し身を挺してお守りするなど国内外で賞賛されるお立場であります。それ故、護衛がつくのは当然のことかと愚考いたします」

「そ、そうでありますか……いや、その、ありがとうございます」

「どうぞ、私のようなただの騎士に対してそのような言葉遣いはなさらずとも結構です。帯剣の許可はいただけますでしょうか?」

「え、ええ、勿論ですとも」

「ありがとうございます」

きちっと騎士の礼でお父さまに返すレジーナさんは、まあ騎士の礼儀作法に則っての行動なんですが……普段そこまで上位の騎士たちと接することがないお父さまは戸惑っておられる様子。

まあそりゃそうですよね、王城とかもお父さまは立場上行きますけど、護衛騎士隊は基本的に近衛隊に次ぐ上位の騎士隊ですから。地方領主と接点は殆どないと言っても良いでしょう。

「メッタボン、あなたもご挨拶しなさいよ」

「あー……俺ぁメッタボン、さっきユリアさまからご紹介にあずかった通り、王女宮で料理人をしている。まあ、良しなに頼まアご領主さま。口が悪いのはどうにも直らねェが、どうかご容赦いただきたいもんだ」

「メッタボン!」

「これでも元冒険者だ。腕はそれなりに立つし、まだまだ鈍っちゃいねぇし、ユリアさまは俺にとって恩人でもあるから使用人の一人として見てくれて全然構わねえ。どうぞよろしくお願いします」

レジーナさんが肘でメッタボンを咎めてますが、彼はどうやら真面目に話しているんですよねえ。

うーん、プリメラさまや私に対してはもう少し丁寧なんですが、どうにも彼も癖が強い。

それでもその態度にレジーナさんの方がむっとして、お父さまの方はオロオロして、何だろうこの空間……。

「痛ってぇ!?」

「このバカメッタボン! 貴方の態度が悪いとその上司であるユリアさまの評価に繋がるって散々言っておいたでしょう!!」

「俺ぁこれでも丁寧に挨拶したつもりだって!」

「あれで!?」

「ちょ、ちょっと二人とも。お父さま、とりあえず二人を客間に案内しても宜しいですか? もう時間も時間ですし、きちんとしたご挨拶はまた明日の朝ということで」

「あ、ああ、そうだね。そうしようかユリア」

「……お父さま」

「うん? なんだい?」

面食らっているというのがありありとわかるお父さまが、そそくさとこの場を離れようとするのを思わず私は呼び止めました。

私の声に、少しだけ落ち着いたらしいお父さまが振り向く。やっぱり、少し痩せただろうか。

メレクの、婚約が調えば……お父さまは、隠居生活を余儀なくされる。決まっていることとはいえ、まだまだ働き盛りの男性に、辛い話ではないだろうか。

隠居生活となった人が、文官として働く……というのはない話ではないけれど、少なくとも領主を務めていた人間が、という目で見られることは覚悟しなければならないし。お父さまにその覚悟があるとは思えない。

それでも、あの時の私がとった行動は、このファンディッド子爵家のためになったはずだし。

お父さまの身を守るためにも必要だったはずで、だから間違っていなかったと思うの。

私のことを、お父さまはどう思ってらっしゃるんだろうか。まだ、哀れな醜い娘としか思っていないんだろうか。

「――……ただいま帰りました、お父さま」

「あ、ああ……お帰り、ユリア」