軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

#112 空の騎士と、異形の怪物

静かであった森の上空に、突如として警笛が鳴り響く。

「先行している偵察機より、緊急発光信号!」

出所は、銀鳳騎士団・飛空船団の中央。旗艦である 飛翼母船(ウィングキャリアー) ・イズモであった。

「内容は魔獣の接近、数は……一体」

「小隊により対応するとのことです!」

「おう、なら任せる」

船長席に陣取る 親方(ダーヴィド) が鷹揚に頷く。魔獣の接近など、ボキューズ 大森海(だいしんかい) にあっては日常茶飯事だ。

たかだか一匹の魔獣、精鋭である 飛翔騎士(トゥエディアーネ) の一個小隊にかかれば敵ではない。

――そう、気楽に構えていたのだが。

「……!? 続けて、発光信号! な、魔獣接近中! ……抜けられたようです!」

「なぁにぃ!」

親方のみならず、船橋にいた全員が続く報告に耳を疑った。

「もしかして、また例の蟲型か」

「いいえ、蟲型を示す信号はありません。というか、種類は不明っぽいです」

第一中隊の隊長であるエドガーが、腕を組んで唸る。

このあたりで出会うであろう強敵と言えば、真っ先に溶解性体液を持つ蟲型魔獣が挙げられるが、それも違うという。だとすれば新たな種類の魔獣であり、単体であっても警戒は必要だった。

「おいエドガー、どうする。こっちに向かってるみてぇだが、所詮は一匹だ」

「念のため、俺も 飛翔騎士(トゥエディアーネ) で出よう。第一中隊を集めてくる」

「おう、頼んだぜ」

エドガーが船橋を出ようとしたところで、もう一人の中隊長であるディートリヒが声をかけてきた。

「どんな獣かは知らないが、これだけの集団に一匹だけで突っ込むということもあるまい? 魔獣とてそこまで愚かとは思わないことだ」

「わぁってら、周りの船には警戒するよう伝えとく」

「うむ。さて今回は任せようかな」

「後詰めは頼む」

ディートリヒは壁に背を預け、ひらひらと手を振っていた。エドガーは一度肩をすくめてから、船倉へと向かう。

船でそんなやり取りがおこなわれている間にも、空では飛翔騎士たちが奮戦していた。

「こいつ……速い!」

「くそ、俺たちの攻撃を、こうも容易く!!」

人型の上半身と魚型の下半身を持つ、半人半魚の 幻晶騎士(シルエットナイト) が空を穿つように飛翔する。マギジェットスラスタからは激しく爆炎を吐き出し、並の魔獣など及びもつかない速度を叩き出していた。にもかかわらず、魔獣らしき相手には追いつけないでいる。

「しかし……あれは、なんだ!? 魔獣か、それとも幻晶騎士なのか!?」

「馬鹿言うな、幻晶騎士がこんなところにあるものかよ!」

「だが、アレの見た目は……」

偵察に出ていた飛翔騎士の小隊は、空中で“ソレ”と遭遇した。本船へと遭遇警戒の信号を送った後、威嚇攻撃をしようとしたところ。ソレは異常な速度で接近すると、あっという間に彼らを抜き去っていったのだ。

