軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

15 愛の行方②

「パメラ様もそう言っていたでしょうが、私たちはよき友人でした。互いに恋愛感情はなくとも、結婚してもまあうまくやっていけるのではないか、という程度でした。実際、パメラ様といると気が楽でしたからね」

「……」

「そもそも、私はずっとあなたのことが好きだったのですから」

「ずっと?」

その言葉の意味をはかりかねてカミラが繰り返すと、ルークは少し気まずそうに視線を逸らした。

「……私がまだ傭兵だった十歳そこそこの頃、仕事で失敗して大怪我を負った私を、修道院で司祭を務めていたあなたが助けてくださったのです」

「……」

(……どうしよう。どれのことなのか、全然わからないわ)

カミラが所属していた修道院にいる神官は女性のみだったが、男子禁制というわけではなかった。

また修道院は昔から治療院としての役割も持っているため、怪我をした傭兵や兵士、騎士たちが運ばれることも多い。

カミラも十二歳で修道院入りして二十四歳で辞めるまでの間で、数え切れないほどの患者の治療をしてきた。ルークが十歳くらいというとカミラは十八歳そこらだったはずだが、その頃に誰を治療したかなんていちいち覚えていない。

だがルークはカミラが覚えていないのも想定内のようで、「覚えていなくて当然です」とあっさり言った。

「そのときは、憧れのようなものでした。ですがあなたがラプラディア王国の王女殿下であると教えてもらい、王城の騎士になればあなたに再会できると子どもながら単純に考えました」

「……もしかしてそれで、志願兵に?」

「はい。幸い私は剣術も戦術も得意で、志願兵とはいえ活躍することができました。とはいえその時点ではまさか、私のような貧しい生まれの者が王女殿下と懇意になれるだなんて思っておらず、せめて騎士としておそばにお仕えできれば、という思いで職務に励みました」

だがルークは自分でも予想以上に戦果をあげ、彼を気に入った国王から自分の娘を嫁がせるとまで言われた。

そのときはあのときの憧れの司祭と結婚できると浮かれたのだが、実際に現れたのは自分と同じ年頃の別の王女だった。

「多分私、明らかにがっかりしたのでしょうね。パメラ様にも私の気持ちをあっさり見破られ、私が片思いしているのが姉姫であるとすぐにばれました」

「えっ、ばれたの?」

「はい。会ってすぐにばれたので、それからずっとネタにからかわれました」

当時を思い出しているのか、ルークは苦い顔になっている。

「パメラ様も、私には異性としての関心はなかったようです。パメラ様は、仕方ないから自分で手を打て、姉とは定期的に会えるようにしてあげるから、とおっしゃいました」

「……ちょっと待って。それじゃあパメラが婚約解消にもアッシャール帝国に嫁ぐのにも乗り気だったのは……」

「……はい。全部知っていたからです」

いよいよ気まずそうに、ルークは言う。

「パメラ様は兄君のことを好きではなかったそうですが、こればかりは感謝していると言っていました。それにパメラ様は、誰かのたった一人の妻になるよりも後宮などで気ままに暮らしたいとお思いだったようですからね。うまくやれ、と私に言っておりました」

「……」

ここでようやくカミラも、色々なことがわかった。

(だからパメラ、ルークのことは心配しなくていいって言っていたのね……!)

パメラがカミラのことで心配していたのは兄との関係性だけで、それさえなんとかなるのならルークは初恋の女性と結婚できるし自分は気楽な後宮生活を送れるしで、妹としては願ったり叶ったりだったのだ。

「でも……正直なところ、私、あなたから避けられているというか、持てあまされている感じがして……」

「それは本当に、私が至らなかったばかりです」

ルークは深く頭を下げた。

「あなたとの結婚が叶い浮かれる間もなく、準備に追われました。おまけに伯爵位をもらう予定が男爵位に格下げになり、これではあなたに満足する生活を送らせられないと焦りました。せめてあなたのお心を煩わせるまいと、同衾なども強要せずにいたのですが……その、これから二年も会えなくなると思うとどうしても我慢できなくなり、御身を暴いたことをお詫び申し上げます」

「あ、あの、それは全く問題ないわ。あなたが誘ってくれたおかげで、ディアドラを授かることができたのだし」

むしろあそこで彼が自分に正直にならなかったら、カミラはディアドラを授かることもルークの本心を知ることもなく、白い結婚を理由に彼を突き放していただろう。

なるほど、ルークは自分が若くて未熟で、自分のせいでカミラに優雅な暮らしをさせられないことに罪悪感を覚えていたのだ。

彼が新婚だというのに毎日のように仕事に行っていたのは少しでも早く爵位を上げるためで、屋敷を空けていたのはカミラの心を煩わせないようにという気遣い故だったのだ。

確かに、彼は不器用で言葉足らずだった。

だが。

「それにそれを言うなら私だって、うかつなことを言ってはあなたを怒らせてばかりだったわ」

「わ、私があなたの発言で怒ったことなど、一度もありません!」

なぜか焦った顔でルークが言うので、あれ、とカミラは首をひねる。

「でも初夜のときとか晩餐のときとか、あなたをげんなりさせたわよね」

「初夜のことは、本当に、私が照れやら焦りやらで空回りしただけですのであなたが気に負うことは一つございません、それから、晩餐というのは?」