軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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なんだってえええ!?

と文句を言いたくなるような展開はともかくとして、これはあまりにもあんまりでしょう!

「なにを勝手に……ッ」

「ユリア」

文句を言おうとした私を、アルダールが制しました。

相手が他国の重鎮、の跡取り……であることを考えたら確かに良くない行動だとは思いますが、ここで止められるのはどうなの!?

そう思ってアルダールにも思わず文句を言おうと思って顔を上げると、そこにはものすごく静かな表情のアルダールがいました。

あれっ、あっ、なんかこれ私が出たらダメな感じですね! はい! ハウス!!

セルフでハウスできるくらいには空気が読める女、ユリアです!

「貴様は腑抜けた! 騎士となりその剣を捧げる、それは理解できる。オレも公僕であり国を率いる貴族の一人。だが男として、貴様に劣ると言われたことを忘れたことは一日とてないわ!」

「……だからこのように強硬策に出たと?」

「そうだ、貴様はいつとてオレが挑もうがなにをしようが『次期剣聖の座などくれてやる』と飄々とその余裕を見せる! 今でこそ穏やかな顔をしているが、オレは師に聞いている。お前は飢えた野犬のようであったと。己と同じく、その剣の切っ先は鋭いと。ここまでお膳立てすれば腹も括る、違うか!?」

「……そもそも、次期剣聖という言葉も周囲が勝手に言っているものだ。我々がどうこう決めるものでは、」

「お前は騎士の仮面を被った臆病者と成り下がったのか。強くあれと剣を振るっていたという貴様はどこにいったというのだ!」

ダンッと足を踏み鳴らし、大声でアルダールを詰るバルムンク公子は真剣に怒っているようです。

いや、なんだか言い分を聞いていると随分一方的だとしか思えませんけど。剣の道を究めたいという人からしたらこれが当たり前なんでしょうか、私にはわかりません。

むしろ私からするとアルダールにひどいことを言う脳筋公子にイライラしっぱなしです。

でもアルダールは私に黙っていて欲しい、と先程手で制したわけで……え、まさか勝負受けたりしませんよね?

「ユリア・フォン・ファンディッド、その男の力を貴様も知るまい。見たくはないか!?」

アルダールに言ってもスルーされるからか、私に方向を変えてきましたね。なんだか必死過ぎて怖い。

どうしたんだろう、園遊会の時はあれほどまでに余裕があったバルムンク公子が、今はやけに余裕がない。

「怖いのか、その男の内なる凶暴さが! そうか、それを見せるのが怖いのだろうアルダール! 優男を装って女に良い顔をするのが剣士だとでも言うのか!?」

「凶暴? アルダールが?」

「ユリア、まともにとり合わなくていい。……言いたいことはそれだけか?」

静かな問いには、なんの感情も含まれていません。

私への声は、とても優しいのに。このアルダールが凶暴だと言われても……なんでしょう、よくわかりません。

「新年祭の武闘大会に強制力はない、その事はお前も知っているだろう」

「くっ……」

「え、そ、そうなのですか?」

「ああ、ユリアは新年祭の武闘大会については良く知らない?」

「ええ……腕試しの冒険者たちが参加すると聞いたことがあるくらいで」

「あれは御前試合とかではないからね。多少補助費は出ていても、商人たちが運営するものなんだ」

「え、そうなんですか?」

「詳しくは後で教えてあげるよ。だから参加のことは気にしなくていい……過去の英雄や大泥棒の名前と格好に扮して参加するような、“お祭り”なんだから」

確かに……アルダールの言葉を否定するでもなく、こちらを睨みつけてくる脳筋公子。

その様子からも“行かなければ良い”のだろうと窺うことができました。

武闘大会について詳しく聞きたいところですが、まあ今この場の雰囲気ですることじゃないのも確かですね。キャンセルにわざわざ行かなくて良いということが大事ですので、一安心。

(いや、そもそも勝手にこういう行動をされることが問題だった。安心してる場合じゃないし!)

「確かにあの武闘大会という名の祭り会場では勝ち抜いた者に栄誉のみがあるだけだ。だがオレがそうまでしてお前に訴えるこの意がなぜ伝わらん……!!」

「私は、クーラウム王国の、騎士だ。それ以上でもそれ以下でもない」

「オレは! 貴様の……ッ」

「同じ師の下学んだ仲だ、勝手に武闘大会に申し込んだことは冗談で済ませよう。しかし、ギルデロック……バルムンク公爵家嫡子としてのお前の振る舞いはいかがなものか、そこは私の一存でどうこうできる問題ではない」

「……っ、オレは! オレの貴族としても! 男としても、」

「この件は騎士として隊長に報告せねばならない。お前に何かあったならば、この国が責任を負うこととなるんだ」

「オレはそこいらの惰弱な連中とは違う!」

「そういう問題じゃない。他者を見下し、その大切な相手や家族に暴言を吐き、挑発することがそれらの矜持からだとでも? 公爵家の息子だから許されるとでも? 貴族であることを誇りに思うのならば、他国にも自国にも迷惑がかかる行為は控えるべきだ」

「……くっ、貴様に何が、わかるというのだ……!!」

「同じ言葉を返させてもらう」

なんだろう、この男性はコミュニケーション能力というものが育ってないんでしょうか。上からモノを言って見下したんじゃ会話にならないと思うんですが。これが大貴族の、跡取り?