さらに一直線に船団の中心を目指しており、これを放置することもできない。

「当たれ……当たれよ!」

飛翔騎士より放たれた法撃が、空に光の尾を描く。

とにかく足止めをすべくばらまかれた法弾を、ソレは容易く回避していった。まるで後ろに目がついているかのように的確に動き、僅かも速度を落とさぬまま飛び続ける。

「このままだと……イズモまで辿り着かれる!」

「いいや、させねぇさ。見ろ、発光信号だ」

彼方に浮かぶ飛空船団のもとで、光が瞬く。一定の 調子(パターン) をもって点滅する光が、彼らに言葉を伝えてきた。

「第一……中隊! エドガー隊長が、出るのか!」

「これで、あの魔獣も終わりだな」

飛空船団の前方に、炎が灯る。迎撃のために出撃した第一中隊の飛翔騎士だ。

魔獣一匹に対しては過剰とも思える戦力だが、現に突破を許した彼らとしては心強い限りである。

「ようし、俺たちはこのまま追撃、挟み撃ちにするぞ!」

「各自、射線に気を付けろ! 魔導短槍(ショートスピア) の準備だ!」

偵察小隊は法撃を止め、出力を推進器に集中した。速度を増しながら、 小型連装投槍器(アトラトルポッド) を起動する。

前方からは第一中隊の飛翔騎士が接近してきており、正体不明の魔獣に対する包囲が出来上がりつつあった。

「すばしっこいが、所詮は魔獣だったな」

「ようし、囲い込むぞ……魔導短槍、投射!」

小型連装投槍器から、激しく炎が噴き上がる。 銀線神経(シルバーナーヴ) によってつながれた鋼鉄の槍が、連続して空へと放たれていった。

槍は鋭く加速しながら、魔獣らしきものへと殺到する。たった一匹の魔獣に対するものとしては過剰なまでの攻撃。

前方には飛翔騎士一個中隊、後方からは魔導短槍による攻撃。誰もが、魔獣を倒したとおもって疑いはしなかった。

――それが、単なる魔獣であったならば。あるいは撃墜かなったかもしれない。

飛翔騎士隊が追いかける魔獣らしきモノ、その正体は魔獣に非ず。

銀鳳騎士団騎士団長、エルネスティ・エチェバルリアが駆る異形の幻晶騎士“カササギ”なのである。

「エル君! 後ろから魔導短槍、来るよ!」

カササギの操縦席では、エルを抱きしめたアディが身を乗り出していた。攻撃を受けているというのにやたらと嬉しそうだ。ついでにエルも神妙な顔で頷いている。

「やはり、それを使いますか。実に良い判断です」

「のんびりしてる場合じゃないんじゃない? こっち来るし」

幻像投影機に映る多数の槍を眺め、エルは不敵な笑みを浮かべた。

「ふふふ。実は 魔導飛槍(ミッシレジャベリン) にはちょっとした欠点があるのですよ。それをお教えしましょう」

操縦桿を握りしめ、腕の動きに介入する。魔力を受けて 速射式魔導兵装(スナイドル) が起動し、淡い光を放った。

「アディ、前方はお願いしますね」

「任せて! ふふふ、あれは紫燕騎士団の子かな、それとも銀鳳騎士団かなっと!」

操縦者が二人いる。その利点を生かして彼らは対応を分担していた。それぞれが操縦系を操った結果、カササギは全力で前進しながら腕を後ろへと向けるという奇妙な体勢をとる。

「威力に欠ける速射式魔導兵装ですが、意外な利点もあるのですよ」

迫りくる槍へと目がけ、法撃が放たれた。

速射式魔導兵装は手数に優れた武装だ。ひとつひとつは小さな法弾だが、矢継ぎ早にばらまいて弾幕を形成することができる。

飛翔する槍衾と、法弾幕が激突する。法弾が当たる端から爆発と化し、槍を弾き飛ばした。魔導短槍は次々に向きをそらし、あらぬ方向へと飛んでゆく。

慌てた飛翔騎士から誘導指示が来るが、それもまた遅きに失していた。小法弾による弾幕が、魔導短槍につながった銀線神経をも破壊していたのである。

一度目標をそれた魔導短槍は、そのまま虚しく落下してゆくばかりであった。

魔導飛槍には、ひとつ大きな欠点がある。つまるところ魔導飛槍とは高速で飛ぶ槍なのであり、爆発するなどの機能は有していないのである。

そのため、一度目標をそれると有効な攻撃となりえないのだ。

対して、威力こそ小さいが連射の利く速射型魔導兵装は極めて有効な迎撃装置として機能していた。槍の向きを変えるのに、大仰な攻撃力は必要ない。

「魔導短槍だけで墜とせるほど、僕たちは甘くはないですよ」

エルは得意げに笑って見せるが、そもそも彼こそが魔導飛槍の考案者である。欠点も把握しており、いわば答えを自分で用意しているようなものであった。

そうして槍を蹴散らしたところで、カササギが再び加速する。

カササギに支えられた 小魔導師(パールヴァ・マーガ) は、強烈な加速感を覚え、全身をこわばらせた。

「 小魔導師(パール) ちゃん! 大丈夫!?」

「師匠アディ……我も 巨人族(アストラガリ) 、これぐらい平気!」

「前から攻撃が来るよ、注意して!」

追っ手を引き離したところで、前方の飛翔騎士中隊が迫ってくる。次はこれを突破しなくてはならない。

「我は、どうすればいい? 手伝うことは、ないかもしれないけど……」

空を飛び交う法撃、飛来する槍、圧倒的な速度で迫る飛翔騎士。どれもが、小魔導師にとっては未知の存在だ。

そもそも巨人族のなかで空対空戦闘を体験した者など未だかつて存在しない。彼女は真実、未知の領域に居る。

「大丈夫、ほとんどは僕とアディが対応します。 小魔導師(パール) はできる限りでいい、敵の攻撃を防いでください」

「やってみる!」

それでも、小魔導師はくじけることなく前を向いた。

「これが、師匠たちのいる場所。……西に住む 小鬼族(ゴブリン) たち!」

それは、エルとアディから聞いていたからだ。この空飛ぶものたちは、二人を迎えるべく故郷からやってきたのだと。

穢れの獣(クレトヴァスティア) とも戦いうるという、空の力。彼女はこの場にいる唯一の巨人族として、しっかりと見定めねばならなかった。

「さぁて、もうすぐですよ!」

船団の中央にある最も巨大な船を目指して、カササギは加速する。小魔導師は細めた瞼の間から、前方にある集団を窺った。

「あれが……師匠の言っていた“船”というものなのか。小さな氏族ならば、中に入ってしまいそうだ。その力がどれほどのものか、我が眼より 百眼(アルゴス) にお伝えする。ご照覧あれ!!」

