軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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スカーレットには移動しながら「主人の意向を察して行動できるのが大事」という話をさせていただきましたよ。あくまで穏やかに。

折角やる気を出したスカーレットがまたムクれてへそを曲げたら大変ですからね。

彼女自身、貴族位にあるのですから自分が呼びつけたのにいつまでも来なかったら気分を害するだろうということを話したらあっという間に理解しました。というか何故思い至らなかった。

いくらプリメラさまがお優しいとはいえ、やっぱり主が呼んでいたよってことは一番最初に報告して然るべきだと思うんですよね、私は。

とはいえ、次気をつけてくれれば……やる気に満ちているけどどっかズレてるだけだからね、矯正したらなんとかなるでしょうと信じてますよ。信じてますからね!

「プリメラさま、ユリアです。お待たせいたしました、お呼びと聞きましたが……」

「あっ、ユリア! うん、ごめんね。忙しかった?」

「いいえ、問題ございません」

何を措いても! 私個人的にも! プリメラさまが一番ですからね!

いやあ、筆頭侍女とかそういう立場じゃなくてもプリメラさまが呼んでるって聞けば行きますとも。にこにこしてるから何か問題があったってわけじゃなさそうで一安心だ。

「実はね、生誕祭の後、新年祭を前にディーン・デインさまをお招きしても良い日をお父さまがご連絡くださったの。今回はね、王女宮にお招きってことで日付の調整があったんですって……それでね、その準備をユリアにお願いしたいと思って」

「勿論喜んで準備いたします」

「ありがとう、嬉しいわ!」

ぱあっと笑顔をさらに笑顔にしちゃうプリメラさま、ああああ可愛いなあ!

そういえばディーン・デインさまとゆっくりお話しする機会なんてそうそうないものね。前回の園遊会だってお話はできただろうけど、周囲に人がたくさんいたしあんな事件もあったからバタバタしちゃったし……生誕祭のパーティで踊ったりもできるだろうけど、ゆっくりは……無理だろうしね。

それにしても王女宮にお招きするってことはもう、本格的にディーン・デインさまが婚約者内定ですね、おめでたいです。まだ反古の可能性がないとは申しませんが、プリメラさまの個人的なお部屋が存在する王女宮というプライベート空間にお招きすることを許可なされたということは、国王陛下公認ってことなんですよ! まあ長居は許されないでしょうが。きっと国王陛下はプリメラさまがディーン・デインさまと仲が良いことにも嫉妬しておいででしょうからね……ふふ、ざまぁ……じゃなかった、娘を持つ父親は大変ですねぇ。

正式な発表は少なくともディーン・デインさまが社交界デビューしてバウム家の跡取りお披露目というのと同時でしょうね。“皆が知っている”ことと、“公表する”ことというのはまた別物ですからね。面倒くさいなあ!

おっと本音がダダ漏れた。

「ご希望の茶菓子などございますか?」

「そうねえ、タルト・タタンは焼いてもらうとして……きっと外は寒いから部屋の中になっちゃうわね、きっとディーン・デインさまも寒い思いをしてこちらに来られると思うから、温かい飲み物とそれに合った軽いお菓子とかどうかしら。何かお勧めあるかしら?」

「ではタルト・タタンの他に林檎チップスと、アップルジンジャーティーはいかがでしょうか?」

「あっ、わたしアップルジンジャーティー好きよ! ユリアが淹れてくれるそれを飲むととってもあったまるもの。そうね、それがいいわ!」

「かしこまりました」

「あ、でも……ディーン・デインさまはアップルジンジャーティー、お好きかしら……?」

「後程、確認しておきます」

「うん、お願い!」

まあプリメラさまにオススメされたらディーン・デインさま、すぐに好きになってくれそうですけど。

あれ、これで好き嫌い克服とかできたら面白くない? とかちょっと思った。いやいや、そんな単純おバカだとは思っておりませんよ! 恋する気持ちっていうのはすごいパゥワァを発揮すると思っているからですからね! いえ、はい。反省します!!

アルダールにも淹れてあげようかな……ああでも、この間のティーロワイヤルを気に入ったみたいだったからなあ。

とにかく、後で聞いてみましょう。

「それと、例の男爵令嬢と今度会うんですってね。何かあったの?」

「はい、そうですが……どこでその話を?」

「ビアンカ先生よ。心配なさっていたわ!」

「さようですか……大したことではございません。プリメラさまがお気になさるようなことではありませんのでご安心ください」

「そう? ……なにかあったら、言ってね」

「はい、ありがとうございます」

私のことを心底心配そうに見てくるこの子、本当に優しくってもう……癒されるわあ!

こういう時、ものっすごく子育て成功した瞬間ってのを感じますよ。

私一人の功績じゃないし、プリメラさま本人の資質ってのが大きいんだろうけど天才で可愛くて綺麗で優しいとかもう完璧少女でしょ!? どうよ!!

自慢をいくらしてもしてもし足りないってくらいのうちの姫さまですからね!!

まあ、こうやって心配してくれる優しさは嬉しいですがあんまり心配をかけちゃだめよね。

まだまだ十一歳の女の子の負担になっちゃいけないでしょう。

「何かありましたら、必ず相談させていただきますから。あまりご心配せず、ディーン・デインさまのことをお考えになってくださいね」

「もう! ユリアったら」

少女らしい恥じらい。出会いはお見合いだし、向こうの一方的な一目惚れだったけど順調に育まれてるその関係は見ていてこっちが幸せになれるからいいよねー。

プリメラさまには幸せになってもらいたいもの。

ご側室さまがご存命だったら、きっとそう言ってくださると思うの。私自身もそう思ってる。

自由恋愛なんて王族はなかなかできるものじゃないって言われてるけど、後からでも愛は育むことができる……なんてどこかのロマンス小説みたいな言い回しになっちゃうけどね。

でも、それでもいいと思うんだ。

幸せの形なんて、決まってなくてもいいじゃない。

「ちなみにディーン・デインさまはどの時間帯にお越しになるご予定か、もうお決まりでしょうか?」

「いいえ。できたらお昼前から来ていただいて、一緒にランチをとって、ティータイムも楽しんで……ってしたいなあって思ってるの。お父さまはその辺りのことは自由にしていいって仰ってくださったのだけれど、ディーン・デインさまのご都合はどうかしらね……わたし我儘って思われちゃうかなあ」

「でしたらプリメラさま、お手紙でお伺いしてはいかがですか? いつからいつまで、と時間を書いてしまいますとあちらも断るのが難しいかもしれませんがいつ頃からならば都合が良いのか確認したいという内容でしたらきちんとお答えくださるのではないかと思いますが」

「そうね! そうする!!」

「すぐにお書きになりますか?」

「うん。今すぐ書くわ」

「かしこまりました。メイナ、便箋セットを用意して」

「はい、ただいま」

いくら婚約者とはいえ、力関係はプリメラさまの方が絶対的に上だからね。

ディーン・デインさまのことだからプリメラさまのお誘いを断るとはまったくもって思えないけど、そういう気遣いができる女の子ってことでより好感度を上げてよそ見をする余裕をなくしていけば……ふふふアレ、私ちょっと性格悪いかな? 気のせいだな!

一生懸命言葉を選んでディーン・デインさまに向けてのお手紙を書くプリメラさまのお姿は、ひたむきな年頃の少女そのもので。

私もメイナも、スカーレットも。セバスチャンさんも。

皆で、思わずほっこりしたのは、内緒のハナシ。