公爵家の人間として、跡取りとして、常に 傅(かしず) かれて敬われて子供の頃から大人に頭を下げられ続けた結果、自分より上の存在があまりにも少なすぎてわかってないのでしょう。

いえ、わかっていてもどうしたらよいのかわからない、肥大した誇りだけがあるんでしょう。

この脳筋公子が、もし私と同じような子爵家の生まれとかだったならここまで居丈高にはならなかったんじゃないかなと思うんですよね。

(もしかして、だけど)

ふと、思いました。まああくまで私の予想ですけど。

自分の力である剣、それだけはバルムンク公爵家から成るものではないと証明したいのではないかなと……思ったんですよね。

それまで全てを肯定されるばかりだった子供が、突如として師からお前よりすごい人物がいるぞ、兄弟子だぞと言われていきなり壁にぶち当たった、みたいな?

だからその壁を乗り越えたい、とか?

(そうだとしてもこのやり方はどうしようもないとしか思えないけどね!)

「ぼ、坊ちゃま……っ」

「……アルダール。オレは近いうちに公爵位を継ぐだろう。そうなれば、貴様と勝負などできるはずもない」

「知っている」

「ならば、何故……!」

「言っただろう、私はこのクーラウムの騎士なのだ、と」

アルダールとの身分差が広がれば、やはり難しいでしょうね。

そもそも現段階でも他国の大貴族というだけで相当難しい事なんだけど。

どちらも国が違えども大貴族のご子息。剣聖という立場をかけて……なんて吟遊詩人とかが喜んで題材にしそうですが、実際にはどちらが勝っても負けても厄介なだけです。

下手をすれば遺恨が残るだけなんです。

それでも、この人なりになにかけじめをつけたかったのかもしれない。

やり方は、相当間違ってるんだけど。

かと思うと脳筋公子、私のことをじろりと見てきました。

(えっ、なに……?)

「貴様も知っておくべきだ、その男の隣にいるというならば」

「……なにを、でしょうか」

「オレたちのような男は身の内に獣を飼っている。アルダールはそれを見せるのを恐れている。貴様も見ておくべきだ、それとも上辺だけの優男がお望みか!」

突如として何を言ってるんだこの人状態です。

いえ、とにかく理由をつけてアルダールに剣を抜かせたいということくらいはわかりますけど。

そんなわかりやすい挑発で私がアルダールをけしかけるとでも?

さすがにそこまで愚かではありませんよ!

「今でこそ大人しい、穏やかな人柄であろうとその男の中身は違う。それを貴様は受け入れられるとでも?」

アルダールの方をちらりと見れば、彼が厳しい顔をしていることはわかります。

苦いものを口にしたような顔、とはちょっと違うけど。

きっと、脳筋公子の言葉を否定できない部分もあるんでしょう。

だからって、私に何がわかるかと言えばそれは単純なことでした。

「私は、きちんと見えております。バルムンク公子」

「なに?」

「貴方さまの仰いようは私には難しく、わかりかねます。ですが私は上辺だけの彼を見てきたとは思っておりません」

そりゃ優しいアルダールしか知りませんけどね!

でもだからって、優しい所とかイッケメッェェンだからとか、そういう理由でアルダールの隣にいるんじゃないんですよ。

この人が、不器用で意地悪で、家族思いで……優しくて、優しいから許してしまうような甘い人だってことくらいはわかってます。

だから、そんな言い方は、しないで欲しい。

「アルダールという男性が、上辺だけを望む女を隣に置くと貴方さまも思ってはおられないでしょう」

「……貴様」

「どのような意図があれ、どうか私の恋人を、あまり侮辱なさらないでください」

そうだよ、ここで引いたら女が廃る!

これからデートの続きなんですよ、引いていただきましょう。

照れて何も言えないとか、黙っておくべきとか、そういうのは私らしくありません。言いたいことは言わせていただきます!

いえ、勿論立場とか色々ありますけどね?

勿論このことだって後程統括侍女さまにはご報告いたしますよ!

その後の対応は上層部にお任せです。

アルダールが近衛隊の方に報告するのと併せてどうなることやら、あちらの爺やさんはオロオロしながら顔色が悪いです。さもありなん!

まぁ……私もこのようなやり取りをしてしまったことで、お咎めを受けるかもしれませんけどね。

でも好き勝手言わせたままとか嫌なんですよ、私が!

真っ直ぐに、挑むようにバルムンク公子を見た私をあちらも凝視してきます。

でもね、アルダールの方も視線を私の方に向けているようですが、出来たらこちらをあんまり見ないでください。

恥ずか死ぬからぁ!!