軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

106

現状を把握しよう!

まず、ミュリエッタ。今のところ『貴族教育』が始まったばかりで貴族社会における常識は右も左もわからないと言ったところ。王城内に味方としてエーレンさんとハンスさんという布石がある。

彼女の父親に関してはよくわからない。アルダール曰く、強そう(物理)ってことくらいか。

あの【ゲーム】の合計四人いる攻略者とプリメラさまの関係はわかりやすい。

王太子殿下はご兄妹だから。

ディーン・デインさまは婚約者だから。

それ以外の二人のストーリーには名前が出てくるだけで、他にライバルキャラっぽいのが学園に一人出てくる程度。でも『プリメラ』ほど目立つこともないし嫌味を言ってくるっていうかテストの点数的なのでイベントの有無が決まる程度なので実質プリメラさまと私の生活に関係ないから割愛だな。

(でも王太子殿下は最近国王陛下ばりにプリメラさまの事可愛いって公言してるらしいって聞いたし、ディーン・デインさまもますます恋する少年って感じだし)

ってことはヒロインの働きかけ方次第とはいえ、そうそう築き上げた関係は揺るがないはず。

ヒロインが登場したことによって物語補正が発生するかとかも考えたけど、それなら“ミュリエッタが生まれた”時に補正効果が起こっててもいいと思うんだよね。それにミュリエッタ自身が行動を起こしている節もあることから、補正効果なんてものはないと思うし。

そして、他の攻略対象者……豪商の息子と暗殺者。

一応、豪商の息子、つまりリジル商会の跡取り息子のエンディングは見たけどスチル見逃しがあったんだよね、だからイベントは正直全部はわからない。『プリメラ』を可愛いと発言した程度にしか彼のストーリーではプリメラさまは関わってなかったから大丈夫だと思うんだけど。

現在の生活でも向こうから関わってくることもないしね。リジル商会の会頭ならたまに顔出すけど。あれはただお菓子貰いに来ている気がしないでもない。

暗殺者に至ってはやってないのでまったく未知数。ルートの開始設定は、夜の城下町だった気がするけど……だとすると私出歩かないからなあ、まず関係ないな。

あとゲームでわかっているのは、“隠しキャラがいる”ってことなんだよなぁ。

出てくる条件がこれまた面倒で、攻略対象者の裏と表を全クリア及びスチル全制覇だったんだよなぁ……。

だから当然私は隠しキャラが誰かわからない。そうなると隠しキャラとプリメラさまの関係がわからない。もしかしたらまったく関係ない可能性もあるし、大穴で国王陛下かもしれないじゃない?

まあ順当に考えたら王弟殿下じゃないかなと踏んでるけど。ほらイケメンだしそこそこ若いしオジサマ狙いとかの路線ありそうじゃない。

結局向こうがどう思っているのか、何が狙いなのか、それがわからないってのが怖いんだよなあ。

ああ前世の私がぽっくりいってさえいなければ! いやそれだとプリメラさまと出会ったり今みたいにリア充生活ができていない可能性もあるのか、むむむ……悩ましい!

「ユリア? どうしたの、難しい顔をして……なにかあった?」

「いえ、なんでもございません。ご心配をおかけいたしました」

ほらあああああぁぁ!

私がちょっとこうやって考えこんじゃっただけでこんなにも心配してくれる可愛い女の子だものー!!

思わず笑顔にもなっちゃうわー!

「……実は、先程挨拶をした、ミュリエッタ・ウィナー嬢なのですが……近衛騎士のハンス・エドワルドさまという方が親しくしてくださったそうで挨拶にこられておいででした。ですが貴族としての作法がまだわからないことから、あらぬ誤解を受けていないか老婆心が出てしまいまして」

「そうなの? ……でもこれから貴族教育を受けるのだから、正式な叙勲からしばらくはきっと皆おおらかな目で見てくれると思うわ」

「そうですね、私もそのように思いました。余計な真似をしてしまう前で良かったです」

にこにこ微笑むプリメラさまを前にしたら、彼女だって悪役として立ちはだかるなんて思わないでしょう。そうそう、杞憂杞憂!

ちょっと後ろの方でスカーレットの表情がきつくなった気がしますが、気のせいですね!!

今のプリメラさまならば、王太子殿下がミュリエッタと恋をしようとも応援してあげるに違いありません。もしかしたら良い友人関係にだってなるかもしれませんよね! ……王女と一代貴族の娘が友人関係っていうのはそれはそれで色んな所からやっかみ凄そうですけど。

ミュリエッタが王太子殿下狙いで真っ当に努力するんなら周囲の貴族だって養女に迎えて……って政治的配慮をしてくれるに違いありません。なんたって、英雄を囲えるチャンスなんて滅多にない事ですからね。立身出世は本人次第でしょう。

これで彼女の狙いがディーン・デインさまとなるとまた話が変わってきますけど……ゲームと違って相思相愛ですし王家と宮廷伯ならば結びつきも考えて入る余地はないでしょう。

でも王太子殿下狙いよりは現実味があるというかなんというか……。

正直宮廷伯という立場は人によって魅力的かなとは思いますが、前世の私とミュリエッタが同じ世界からの出身と考えるならば、『宮廷伯とはなんぞや』と思うんじゃないでしょうか。要するに伯爵でしょ、の一括りにしちゃっててもおかしくない。

そりゃそうですねー!! 王政じゃない国で生まれ育ってファンタジー小説とかで時々耳にするその地位、普通の伯爵と何が違うの? くらいが一般的だと思います。

ちょっと伯爵の中でも地位が高いんだろうなあとかそういう感じに受け取ると思いますよ。豪商の息子というのも魅力的ですが、貴族位に固執するなら王太子狙いよりはこちらの方が妥当……なのかな?

