軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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髪よし。化粧よし。服よし。

戦闘準備完了です!!

アルダールとのデート『たまにはドキッとさせられるだけじゃなくてやりかえしてあげようじゃありませんか』計画です。

長ったらしい上にそのままだって? いいんです、わかりやすいし私の脳内にだけあれば十分なんですから。

とりあえず私の誕生日当日、その辺りの事情をみんなも知っているからでしょうか。

朝からにっこり笑って私にお休みを言い渡すプリメラさま、小さくガッツポーズして頑張れとか言ってくるメッタボン、なんかよくわかりませんが頷いてくるセバスチャンさんたちに「楽しんで来い」と言われてなんとなく落ち着きません……。

一応朝から少人数なのに抜けてごめんねって毎年のことですけど言いに行ったら今年は微笑ましいものを見るような目を向けられるなんて誰が想像できたでしょう。

ええ、ええ、去年の私は少なくとも想像してなかったでしょうね!

まさかのイケメン彼氏ゲットして、恋人と過ごすのにいっつもドキドキするばっかりでどうしたもんだこれとか恋愛小説もかくやな悩みを抱えるとかさあ!

……まあ、ほら?

今日のためにワンピースを選んだり、髪形考えてみたりとか、まあ乙女なこと。自分でもびっくりするほどですが、服装一つでアルダールが動揺するとは思えません。というか、服装でとかそんなトガった服とか持ってませんから!

持ってるのはどうやってもシンプル系で機能性重視の服ばかりでした。とほほ。

でもだからって落ち込んでいるわけにはいかなかったので、お化粧と髪形はちょっとくらい普段と違うものにしましたよ!

とはいえ、結局自分でメイクを施したので普段のにプラスアルファできたんじゃないのかっていう自己満足レベルですのでものすごい変化はないです。こちらもとほほだ!

セバスチャンさんからいただいた香水は、今日使ったらもう終わり……というほんの少しだけでした。

今後はアルダールに買ってもらいなさいってことらしい。でも香りをまとうというのは確かにちょっと普段とは違う気分になれますから、私にとってみたら勇気をもらった感じですね。

あとは、そう、私の行動一つ一つ。それが大事です!!

(照れてばっかじゃダメだ、私だって大人なんだし知識はあるんだしいつまでもいつまでもお手手つないで仲良しこよしじゃ足りないんだから!)

いや、照れはありますよ。というか照れしかないです。

でもここで踏み出さないと、アルダールは私にいつまでも合わせてくれるでしょう。優しいから。ってことはつまり私が待たせていて、私はじれったく思っていて、要するに私が前に進まないといけないんですよ!!

迎えに来るっていうアルダールに、私は王城内の庭園の一つを指定して待ち合わせをすることをお願いしました。

デートの定番って言ったら待ち合わせからでしょう?

え? 前に食事デートした時に待ち合わせしたろうって? あの時は両想いじゃありませんから! 恋人としての待ち合わせですよ、ほらこういう古典的なところは踏襲していこうと思うんです。

私のようなヘタレ……もとい内向的な人間もこうやって準備をして待ち合わせの場所に向かうということで覚悟の一つも二つも決まるというものですよ?

そして新年祭というこの空気! 実家にいるときは残念誕生日で、王女宮に就職してからは秘密の誕生日だったんですが正直なところ『新年祭ありがとう』、これに尽きます。

なんでかって?

それはね、私のように“なにか理由がないと行動できない”タイプの人間は乗っかれるイベントってありがたい存在なんだって今更理解できたんですよ……!!

前世でもよくわかってませんでしたけど、よくよく考えたらわかります。

話しかけるのすらできないシャイな子がバレンタインならチョコレートというきっかけでいけるように。

誕生日ということにかこつけて意中の相手に自分が贈ったものを持ってもらえたらなんていう下心!

七夕でお祭りだから、花火大会だから、クリスマスだから、ほら……イベントを理由に誘いやすくなるじゃありませんか!!

だから、今回もそうです。

新年祭だから。ちょっと浮かれたから。イケる。これだ。

(そう、今日の私は一味違うのですよ……!!)

しぃんとした城内の厳かな空気そのままに、私は指定した庭園の前で足を止めました。

視線の先には、アルダールの姿。冬の花々が咲く、静かなそこに佇む彼はなんて絵になるんだろう!

