軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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アルダールの目の色をしたネックレス、というのがなんだか特別なんだというのを実感させるといいますか、ハイ。やばーい、彼氏からのプレゼントとか(前世を含めて)人生初ですよ、人生初! テンションあがりますよ!?

……誰だ寂しいやつとか突っ込んだ人。ちょっと後で王宮裏でお会いしましょう。

最近彼は色んな表情を私に見せてくれますよね。初めて会った頃は随分余裕のある男性と思っていたんですが、朗らかに笑ったり拗ねたり、そんな顔を最近見せてくれるようになって嬉しい限りです。

……だからってまあ、私のそういう表情を見たいとか言われても実のところ困るんですけどね! いやはや、私のそんな表情とか面白くもなんともないっていうか、アルダールはイケメンだから何しても許されそうな気がするっていうか。

まあ『あばたもえくぼ』とか言いますし、彼には私が可愛く見えている……んだったらいいなあ! それなら私も努力の甲斐があったというもの。

ところで。

手を引かれて今度は昼食をとりにレストラン、流れるように来ましたけれども。

いやぁ本当にデートプランしっかりしてるよね。なんかすごく手馴れてる感満載なんですけど。ちょっとジト目で見てしまうのは、私の心が汚れてるんですかね?

「……なんでそんな目で見られているのか心外なんだけどな」

「だって……あまりにも手馴れておいでで」

「義母上に事前に相談したんだ、恥を忍んで。バウム家関連の店を利用するとどうせバレてしまうし」

「本当に?」

「本当に!」

なんだか恋人の浮気を問い詰めているかのような雰囲気になってしまいましたが、そこに苦笑したアルダールが「しょうがない」と言って説明してくれました。

新年祭の時期に年末顔を見せただけで実家滞在をせず王城に戻ると宣言した義理の息子を、どうやらバウム夫人は心配しておられたそうです。

まあ、アルダールとバウム伯爵さまとの関係はあまり良いものと言い切れないご様子ですのでそれが原因なんでしょうが……夫人は相談されたことでとても喜ばれたとかなんとか。

……なんでしょう、ひどく恥ずかしい感じがするんですけど!? あちらのご家族に私のことで相談されてるってこれなんて状況。

公認になっているとは確かにまあそうなんですけど。彼は彼で私とお付き合いを始めたことは宣言していたはずですので。

「全部が全部相談したわけじゃないよ?」

「それは、わかってます……」

「できたら、その。きみの誕生日を祝うのに楽しめる一日にしたかったんだ」

そう照れたように笑うアルダールは、ちょっとへにゃっとして可愛いっていうか……。

だから! はにかむように笑うとかほんとだめだってーーー!!

直視しちゃうとまだちょっと威力がね。ほんとにね。私の彼氏がこんなにも可愛くてかっこいいとか……どうしようほんと誰かに背後から刺されないか心配になってくる今日この頃なんですけど。

私も護身術くらい覚えたほうがいいんでしょうか。年に数回侍女の勉強会で学ぶんですが、基本的には王城に忍び込んでくるような手練れ相手に侍女ごときがってことで自分たちが人質にならないようにどうしたらいいかという講習くらいしかなくてですね。

アルダールに聞いてみるのが早いのか、いや、聞いたら最後「自分が守ってあげる」とかまた甘い空気に持っていかれる気しかしませんね。これは却下で。

「あ……それは、その、ドウモ……」

「いや、うん……正直、どうしたらきみが喜んでくれるのか自信がなかったのが良くないんだよ。でも疑われるのは心外だなあ」

「えっ、いえ疑っているわけじゃありませんよ!?」

ただ手馴れてるなぁってだけで!!

今現在で同時進行二股とかそういうことはないと信じてますよ。そうじゃなくてただ手馴れてるって思ってるだけで……ってあれ、なんだかこれはこれで失礼というかアルダールが堅物って噂を持っているのに女遊びの激しい人みたいに私が見てるとかそういう風にも取られるっていうか。

こんなこと言ったらまあ逆に問い詰められる未来しか想像できませんよねそうですね。これは私に分が悪い……!!

「アルダールはモテるでしょうから、さぞかし今まで恋人に不自由なさらなかったのではと思っただけで」

「……そうでもないけどね」

「今、ちょっと間が空きませんでした?」

「いや、まあ否定はできない、かな? ただ自慢するようなことでもないってだけ。ハイ、この話題は終わりにしよう」

「……はい」

にっこりしたその顔が笑ってるのに笑ってねぇー!!

いやどう考えてもこれは私が悪かった。明るくこの話題から上手く別の話題にと思ったんだけど!

あんまり強引に話題を変えても変かなって思ったのが裏目に出た感じです……。

「でも」

「え?」

「ヤキモチを焼かれるっていうのも、悪くないけどね」

あっ、いつもの笑顔に戻った。ちょっとほっとしますよね、いつもの感じだと。

さっきからこう、甘ったるい中にいて感覚がおかしくなっているっていうか、いえ恋人同士なんだからこのくらいが普通なのか? 普通の基準がわからない!!

