軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

#053 事態収束?

「イエエェェェェェッ! レッツロォォォォォック!」

スプリットモードで生白い化物どもの群れに致命的な光線のシャワーをお見舞いしてやる。発射から着弾まではまさに一瞬だ。それはそうだろう、文字通り光速で着弾するのだから。

本来、高出力のレーザーが対象に与える主なダメージソースは爆発による衝撃力のはずである。超高温のレーザーを被弾した対象の表面が急激に蒸発し、爆発してダメージを与えるのだ。

しかし、ステラオンラインにおける高出力レーザー兵器というものはそういった原理でダメージを与えることはなく、対象を貫き、灰にする。俺の知っている光学兵器の挙動と違う。

「まぁ、敵が倒せれば何でも良いんだけど不思議だよなぁ」

もしかしたら俺の知るレーザー兵器とは原理からして違うのかもしれない。そんなことを考えなながら迫りくる白い怪物達を掃討する。

『何が?』

「いやなんでも。しかしなんだろうね、こいつらは。こういうことってよくあるのか?」

『私は聞いたことがありませんけど……』

『こんな事件が度々起こってたら培養肉工場とメーカーは軒並み潰れるわよ』

「それもそうか」

そのうち培養肉製造に反対する人とかも出てきそうだよな。俺が見た範囲内でも確実に何人か死んでるし。こんな事態を引き起こさないように十重二十重の安全対策はされてそうな気がするんだけどな?

「もしかしてモグリの培養肉製造業者でもいたのかね」

『あまりぞっとしない話ね……そんなところの培養肉とか何を餌にしているやら』

『美味しいお肉を作るには餌が重要ってコーベ・ビーフのパンフレットに書いてありました』

「エルマが心配しているのはそういうことじゃないと思うなぁ」

のんきな話をしながら怪物を駆除する。え? ロック? 緊張感の欠片もない駆除作業にロックも何もないよな。

『エルマさん、総合病院から通信が』

『繋いで』

エルマがそう言うと、男性の声が聞こえてきた。

『こちらイナガワテック総合病院、警備課のアムレイです。貴方達は――』

「傭兵ギルドで救援依頼を請けて駆けつけたキャプテン・ヒロだ。現在総合病院前のクリーチャーを駆除中」

『私はエルマ、彼の船のクルーで今は情報支援を行っているわ』

『私はミミです。エルマさんと同じくオペレーターをしています』

『ああ、傭兵ギルドの……助かりました。実は外部と内部を隔てる隔壁が破られそうだったんです』

「この程度でか? 気密性を保つために結構な厚さだろう、隔壁は」

『あの怪物の体液には腐食性があるようで……普通、コロニー内の気密隔壁には耐腐食性は求められませんから』

「なるほど」

院内の気密を保つだけなら確かに耐腐食性はさして必要ないのかね? 俺のパワーアーマーは一応戦闘用だから耐腐食性も考慮されている装甲材でできている。いくら奴らの体液を浴びてもビクともしない。

「外は任せてくれ。内部には侵入していないんだよな?」

『今のところは。殲滅が終わったらクリーチャーのサンプルを採取してください。駆除用ナノマシンを作るという話なので』

「了解。生け捕りは必要か?」

『いえ、死体で十分だそうです』

「わかった……レーザーで焼いたやつはマズいよな?」

『さぁ、私は警備員なので……生のほうが良さそうな気はしますが』

「だよな。了解」

数が減ったら格闘戦で仕留めれば良いだろう。さて、お掃除お掃除。

☆★☆

「どすこぉい!」

最後に残っていた大型種にぶちかましを喰らわせてぶっ飛ばしてやった。これで殲滅完了だ。辺りの様相はまさに死屍累々といったところだろうか。掃討そのものは順調に進んだ。苦労したのは最後の格闘戦くらいだろうか? やっぱりレーザーランチャーで薙ぎ払うほうが圧倒的に楽だ。

『お疲れでした。付近にクリーチャーの反応なし、殲滅完了です』

『生き生きと暴れてたわね』

「しっかりと運動ができて今日はよく眠れそうだよ」

格闘戦で仕留めたクリーチャーの死体のうち、程度の良さそうなものをいくつか見繕って病院の入り口、隔壁の前に積み上げておく。

「サンプルはこれで十分か?」

『ああ、ええと……ちょっと待ってくれ』

どうやら研究者に確認に行ったらしい。とりあえず残りの死骸も放置しておいたら酷いことになりそうなので、一箇所にまとめておく。基本的に閉鎖空間だからな、コロニーは。腐って発生する異臭やガスが洒落にならない事態を引き起こしかねない。

