軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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(深夜……男女が二人きり……しかも恋人同士……これって、これって……!!)

唐突に気が付いた現実に、私の心臓が一気に跳ねました。

え、今更だって? いやいや、さっきまでわかったつもりだったんですよ。ただ部屋に来ておしゃべりしようねってお話だったんですよね。でもほらなんでしょうね、なんか色々考えちゃうじゃないですか!

あああああ、『深夜になら』なんてなんで言っちゃったんでしょう私! まるで“誘って”るみたいじゃないですか!! いや、抱きしめられるだけで顔を真っ赤にする私がそんなアダルティなお誘いできるとはアルダールも思ってないでしょう。でもほら、前回キスだってしそびれたし? 今なら邪魔者もいないし?

えっと……えっと……こういう状況をあれですよ! 据え膳ってやつですよ!! あれ、女性が使う言葉じゃない気がする。いやでもどうなんだろう?

「ユリア」

「はっ、はい!?」

「この紅茶、美味しいね。おかわり貰ってもいいかな?」

「はい、も、勿論!!」

ですよねー!!

ここのところ甘い空気が増していた気がするので過剰反応しちゃいましたよ!! はぁ……こういう所がダメなんですって。女としてどうなのよもう……。可愛くもうちょっとさぁ……いや何ができるのかなコレ。私が背伸びしたところで私だよなぁ。

ふと気づいたけど……名前呼びチャレンジのチャンスじゃないかこれ!!

周りに誰もいないし誰かが来る気配もない! おおっとビッグチャンス到来ですよ。神は私に味方した!?

「はい、紅茶のおかわりと、お砂糖です」

「ありがとう」

「あの……お茶請けに、クッキーとビスコッティがあるけどどっちが良いですか?」

「じゃあビスコッティで。なんだか美味しいものを強請りに来てしまったみたいだね」

くすくす笑うアルダールが砂糖に灯る青い灯を眺めているのはなんとなく、綺麗だ。だって青い炎を見るアルダールの目が照らされて、彼の青い目が明るい青になったみたいで……って覗き込むように見たら誰だって不審者ですわぁ!!

「ユリアも座ったらどうだい?」

「ア、ハイ」

「そっちじゃなくて」

「エッ」

どうしよう、ソファだから複数人座れるのはわかるよ。

私が一旦座ったのは向かいの席だよ。でも違う、って言われてポンポン手でアルダールが示しているのは彼の隣。そりゃカタコトにもなるでしょう?

思わず固まったけど、彼はにっこり笑ってる。あ、これ有無を言わさないやつですねわかります。長年の勘です、上司が決して部下にNOを言わせない時の笑顔に似ております!

まあ、この場合上司と部下ではないんですけど。

「親父殿から話を聞いたけど、例の彼女がきみに謝罪をしたいと言い出したんだって?」

「え、ああ……ミュリエッタさんのことですよね? ええ、はい。統括侍女さまにお立会いいただくことを条件にお会いすることにいたしました」

「……そうか」

ちょっと眉根を寄せたアルダールはイケメンですねぇ……思わず見惚れてため息が出そうですよ。

とはいえ、内容的には彼はあんまり歓迎してない雰囲気ですね。ミュリエッタさんに対してどう思っているのかで変わるとは思いますが、私のことを心配して……だったらいいなあ。

逆にこれがミュリエッタさんのことを案じてとかだったら私立ち直れないかもしれない。

いやいや、勝手にそんなこと考えるのは私の悪い癖だ!

「あの、紅茶が冷めてしまいましたから淹れ直しましょうか?」

「まったく……今日はもう仕事も終わったろう? 筆頭侍女はおしまいだよ」

「わぁ!」

とりあえず隣に座った途端にため息と共に眼鏡が取られてしまいました!

わあー……私それがないとですね、視力が悪いわけじゃないですけどね、いやきっとアルダールはディーン・デインさまから聞いて知っていると思うけどね、要するにだ、今でさえ直視できないイケメンな顔面をお持ちのアルダールを直視できなくなりますけど!!

思いっきり不自然なほどに俯いてしまいましたよ。はぁーこれどうしたもんだ!

「ほら、顔上げて」

「いや……あの、無理、無理ですから」

「無理じゃない」

「わ、私、ほら……無理ですって!」

「まったく……強情だな」

どっちがだ!

いや私だな!!