いや、ヤキモチとかそういうつもりじゃ、あれでもいやだって思ったからにはそうなのか? なんだか改めてそんなこと言われると照れてくるっていうか。だからやっぱりアルダールはちょっと意地悪だ。

私がそんな風に言われたら、動揺するって知ってるくせに。

「アルダールが意地悪です……!!」

「ユリアがそうしたんだろう?」

ああもう、さっきまでの可愛い彼はどこに行ってしまったんでしょうか、すっかり元通りの余裕っぷりですよ!!

運ばれてきた食事を楽しみ、こうして軽口を叩いて笑い合うっていうのは……まあデートらしい、のかな?

デザートまでしっかり食べました。美味しゅうございましたとも、フルーツタルト。

さて次はどこに行こうか、なんて話をしていると前方に見知った顔を見つけました。

エーレンさんとエディさんカップルじゃありませんか!

そういえば新年祭なんだから、誰かに会ってもおかしな話じゃあないんですよねえ。むしろ今まで……ああうん、脳筋公子は別です。あれは向こうからやってきただけでノーカウントでお願いします。

エーレンさんがこちらに気がついて、エディさんに何事かを言って駆け寄ってきました。

そういえば彼女と会うのも、園遊会の後以来でしょうか。一度だけ軽く挨拶と謝罪をいただきましたが、それ以降はやはり宮が違うこともあって会う機会もありませんでしたから。

ミュリエッタさんが以前、エーレンさんがよそよそしい、と言っていたのを思い出します。

「ユリアさま……ですよね?」

「ええ、お久しぶりですエーレンさん。お元気そうで何よりです」

なんで疑問形だ。あれだけ色々関わった割にもう顔を忘れられたのかとちょっと自信なくしますよ!

「眼鏡がなくても、見えるんですか?」

「ああ……あれは、ええ、いわゆる装飾眼鏡でしたから」

「まあ! じゃあ噂に聞く装飾眼鏡がユリアさまがきっかけというのは事実だったのですね。眼鏡がないことと髪形が普段と異なられることで、随分と雰囲気が違ったものですから……申し訳ございません」

「いえ、問題ありません」

ああ、なるほど。普段メガネのひっつめ髪だから普段と違うから戸惑ったと……。

確かに前世でも眼鏡からコンタクトに変えた人とか、印象全然違ったものね。わかるわかるー。

「……ユリアさま、私、エディと結婚することになりました」

「えっ? まあ、おめでとうございます!」

「ありがとうございます」

唐突に幸せ宣言か! いやおめでたいね。

なんだかんだエディさんはエーレンさんのために色々頑張ってたものね。頑なな脳筋だとばかり勝手に思ってましたが、厄介な脳筋を見た今ではちょっと頑ななだけの男性として見える不思議。

「まだ、もう少し先の話なんですけれど……」

「それでも、良いお話を聞かせていただけて嬉しいです。お幸せに、エーレンさん」

「はい、ありがとうございます。……多くの方にご迷惑をおかけした身です、これからは彼を支えていく道を、きちんと歩んでいきたいと思っております」

うんうん、エーレンさんは元々能力はあるんでしょうから、きっと良い奥さんになることでしょう。色々あったけど、最終的に良い道を行けるなら外宮筆頭も安心でしょうね。

私も他人事ながら嬉しいです。

「……それで、結婚したら、私たち……王城を辞することになりました。辺境の方へ、赴くことになっているんです」

「えっ!?」

「エディが、そちらの警備隊に任じられることが決定しておりますから」

「そ、それは……」

「良いんです、確かに私は辺境を疎んでこの地にやってきました。そして、焦る気持ちやそれらから逃げたくて、いけない態度をとってしまったと今は反省しています。……大丈夫です、今度は、エディがいますから」

「エーレンさん……」

「でも、心配が、あって」

ぎゅっと胸の前で手を握り締めるエーレンさんは、少し躊躇ってから私の方を見ました。

美人の必死な顔は、やっぱり美人でした! くっ、美しい……。

「私のことは。自業自得です。辺境の民であったことを恥じた過去も、なにもかも、私自身の問題で、私自身の咎です。でもそれを認めて受け入れることを許してくれたこの国や、きっかけをくださったユリアさまや、信じて支えて下さった外宮筆頭さま、そしてこんな私のことを愛していると言ってくれたエディのために、私、必死で生きていこうと思います」

「……そう、ですか」

「でも、私」

一生懸命訴えるその思いは、もともと結構独りよがりのヒロイズム。

だけど、私にはわからない、辺境での生活苦が追い詰めたのだということを考えるときっとそういう考えに至るのは彼女だけではなかったんだろうなとも思うのです。

だからこそ、そこからまっすぐに、逃げずに辺境でまた生きていくと決めた彼女は強いと正直に思いました。

エディさんという支えがあるというだけで、彼女は輝けたのですね。羨ましいなあ……いや、うん。リア充という意味では私も、な、はずなんですけどね?

「でも私、ミュリエッタが心配なんです」

でも!!

あぁー、でもそのことは私、忘れてたかったなぁぁ!!