『やぁやぁ、お久しぶりだね、ヒロ君。君にはまた命を救われたな』

「……ショーコ先生?」

『ああ、ショーコだよ。覚えていてくれたんだね』

「ええ、まぁ」

なかなか忘れるのは難しいキャラをしてると思いますよ、ショーコ先生は。

『視界のリンクを共有してもらっても?』

「ええ、ミミ」

『はい、共有開始します』

視界の共有をした途端、ショーコ先生と繋がった回線からどよめきのようなものが聞こえてきた。

『凄いね。これはヒロ君が一人で?』

「そうですね。まぁパワーアーマーを着てるんでこれくらいは」

格闘戦をするために放り捨てていたレーザーランチャーを拾い上げ、サンプル用に分けておいたクリーチャーの死骸の前に移動する。

『これがサンプルかい?』

「ええ。小型種、中型種、大型種の死骸の状態の良さそうなのを二つずつ」

『それぞれについて何か感じたことはあるかい?』

「小型と大型の知能は動物並みというか、凶暴性が高いと言うか、食欲に忠実って感じですね。不利な状況とかそういったことを全く考えず、愚直に真っ直ぐ襲ってくる感じです」

『なるほど。中型種は違うのかい?』

「こいつらは他の二つに比べると幾分頭が良い感じですね。小型種や大型種を囮にして不意打ちを仕掛けようとしてきたりしますし、形勢不利とわかると逃げようとします」

『へぇ……それは興味深いね。他の二種に比べると脳が発達しているのかな?』

「サンプルはこれだけで足りますかね?」

『大丈夫だと思う。今、用意をしてそちらに出るから警戒をよろしく頼むよ』

「了解、しっかり見張っておきます」

通信を切り、ミミとエルマに周辺の索敵を任せて死体掃除を再開する。

「これ、レーザーで灰にしておいたほうが良いかな?」

『一応良質なタンパク質だろうし、そのままにしておいたら? コロニー側で何かに使うかもしれないし』

「そうか? そうだな」

そうして作業をしているうちに隔壁が開き、黄色い防護服に身を包んだ人々が総合病院の中から現れた。サンプル輸送用と思しき密閉式のストレッチャーのようなものも持ってきているようだ。その中から一人が片手を挙げて近づいてきた。

「やぁ、助かったよ。なんというか強そうなパワーアーマーだね」

「その声はショーコ先生? お互い、完全装備だと顔がわからないな」

「まったくだね。今回は本当に助かったよ。救援要請は出したと聞いていたけど、まさかヒロ君が来るとはね」

「妙なところで縁がありますね。まぁ、依頼を見つけたのはミミとエルマなんで」

「そうなのかい? 二人にも感謝しないとね」

「えーと、俺はこの後どうすれば?」

「さっさと駆除用のナノマシンを作ってしまうよ。恐らく二時間もあれば大丈夫だと思うから、その間ここを守ってくれるかな? 一応上からはそう聞いているよ」

「了解」

「それじゃあ、頑張って」

そう言って防護服で完全装備なショーコ先生は研究者達の輪に戻って行き、サンプルの回収に参加し始めた。そのうちにまた戻ってくる。

「小型種のサンプルがもっと欲しいんだけれど」

「そこに積んであるからお好きなだけどうぞ。状態はマチマチだから適当に選んでってください」

「わかったよ」

回収作業中に彼らが襲われたら大変なので、レーザーランチャーを手に周辺警戒を厳にしておく。よく見ると、防護服を着た人の中にレーザーガンを手にして警備に当たっている人が何人か居るな。警備員だろうか。

程なくして回収作業は終わり、作業をしていた人々は病院内に引っ込んでいった。一人取り残された俺は再びお掃除開始である。

「駆除用のナノマシンを作るって言ってたけど、そんなに簡単に作れるものなのかね?」

『どうなんでしょうね?』

『この総合病院なら研究用の高性能な陽電子AIもあるでしょうし、治療用のナノマシンの素体もたくさんあるでしょうから可能なんじゃない?』

「生物を駆除するナノマシンって危なくね?」

『知らないわよ。でも、この前の培養肉工場ではナノマシンを使った脱走防止機構があるとかそんな話もしていた気がするし、あの化物にだけ効くようにうまい具合に作るんじゃない?』

「はえー、そんなことができるんだなぁ」

エルマの解説に感心しながら掃除と警備をして過ごす。なんかあちこちで戦闘音のようなものが聞こえ始めたので、コロニーに駐屯している星系軍か、セレナ少佐の対宙賊独立艦隊が帰ってきたのかもしれないな。

なお、研究完了まで再度の襲撃はなかった。ただ突っ立ってるだけだったぜ……。