まあアルダールの意見もわかるんだよね! 恋人がいくら内気だと理解してても未だに顔も真っ直ぐ見れないとかどんだけだよって思うよね、ましてや今密室に二人っきりとかなのにこの拒否っぷり、ムードもへったくれもないよねえ! わかってますよ、わかってますとも!!

だが考えてもみて欲しい。

前世プラス今世の、今までの恋愛経験皆無っぷり!

しかも平々凡々、むしろこの世界じゃ流行の顔じゃないからって不細工近い扱い! それを受け入れちゃって諦めてきた自分というこの時間を今更「カッコいい彼氏ができたアタシ、実は結構イケてんじゃん!?」っていきなり開き直れるかってんですよ!

どうする。どうする私。

「……どうせなら、」

「わあ!?」

「うーん? これどうなってるんだろう?」

「いた、痛い、アルダールさま! 痛いです!!」

あれなんだこれ、ちょっと雰囲気が思っていたのと違いますよ!

どうやらヘッドドレスとかヘアピンとか外したかったみたいなんだけど引っかかって痛いのなんのって……結局ボサボサになったからほどいたけど、あーもう、案外不器用なのかなぁ?

「ごめん、ユリア。大丈夫かい?」

「もう……いきなり取ろうとかしないでください!」

「反省します」

「本当にお願いしますね、これ備品なんですし」

「ええ、注意するのはそこなのかい?」

呆れた声のアルダールに、まあ……そりゃ髪の毛ボサボサにされたとか勝手に眼鏡取ったりとか文句言うべきかなあとは思うけど。でもそれも私があの体たらくだからってのもあるのを自分でわかってるからなあ。

ちょっと考えてから、意を決して顔を上げる。

うわああああああイケメンの顔が近すぎる! いや、でもここでぐっと耐えてみせるよ私!!

女を見せる時ですよ、ユリア……!!

「あっ……アルダール……さま!」

「……うん」

くっ、相変わらずの呼び捨てにしようとして煮え切らずさま付けしてしまいましたよ……。アルダールも苦笑してるじゃありませんか! どうしよう、ここからどう挽回すればいいですかね……?

「あ、アルダールさま、ですから。ちょ、ちょっとのことくらいは……その、別に。大丈夫、です、よ……?」

「……」

「何か言ってくださいよ! 恥ずかしいじゃないですか……」

なんでそこで黙るかなあ、これでも結構勇気出したのに!

目を丸くしてもう……。

「……いや、その。思った以上に威力があるなあと思って」

「威力?」

「うん。眼鏡をはずして、髪も下ろしてる姿なんてダンスパーティ以来じゃないか」

「ああ、そう……ですね」

そういやそうか。

自覚する前のデートは普段の髪型に眼鏡もつけてったし……一応お洒落はしたつもりだけどね。

新年祭の時は気をつけよう……。あ、でも、これは良い雰囲気では?

「でもあの時は化粧もしていたし、着飾ってもいた。私たちの距離感も、まだ友人だっただろう?」

「ええ、そうですね」

「でも今は違う」

うん。あの時とは確かに違う。でもきっとあの頃から意識そのものはしてたんじゃないかなと思うんだ、私自身。自分が気が付かなかっただけで。鈍感だとかそういうんじゃなくてだね……ほらあの時は正直色んなことがあり過ぎていっぱいいっぱいだったんだよ。わかるでしょ!?

やんわり、頬を撫でる手つきは凄く優しい。

私を見る目が、とても優しい。

うん、あの……色々疑ってごめんなさいってこういう時は素直に思うよね!

「あ、の。アルダール、さま」

「うん?」

「……、あの、ですね」

今、なら。ほらね、私だってイイトシしてますし、耳年増っていうかあれ前世からの記憶があるからこの場合加算すると相当年増ですかね。いやでも恋愛初心者ですからしてこの場合は赤ん坊レベルというかなんというか。

とりあえず、ええと、こういう時の行動ってどうしたら……!

思わず脳裏を過るのは今までプレイしたであろうゲームのワンシーンとかあんまり助けにならない感じでしたけどね! 私のバカ!

脳みそをフル稼働した結果、私の頬に添えられたアルダールの手に自分の手を添えて、ちょっと甘えてみました。予想もしていなかった私の行動にアルダールの方が戸惑う姿にはようやく勝てたと思いました……。

でもこの後、アルダールに「いくら信用してくれているとわかっていても自分の自制心を試すようなことはしないで欲しい」とお説教されました。

理不尽である。