軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「……ねえユリア、これなぁに?」

「それはメッタボンと私で共同開発いたしました、マシュマロというものにございます」

「ましゅまろ」

きょとんとしたお顔が可愛いです!

じゃなかった、そう、マシュマロが作れた……その背景には以前寒天ゼリーを作った際に動物の骨などを煮た後に出る煮凝り、あれがお菓子作りに使えたらいいのにねーなんてメッタボンに話した結果です。

まさかその程度の発言でゼラチンを抽出するとか思わないじゃん……?

ある日、見て欲しいものがあるとかで呼び出されて調理場に行ってみたらゼリーがあるわけですよ。冬場だから冷やすのには事欠かなかったっていうかそこじゃない。

私だってゼラチンが牛の骨とか皮から採れるコラーゲンが原料ってくらいしかわかってなかったレベルだっていうのに、メッタボンにどうやったのか聞いたら『煮て濾過して溶かして濾過して抽出してを繰り返した』ってあっさり返してきたわけですよ。

どんだけ有能なのかと。

前に確かに私、彼の前で言いましたよ。ええ。

ゼラチンで作ったゼリーの方がもっちり滑らかで好きなんだけどねって……ぽろっと……。

そうしたらまさかの、ねえ?

で、褒めてって言わんばかりの大型犬がいて、その後ろで色々手伝っていたであろうレジーナさんが若干疲弊した雰囲気でしたが、まあ褒めましたよね! 褒めまくりましたよね!!

これでゼリーもムースもマシュマロも作り放題ですよ!

で、さっそくまあただの卵白と砂糖でお試しマシュマロなんて調子に乗って作った結果、作り過ぎちゃったんですけどね。反省です。

いやあ、メッタボンも喜んでくれて楽しかったんですが……振り返ってみるとはしゃぎ過ぎましたね。

どう消費するか悩みものです。

で、考えたんですけどね。

マシュマロが特別好きな訳じゃないんですが、前世で一時期ココアにマシュマロを浮かべるってのにハマった時期がありましてね?

ほら、コーヒーとかもド定番でしょう?

というわけで、本日のプリメラさまへ紅茶とマシュマロ! そしてレアチーズケーキです。こちらはブルーベリーソースを添えて。

ケーキの方は見た目ではよくわからないのでしょう、今はティーカップの横に小皿で用意したマシュマロにプリメラさまは興味津々です。ああー可愛い!

「これは指で触れても良いの?」

「粉をまぶしておりますので、あまりお勧めはいたしません。おひとつ、そのままで召し上がってみてくださいませ」

「そのまま?」

「はい、ふわりとした不思議な食感でございます。メッタボンも喜びます」

マシュマロを作ってみたところ、大の大人が大はしゃぎ……だったことは内緒ですよ。ええ、メッタボンの名誉の為にも。レジーナさんの苦労の為にも……。

つられてはしゃいでたくさん作ったのはお前だろうというツッコミは受け付けておりません。私の脳内でだけひっそり突っ込んだのでおしまいですとも。

とはいえ、今回はお試しのマシュマロなのでオーソドックスなものだけですが、その内フルーツピューレとかを加えたものとかソースを閉じ込めたものとかを作れたら素敵ですよね!

是非メッタボンに頑張ってもらうとしましょう。

私のそんな考えを他所に、プリメラさまはおっかなびっくりといったご様子でマシュマロをスプーンに載せて眺めていらっしゃいます。

まあ形はね、絞り出したのでちょっと不揃いなんですけどね。

バットで作って切った方が良かったかなあと後々反省したんですけど丸くてころっとした感じのマシュマロがやっぱり可愛いと個人的には思うんだよなあ。

まあ紅茶に入れるように小さめのものを選んだのでプリメラさまも一口でお召し上がりになりましたけど、その食感に目を丸くしちゃってまあ。可愛いなあ!

プリメラさまが口の中にあるマシュマロに興奮しているのか、口元を手で押さえて目をキラキラさせているのを見て笑みが隠せません。その様子を見ながら熱い紅茶を淹れ、残りのマシュマロを紅茶に浮かべれば当然熱で溶け始めるそれにまたプリメラさまは釘付けです。ふふふ、ありがとうメッタボン、このプリメラさまの表情見れて私は幸せです。

「よく混ぜるとすべてのマシュマロが溶けますが、形のあるままでお飲みになるのも食感が残っていて楽しいかと。お好きな方でお試しくださいませ」

「……! ……!!」

「普段のミルクティに比べると味わいがまた異なりますし、少しばかり温度は熱いかもしれません。火傷にお気を付け下さいませ」

「うん!」

ああー可愛いですね!

プリメラさまも公務を少しだけ任されるようになって……と言っても今は王太后さまのお仕事に付いていって学ぶという段なのですけれども、各国の要人同士やその家族、友人の関係性だったり為替のレートがどうのっていう情報だったり、そういうのを事前に叩き込んでから社交的な会話をするというレディとしての戦闘方法を学んでいる最中なんです。

勿論、事前知識としてその教育はありましたけれども実践となるとやはり難しく、王太后さまのように機知に富んだやり取りというのはまだまだプリメラさまからすると見て聞いて理解するだけで精一杯のご様子です。

一国の王女ともなると、こうやって経験を積むことも大事なのですね。

王太后さまの影響力から今でも国内外から多くの要人が面会を求めているという事もびっくりですけれども、あの方だとなんだか納得しちゃうよね。

「美味しい……ねえユリア、これディーンさまにも飲んでいただきたいわ!」

「かしこまりました。当日にはもう少し形を整えたものをご用意できるよう、鋭意努力いたします」

タルト・タタンにマシュマロミルクティーですね!

あーうん可愛い。なんか字面だけで可愛い。それを食すのがプリメラさまとディーン・デインさまってだけでもう可愛い。

マシュマロ大きく作って型で抜いたりしてもいいかも?

考えると色々できるからいいですね!

こうやって過ごしていると、普通の日常が戻ってきたようで――違う、これが当たり前だ。

(そうか、ああ、そっかぁ……)

唐突に、理解した。

私は、私の方が【ゲーム】に囚われ過ぎているんじゃないだろうか?

確かに似たような展開、同じような人たちが出てきた。

でも、どうだろう。

この世界は現実だ。何回だってそう思っていたはずなのに。私を含め、たくさんの“ゲームには存在しない、名もなき人々”がいる時点で違うのだとわかっていたはずなのに。

プリメラさまは真っ直ぐに、健やかに成長して。

周囲の人々も、ゲームのシナリオなんて知らない。そして違う未来を歩んでいる。

いや、もしかすればどこかの誰かは同じシナリオを歩んでいるのかもしれないけど。

ただ、似たようなことが続いている。

それだけじゃないのかって、どうして今まで思えなかったんだろう。

怪我もするし、病気もする。

ゲームみたいにセーブしてロードしてなんてできない、当たり前の人生。

「ユリア?」

「はい、なんでございましょうか?」

「どうかしたの?」

「いいえ、少しぼうっとしてしまいました。申し訳ございません」

「そう。……生誕祭まで色々あったものね。あとは新年祭の準備に、ディーンさまとのお茶会だけだから……もう少ししたら、みんなで年越ししようね! メイナとスカーレットは実家に帰っちゃうのが少し残念だけれど……」

「二人も残念がっておりました。来年は、ゆっくり帰省すると申しておりましたのでお許しいただけたらと思いますが」

「勿論よ! わあ、嬉しい」

プリメラさまがにっこり笑う。

……うん、可愛い。

私も、なんだか気持ちが晴れやかだった。