軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「とりあえず、どういたしますの?」

「……待って。スカーレット、ハンス・エドワルドさまはご同行なさってるの?」

「いいえ。確認に来た召使によればミュリエッタ・ウィナーだけのようですわ。約束はないが、レムレッド家三男のお墨付きである平民が王女宮筆頭侍女さまに面会を申し出ているということで面会室の人間も困っているようですの。心当たりがないか先程問い合わせが来まして、その人物の特徴を聞いたところミュリエッタ・ウィナーだと判断いたしました」

「なるほど」

「ただ、彼の名を出して面会を申し込んできたという点が問題ですわね。ですから困っておりますの。万が一ハンスが本当にあの娘とユリアさまの間を取り持とうとしているならば、侯爵家三男の申し出を却下するということになってしまいますし……いくら、証拠の品がなかったとしても」

「そうね……」

貴族の縦社会の面倒なところがスカーレットも気になったんだね、良かった良かったちゃんと成長してるよ……!!

実際問題、ハンス・エドワルドさまが手を貸したのかどうか。

何か署名とかがあるってんならまだしもないとなると難しい。ただの仲介だからとそういうのを持たせないケースもないわけじゃないし。

でも普通はそういうのはない。

特にアポなしとかで紹介状なしとかはない。

何よりミュリエッタさんが現時点では平民だという事が大きいんだよね。

平民を紹介するのにわざわざ署名まで持たせないってことがないわけじゃない。

ミュリエッタさんに対してハンスさんが甘そうだっていうのはもう多分結構有名になっている気がするし……城内案内して歩いてたくらいだからね……。

とはいえさあ……あの子はあの子で昨日の今日だよ!? 何の用があるのさ!!

まさか昨日の手紙に「待ちきれなくて返事をいただきに来ちゃいました☆」とかな要らない行動力を発揮したとかなの?

「……わかりました、面会室に向かいましょう。スカーレットは召使にそのことを伝えた後、悪いのだけれどハンス・エドワルドさまを訪ねて騎士宿舎へ行ってくれるかしら。事実確認をして欲しいの。勿論私もミュリエッタさんに話を聞いてみるけれど」

「わかりましたわ! それではすぐにでも」

優雅なお辞儀を見せて、スカーレットはさっさと出て行ったけど……うぅん、恋心は決着がついたとしても、幼馴染だものね、きっと心配なんだろうなあ。

「ええと……アルダール、あの。そういうことだから申し訳ないけれど朝ごはんはまたの機会にしてもいいかしら」

「一緒に行くよ。さっさと面会を終わらせて食堂に行こう」

「え」

「なんだか碌な面会理由じゃなさそうだからね、ユリア一人だと大変かもしれないだろう?」

「それは……」

否定できない!!

いや、でも……ミュリエッタさんの目的が、アルダールだとしたら?

私へ文句をつけるとか別れてくれって言ってくるとか、まさかのヒロインの超能力的なアレとかソレで「貴女も転生者なんでしょ? あたしは何でも知ってるの!」的な電波な事とかあるかもしれないんだけど……アルダールが一緒に居たらそういうのが出せないんじゃないかと。

いや、待つんだユリア!

これは渡りに船ってやつじゃないのかな。向こうだって多分色々手探り状態だと思えば奇襲を受けて今動揺しているけど、アルダールが一緒ということでカウンターパンチ決めれるってことでもあるじゃん!?

そもそもヒロインのこれからの生活リズムを考えると、アルダールと会える可能性は限りなく低い!

ハンス・エドワルドさんを通じて会う……というのもあるだろうけど、仕事があるんだからね!!

だからこれを機にしっかり恋人がいるんだってわかってもらえばいいんじゃないかな!?

奪えばいいじゃんってタイプだったら私としてはどう対応していいのか正直分かんないけど!

「……ではアルダールさま、よろしくお願いします」

「うん。……呼び方」

「あっ」

「まあ、おいおい……ね。ちゃんと呼んでくれたことだし」

そうですよ、染み付いてますからね。

異性を呼び捨てとか前世の、それも小学生時代くらいまでですからね!(多分)

あれっ?

うん? いや、なにか忘れている気が。

ううん。なんだろう。

朝起きて顔を洗って髪を梳いて、着替えて今日の予定を考えながら朝ごはんにしようとしたら、アルダールが来て今に至るんだけど何を忘れて……。

……。

……。

「アルダールさま、外に出ているか向こうを向いていてください!」

「え? どうかしたのかい?」

「け、化粧をまるでしておりませんでした……! お見苦しい姿を……!!」

そうだよ、すっぴんだったよ!!

そりゃそうだよね、出かける予定もなけりゃ今日は誰にも会わないかも位の勢いでほらよくあるでしょ!?

知り合いに会いそうな買い物とかする時にちょっとだけすればいいかーっていうイイトシした女の気持ちですよ。私だけじゃないはずだ。

いや、うん、言い訳を許されるなら朝ごはん食べたら少しくらいはするつもりだったよ?

いつもだって変わんないって?

一応アイシャドウも口紅も塗ってんだぞこらあああああ!

ただほら、メイナがしてくれたみたいなメイク詐欺状態にできるほどの技術はないというだけの話でね?

昔はネットでよくメイク講座とか見たんだけどどうにも上手にできなくてね? 寧ろ特殊メイク失敗していったかな? くらいのツッコミを自分で入れて化粧落とし用のコットンとか大量に消費したりとかの苦い思い出がだね?

と に か く ! !

いやまあすっぴんも化粧した顔も結局地味なのは変わらないって言われそうですが化粧は心の装備でもありますからね。ミュリエッタさんに会う前に……というか、あああ、なんてことでしょう!

アルダールにすっぴん見られた……だと……!!

どうしよう、ものすごく朝はいい気分だったのに今はものすごくダメージを受けています。

すっぴん……すっぴん見られた……いや、前世の化粧品のレベルがものすごかっただけでこちらはそこまで化粧詐欺的なことはないわけじゃないけどあんまりないわけで、だからといってまあ私もそこまで変化があるわけじゃないけどそこはほら乙女ですからね乙女なんですよこれでも。いくら世間一般の常識から考えると行き遅れに片足突っ込んでようが知り合いがもう子持ちで当たり前なんて状態だとしてもそれとこれとは違うっていうかなんというか。

「……ふっ……あ、いや、」

「……今、笑いませんでした……?」

背を向けていたけどはっきり聞こえた。

肩越しに見れば、口元を押さえて震えるアルダールの姿。

くっ……間違いなく、笑ってらっしゃる……!!

「笑ってるじゃありませんか!!」

「ああ、いや、うん。馬鹿にしてるとかじゃないよ、ただ可愛いなあと思って!」

「どこがですか!」

「そういうところが。……とはいえ、まあ、化粧をする女性をじっと見ている……なんていうのも無作法だからね、私は廊下で待っているよ」

「アルダールさま!」

笑った顔のままサッと外に出て行きましたね!?

くっ……いや確かに挙動不審だったし大して変わらないのに乙女なところをお見せしてしまいましたけどね……!?

なんだろう、なんか……こう……。

くぅやぁしいぃぃぃぃ!!