「あっ……あの、アルダール……おま、お待たせ、しました!」

「ユリア」

やっばぃ噛んだ上にそれに焦って上擦ったぁぁぁぁ!

覚悟を決めていざって時にこれかよ私、いやこれだから私なのか……?

それだってのにアルダールは私の方を向いてにっこり優しく笑ってさあ。

ほらあれだ。

あまぁぁぁぁぁぃ!!

全力で叫びそうです。勿論そんなことはしませんし顔にも出しませんし、いえ、いやなわけじゃないです。おそらく私のフィルターもかかってそう見えているんでしょう。ほらよく少女漫画とかであるでしょう、キラキラしたやつ。あれがかかってるように見えちゃうんだから末期だよね恋する女は怖いねほんとだよ!

「お待たせしましたか?」

「いや、大丈夫。待っているというのもいいものだなと思えるからね」

「え?」

「だって私のために着飾ってくれたんだろう? そういう風に時間を割いてもらってるんだって想像すると待つのだって楽しいから」

「……」

なんでしょう、このさらっと甘いせりふを吐く生き物。私の恋人でした。

思わず凝視しちゃいましたね……真顔で言ったよこのイッケメェェン……そういうセリフって物語とか演劇とかの中だけじゃないんだなって逆にすごく良いもの聞けたような気がします。

まるで他人事のようですが、処理しきれないだけです。いえ処理しないほうが良いのでしょう、まだデート序盤ですからね。

「そ、それでは行きましょうか!」

「うん。それじゃあお手をどうぞ、お嬢さん」

「え」

「え? エスコートはきちんとするものだろう?」

「そ、そりゃそうですが、まだ城内ですし」

「うん?」

「城内、ですし……?」

「うん」

誰が見てるかわかりませんし、そりゃまあもう知られてますし隠してもおりませんが、やっかみだってまだまだあるだろうって思ってせめて城外からと思ってたんですがアルダールも引く気がないらしく。

私が城内だからと言い募っても笑顔で手を差し出したままです。むしろ圧を感じます。

あるぇ? いきなり初戦敗退な感じがしますが気の所為でしょうか!?

でもここまでしてもらってまだ断るのも申し訳なかったので、彼の差し出した手に自分の手を重ねてみました。

まあ、満足そうなアルダールが見れたのでちょっと可愛いものが見れたと思っておきましょう。負けた? いいえ、勝ちを譲って差し上げただけですとも!

しかし何故だかアルダールが怪訝そうな顔をしています。

「アルダール?」

「ああ、うん。……ユリアは香水とか、つけるんだったかなと思って」

「これですか? 折角だからお洒落をとセバスチャンさんがくださったんです」

「……あの人か」

ちょっとだけ苦々しい表情をするものだから私が首をかしげると彼は苦笑した……ように見える。え、もしかしてあんまり好きじゃない香りだったのかな?

私は結構好きな感じだったんだけど……詳しくないからどんなとは説明できませんが。ただフローラル系なので女性向け……ってセバスチャンさん、女性向けの香水を一回分くらいってどこで調達してきたんでしょうか? そんな量売ってくれるものなの?

「……ユリア」

「はい!」

低くなった声のアルダールに逆らってはいけません。これは豆知識ですが、よくハンス・エドワルドさまがアイアンクローされてアルダールからお説教をされている時の声に似ています。え、説教コース?

「香水やドレスなんかの身に着けるようなものは、男性から貰うようなことがあったら今後は私に教えてくれるかな?」

「え? はあ、良いですけど」

なんだろう、男性から限定……はっ、まさか。

これってあれですか?

これってあれですか!?

(ヤキモチってやつ……!?)

アルダールがですか! いえ、確かそんなようなことを彼自身口にしていたことがありますけど! うわぁー……なんだろう、このむず痒さ! なのに嬉しい! やだこれがときめき……!?

「なにを笑ってるのかな?」

「いえ! なんでも! ありません!!」

思わずにやけた口元に、アルダールがお説教モードの声音で問いかけてくるもんだからついつい背筋を正しました。

やだ嬉しいけど、これ怖いわあ……。

デートの始まり、良くも悪くも、ですかね……?