軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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だんだんとぼうっとしてくる、この感覚。

慣れるはずもない、だってこうやってキスするのなんてまだ二度目だから! 私にはよくわからない、けども。私のキス? ノーカウントです。あんなのアルダールのキスに比べたら、キスじゃない。

そう、多分。おそらく、絶対!!

(アルダールは、キスが上手い部類の人種だ……!!)

何故そう思ったのか?

答えは単純、私が不快だと少しも思わないところ、ですよ。しかも余裕綽々なところ!!

悔しいとかそういう考えは一切ありません。ええ、一切。ないですとも。

(好きだから、いやじゃない……とかそういう問題じゃない。なんというか、リードされてるってよくわかる)

合間に自分のものじゃないみたいな息が漏れるのがすごく恥ずかしいしでも離れたくてもがっちり後頭部掴まれてるから逃げれないし、アルダールが笑ってるのも感じ取れてもう……もうなんだコレ!?

いくら恋愛経験値が低くともそのくらいわかりますとも。ええ。耳年増ですから!?

いや、まあ、色々知識はありますからして。前世のも含めると結構えげつないことを知っておりますからして。知っているからって自分が経験したときにそうだって判断できたり実践できるわけじゃないですけどね。改めて思い知りましたよ。

……悔しくなんて、ないんですからね? 上手ってことはそれだけ場数踏んでんのか!? って言いたくなりますけどね? 人の過去はその人のものですからして、ええ、私そこまで愚かじゃないんですよ。

……悔しくなんて、ないんですからね!?

「や、も、アルダール……も、離してください」

「まだ、もうちょっと」

「も、もうちょっと……!?」

腰を支えられるようにして横抱きされて。そのままキスを繰り返される。

これなんていう拷問! いやいや、まあ、その……スキンシップ? あれ? でもスキンシップ過多な気がしてならないっていうか、できたらこの体勢からしてまず恥ずかしいっていうか、もう勘弁してくださいっていうか!!

なんとかして距離が取りたくてアルダールのことを押してみたりとかまあ、色々はしてみたんですよ。

びくともしやがりませんでした。ああうん、予想はできてた。

「大丈夫、キス以外はしない」

「そ、そういう……話、ではなくて……」

なんだかそれ以上のことを匂わすのはだめです、もっと恥ずかしいじゃないですか!

いやいやまあ待つんだ私、そういえば前回の時も『続きはまた今度』って言われてるんだから続きってそういうことだったんですかね……!? あれえええええ!?

「さすがに王宮の部屋で、というのはね……この間はまあ、ちょっと油断もあったから」

「なんだか不穏な言い方ですよね!?」

「そうかな」

首をこてんと傾げるようにするのは卑怯です。可愛い……! 大人の男性に対する言い方じゃないとは百も承知ですが、可愛い……!!

だけど言っていることは不穏ですよね、王宮の部屋がなんだって!?

アルダールがいたら安心、じゃなくてこの場合アルダールが危険だった!?

「ほら、他のことは考えなくていいから」

「か、んがえてません。アルダールのことです」

「そう? なら嬉しいけどね」

「ひぇ」

瞼や頬に口づけを落としてくるこの人の甘さは一体どんだけ……!!

そろそろ私の方が脳みそといい身体といい、なんだか内側から溶かされてしまうみたいで、怖いんだけど。

宥めるように、教え込むように、うん、そんな感じ。

思わずまたキスされそうになったから自分の手を差し込むようにすれば、アルダールの唇の感触が指先にあって。

「ご、ごめんなさい」

思わず謝るよね!!

でもアルダールは一瞬だけきょとんとしてから、にっこり笑った。

「可愛い抵抗だけど、そういうのはあまり役に立たないよ」

「えっ」

「とはいえ、これ以上したらユリアに怒られてしまいそうだから、今日はここまでにしておこうか」

「えっ、ありがとうございます?」

今日はここまで、ってそれもまたなんか不穏な気がする。

でもそれを突っ込んだらそれはそれでやばい気がする。

ここは空気を読んでおとなしく引いて、次からは自室に迎え入れるのはやめよう、私の心臓のために。うん、そうしよう!!

キスがいやだってわけじゃないんですよ、ただほら、ね? 経験の違いを見せつけられて戸惑っちゃうとかドキドキしすぎて心臓やばいとか、色々あるでしょう。

そう、色々あるんですよ。主に私の覚悟とかそういった方面でね?

まあそこで“じゃあいつ整うのか”と問われると答えれないのがチキンですみませんね、本当に! ええ!!

アルダールがようやく手を放してくれたので急いで離れましたが、ちょっとむっとした顔してますね。いやだって恥ずかしいんだからしょうがないじゃないですか。あーもう、髪の毛もぼさぼさです。

「そんなに慌てて離れなくたって」

「は、恥ずかしいでしょう」

「まだもう少し時間をかけないとダメかな」

「なにがです!? いえ、答えなくていいです!!」

「ユリアが許してくれた範囲で、少しずつ、ね?」

なにがだ!!

いやまあなんとなくわかる! 何この甘ったるい感じ……アルダールってこういう人でしたっけ? いやもしかして恋人には甘々な人だっただけで、そうですよ、基本人との距離をとりたがる人なので身内には甘いってわかってたじゃないですか。それはつまるところ恋人にもそうだってことで。

じゃああれですか? 前回私がキスしたことで距離がぐっと縮まってアルダールも遠慮がなくなったとかそういうことなんですかね? じゃあこれ全部自業自得なんですかね!?

「……いやだった?」

反応に困る私のその雰囲気を察したんでしょうか。アルダールの方が心配そうにこちらを見てくるから思わず言葉に詰まって、首を左右に振って答えるしかできませんでした。

だってほら……いやじゃない、とか言うとキスして欲しいって言っているようなものじゃないですか。

かなり恥ずかしいよね、それ!?

「良かった」

でもそんな私のことなんてお見通しでしょうに、嬉しそうに、嬉しそうに笑うからああああ!!

あああああイケメンってズルいぃぃ!! そんなわずかな表情だけでこっちは心臓がバクバクするのにぃぃぃぃ……。

私なんで前回この人にキスなんてできたんだろうか……ホントあの時の自分、なにがあったの……?

新年祭マジック? マジックだったの?

「ところでユリア」

「はい!」

「……帰省するのはいつからだったかな」

「来週ですよ、メイナが戻ってきてくれたら王女宮も落ち着きますから。特別大きなイベントごとは今はないですけれど、宮を手薄にするわけには参りませんし」

「そう、だね」

「どうかなさったんですか?」

「いや」

少しだけ、彼の持つ雰囲気がぴりっとした気がする。思わず私が姿勢を正すと、アルダールはふっと笑ってくれた。あれ? ごまかされた?

「……気の所為かもしれないけれどね。私との関係で、色々とやっかみもあるから……ユリアに、ひいてはファンディッド子爵家に迷惑が掛からないといいなと思っただけだよ。キース殿もその辺りは抜かりないだろうし、大丈夫だろうから……ただの杞憂だと思う」

「前々から思っていたんですが、アルダールはセレッセ伯爵さまとは親しいのですか?」

「いや、親しいというか……あの方は、かつて近衛隊にいらしたんだよ。私にとっては先輩だね」

「まあ」

知らなかったわー!! 私がセレッセ伯爵さまをきちんと知った頃にはもう外交官でいらしたから。

え、外交官で近衛隊にいたくらい強いとかすごくない? チートじゃない? 何私の周囲の人たちチートキャラばっかりなの? 攻略対象者以外もそれって恐ろしい……。

(や、いまさらか)