あくまで推測ですけどね。

暗殺者を射止めるというのは現実で一番ないと思うのでそちらは考えなくても良いかなと思うんだけど、どうかな? 堅実ならディーン・デインさまかリジル商会の息子かどっちか狙い……だけど王城にネットワーク作ろうとしているならディーン・デインさま狙いと考えるべきなのか。

どうなんだ!? ああー悩ましい!!

隠しキャラが誰かわからないから、その隠しキャラ狙いという可能性もあるんだろうけど……本人に聞くわけにもいかないし、どうすればプリメラさまの為になるんだろう。やっぱり今は何もしないで侍女として一生懸命に働くのが一番ですかね。

「そういえばプリメラさま、生誕祭のパーティではドレスは変更なしでよろしいですか」

「ええ! 本当は、あの儀式の白いドレスをディーン・デインさまにも見ていただきたかったなあ……」

「それは少々難しいかと……遠目にはご覧になると思いますよ」

「そうよね、そうだといいなあ! パーティはおめかししなくっちゃね」

「かしこまりました」

可愛いなあ可愛いなあ、当日は気合入れますからね、お化粧とかでディーン・デインさまを惚れ直させちゃいましょうね!

この愛らしくて優しいプリメラさまを見ればミュリエッタだって『意地悪でデブスの悪役令嬢』だなんてまったくわからないでしょうね……驚きすぎて過呼吸にならないといいですけど。

「そういえば皆はいつ頃帰省するの? 新年祭は家族と迎える予定なんでしょ?」

「はい、メイナとスカーレットは時期をずらし帰省する予定でございます。私とセバスチャンが変わらず交代で詰めますのでご安心ください」

「そうなのね。二人とも、まだちょっと先の事だけど気をつけて帰って家族と仲良く過ごしてきてね!」

「「ありがとうございます」」

プリメラさまのお言葉に、二人が頭を下げるのももうすっかり見慣れた光景だ。

一時期はスカーレットの事も不安だったけど今じゃあ落ち着いたものよねえ。時々高飛車な発言が飛び出す所はなかなか直らないけれど、やっぱり根が真面目だしライバル的な立ち位置にメイナがいるっていうのも良かったんだろうなあ。

まだちょいちょい二人で時々だけど取っ組み合いの喧嘩するのは本当に止めてもらいたいけど。本気じゃないと信じてるよ! プリメラさまが見てないところならいいってものじゃないからね!

でも喧嘩するほど仲が良いとも言うから、良い友人になったともとれるかな。

そう思うと統括侍女さまはこうなることを見越して私の所に彼女を寄越したのかしらと思ってしまうけど……いやいや、流石にそれはないだろう。

いくら統括侍女さまでも……いやでもあの方だし……深読みしすぎると熱出そう。

まあわからないけど、なんとなく上手くいってるんだからいいか。

「ユリアさん、また真面目な顔をして適当なことを考えておりませんかな?」

「……いやですねセバスチャンさん、そのような事はありませんよ。生誕祭のパーティが 恙(つつが) なく執り行われれば良いなと思っていただけです」

「ならばよろしいですがな」

くっ……付き合いが長いだけにこの老執事ったら私の考えてることまでお見通しとか!

まあ間違っちゃいないのがなんとも悲しいかな!!

「とはいえ、生誕祭が 恙(つつが) なく……というのは確かに」

「そうですね」

「先の園遊会の事もありますしな」

そっと私とセバスチャンさんだけで聞こえるように、声を落とす。

そうだね、あれはエーレンさんが直接的でないにしろかつて暮らしていた土地が関わっていた……となると、同様にそこにいたというミュリエッタとその父親にも、疑惑の目が向けられていたっておかしな話じゃない。

そこのところはお偉いさんが関与しているんだろうけどね。

そういう不安はあるんだよなー。流石に生誕祭という大きすぎるイベントを狙ってなんか来ないだろうと思うけど、園遊会だってそこそこ大きなイベントだったからね。

まあ、つい最近そんなことがあったんだから警備も厳重、持ち込みなんてもってのほか、ボディチェックその他も今までにない規模になると思う。

だから私だって安心してアルダールと生誕祭の夜出かけようなんて約束したくらいだし……それに、前回のことは王家によって“仕組まれた”面がどうしてもあると思うし。勿論それを言葉になんてしませんよ! そんなことしたら私だって立場が危ういですから。

そういう所は割り切っておかないと……国を憂うことがイコールで清廉な行動だけではない、ということくらい私だってわかってますから。

後わかっているのは、プリメラさまが笑顔でいてくだされば。

それが一番今、私にとって大事な事なんです。