軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

#557 「……また随分なイロモノを」

「なんでもできるな、セレナは」

「ヒロに言われると嫌味に聞こえるんですが……?」

一通りのテストを終えたセレナがジト目を向けてくる。いや、そりゃ俺は傭兵に求められるような仕事は大体できるけどもさ。電子戦と一般常識以外は多分大体できる。一応オペレーターとしても働けるし、戦利品の売買とか補給物資の管理とかもまぁできる。

だが、セレナは電子戦も一般常識も何もかも標準以上の出来だ。白兵戦は一級品だし、船を使った航宙戦も駆け出しのアイアンランクどころかブロンズランクの中堅並みにこなす。電子戦もある程度こなせるし、オペレーターやサブパイロットもやれるし、補給品の管理や戦利品の売却もそつなくこなすというか、滅茶苦茶上手くやる。

しかも、全項目で伸びしろがまだまだあるというか、経験が不足しているだって感じだ。慣れればもっと上手くやるに違いない。

「万能過ぎませんか……?」

「地力が違うわね……まだ負けないけど」

ミミが軽く絶望している。エルマは余裕ぶっているが焦ってるな。いやまぁ、セレナは身体にも脳にも高度な強化を施している正真正銘の上級貴族かつ高級軍人だから、強化の度合いや身体に入れているインプラントの性能が段違いだというのもあると思うが。

エルマも身体強化は受けているそうだが、子爵家令嬢が受ける相応のもので、当主や継嗣に施されるような脳の強化は受けていないという話だし、軍用レベルの強化を追加で施したというわけでもないようだから、基本的な身体性能の面でセレナに及ばないのは当然と言えば当然なのだ。

「そもそもセレナに近接戦闘で勝てる兄さんがおかしいねん」

「未強化の一般人が上級貴族になにか一つでも勝てる部分があるのがおかしいんだよね。お兄さんは一つどころじゃないからとてもおかしいんですよ」

「とてもおかしいとか言うのやめない?」

人のことをおかしいとか言ってくるドワーフ姉妹に抗議しておく。俺とほぼタメの二人からするとセレナは年下ということになるので、二人からセレナを呼ぶ時は俺と同じよにように呼び捨てということになったようだ。

最初はセレナ姐さんと呼ぼうとしていたのだが、年上に姐さん呼びされるのは勘弁してくださいとセレナに言われていた。セレナにしてみればそりゃそうかという感じではある。

「とても頼もしいですね、我が君」

「クギくんは余裕だねぇ……しかし、流石は上級貴族というかなんというか。かなり強化してるねぇ。そこまでの強化を施すとなると、専用のもっと高度な設備が要るなぁ」

「……あまり身体を弄り回すのはやめたほうが良いと思うけどね」

クギは単純に優秀な仲間が増えると喜んでいるようだ。本当に大物だと思う。ショーコ先生はセレナの強化技術に感心しているようだが、ネーヴェはあまり身体強化に良い印象を受けていないようだな。彼女の今までの経験を思えばそれも当然かもしれないが。

「しかしブロンズランクからですか。もう少し上手く航宙戦をやれればシルバーから行けましたかね?」

セレナが自分の小型情報端末に表示されているブロンズランクの傭兵IDを見ながら唇を尖らせている。軍人として上を目指していただけあってこう、上昇志向が強いな、セレナは。

「俺は最初登録した時にゴールド昇格用のプログラムも余裕でクリアしたけど、それでもブロンズからだったな。確かいくら優秀でも実績が無いとランクは上げられないとかなんとか言ってたぞ」

「ヒロもブロンズからだったんですか? なら良いです」

俺と同じと聞いてセレナが急に機嫌を良くする。可愛いな、こいつめ。

「それで、私向けの船に関して腹案があるという話でしたよね」

「ああ、あんまり一般的な船じゃないんだがな。所謂ドローン空母ってやつだ」

「……また随分なイロモノを」

ドローン空母と聞いたエルマが眉間に皺を寄せる。いや、確かに色物枠といえばそうなんだが、セレナには合うと思うんだよな。

「航宙戦用の戦闘ドローンを多数展開して手数を増やすタイプの船だな。一番小さいサイズでも中型艦クラスになるが、そのサイズで大体四機から六機の航宙戦闘ドローンを展開して戦う。戦闘ドローンの指揮が手間でな。使いこなせば強いんだが、使いこなせないとドローンが各個撃破されて費用は嵩むわ戦力としても微妙だわでなかなか扱いが難しいんだ、これが」

航宙戦闘ドローンと本体の武装の組み合わせ次第でかなり幅広い戦術が取れるから、使いこなすことさえできれば強いんだよな。俺は操作が忙しすぎてどうしても使う気になれなかったが。

「初心者が使いこなすには難しい船なのでは?」

「それは勿論そうなんだが、セレナなら使いこなせると思うんだよな。ウィンダス星系なら扱ってるメーカーが幾つかあると思うから、後でデータを取り寄せてみよう。シミュレーターで実際に使ってみて、合うかどうか試してみれば良い」

「うーん……ヒロがそう言うなら試してみましょうか」

俺に勧められて乗り気になったのか、少し考え込んだ後にセレナが頷く。

セレナがドローン空母を気に入ったとして、問題はその購入資金をどうするかなんだが。無論、俺が出しても良いんだが、プレゼントとしては高価過ぎるモノではあるからなぁ。セレナに数千万エネルの船をポンとプレゼントして、他の子達には何もなしってわけにはいかないだろう。

まぁ、傭兵団としてそれでより稼げるようになるというなら皆からも文句は出ないかもしれないが。そのあたりのバランスがなぁ。実際に購入するとなった際にはメイに相談してみるしかないか。