その時、突き進むカササギへと向けて、いっせいに法撃が開始された。

狙いは非常に正確だ、直撃する寸前、カササギは大きく横にずれて回避する。攻撃をかわしたと思ったのも束の間、逃げた先にはすでに法撃が飛来していた。

法弾はそれぞれに絶妙に狙いがずれており、まるで投網のようにカササギを絡めとろうとしている。

「追い込まれたみたいですね!」

「なかなかやるね! でも感心してる場合じゃないし!」

さらに回避するか。しかし、向かってきている中隊はおそらく精鋭である。少しばかり回避したところで、次の攻撃に追いつめられるだけであろう。

「だったら、正面です!」

カササギは、回避を止めた。

速射式魔導兵装が放たれ、向かいくる法弾を撃ち落とす。空中に花開いた爆炎のただ中を目がけ、カササギが突っ込んでいった。

「 風、まとえ(ヴェント) !」

小魔導師が風の魔法を使い、炎に穴を穿つ。 可動式追加装甲(フレキシブルコート) が動き、さらに小魔導師を保護していた。

法撃を強引に突破するという無茶を目のあたりにしても、飛翔騎士たちは冷静だった。

中央を進む三機が法撃を加えつつ近接戦闘の準備を。さらに両翼の小隊三機ずつが、広がりながらカササギを追い込んでゆく。

流れるような連携を前に、しかしエルは上機嫌で微笑んでいた。

「この練度、第一中隊でしょうか」

「几帳面さがエドガーさんっぽいよねー。ディーさんだったらもっと突っ込んでくるし」

「ちょっと、楽しくなってきました!」

「ほどほどにねー」

エルの盛り上がりに同調したわけではないが、カササギの胴体下にある虹色の円環が光と径を増してゆく。 開放型源素浮揚器(エーテルリングジェネレータ) が、出力を増しているのだ。

浮揚力場(レビテートフィールド) が強まったことにより、カササギはさらに上空へと持ち上がっていった。

これが、開放型源素浮揚器の大きな利点。大気中に無制限に存在するエーテルをつかえることで、従来の 源素浮揚器(エーテリックレビテータ) に比べて高度を自在に変えられるのである。

上昇を始めたカササギの姿を見て、さすがの飛翔騎士たちにも動揺が走る。源素浮揚器によって空に支えられている 空戦仕様機(ウィンジーネスタイル) は、高度の変更に大きな制約を受ける。

カササギを追って、飛翔騎士たちも高度を上げるものの一歩の出遅れが致命的であった。近接格闘にて倒すことは無理と諦め、各機とも法撃に移る。

カササギはマギジェットスラスタを小刻みに噴かし、異様な軌道を描いて法撃をかわしてゆく。

遠距離攻撃で仕留めるのは限りなく困難だ。飛翔騎士の 騎操士(ナイトランナー) たちは歯噛みするとともに、焦りを募らせていた。

「なんだよアレ! 動きおかしいだろ!」

「クソ、イズモが目の前だ。ここの突破を許すわけには!」

中隊員たちが混乱に陥るなかにあって、エドガーは奇妙な違和感に捕らわれていた。

「炎を噴き進み、法撃を放つ。おまけにあの前面にあるのは……人型、のように見えた」

恐るべき仮説が、彼の脳裏を通り過ぎてゆく。

法撃を回避する異様なまでの機動性、魔導飛槍の欠点を知り尽くしているかのような対処法、さらには人型のようにも見える奇妙極まりない形状。

疑うには十分であるように、彼には思えた。

「だとしてもだ。今は船団にとっての脅威に他ならない。全力で行かせてもらおう」

エドガーは意を決すると、鐙を蹴り飛ばし飛翔騎士を一気に加速させる。

「やはり、飛翔騎士は上下の動きに弱みがありますね」

「シーちゃんもそのへん上手くやるの、結構大変なんだよ?」

たまに飛来する法撃をいなしながら、カササギは快調に飛翔していた。もはや、彼らを遮るものは何もない。 幻像投影機(ホロモニター) に映る景色の中で、 飛空船(レビテートシップ) の姿が大きさを増してゆく。

その時、小魔導師のあげた切羽詰まった声が、彼らの余裕を吹き飛ばした。

「師匠! 前方からひとつ、速いのが来るぞ!!」

カササギと同じ高度に、一機の飛翔騎士がある。他の飛翔騎士たちと戦っている間にここまで上がってきたのである。エルたちの動きを読んでいたのか、侮れない相手であった。

「すごい、大胆な加速してる。エドガーさんかディーさんかな?」

「……もう少しだけ、“合図”は待ちましょう」

エルの笑みが深まってゆく。一直線に突っ込んでくる、おそらくは中隊最強の騎士。その力を知りたくて、たまらないのだ。

「交差は一回、勝負は一瞬。さぁ、征きましょう!!」

カササギがさらに加速する。両者の距離は瞬く間に縮まり、致命的な間合いに入ってゆく。

先手を取ったのは、飛翔騎士であった。

構えた 複合型空対空槍(トライデント) から、魔導飛槍を発射。必殺の投槍が、カササギめがけて襲い掛かる。

速射式魔導兵装による迎撃が間に合う距離ではない。エルが叫びをあげる。

「 小魔導師(パール) !」

「ああ! 風、鋭くまとえ(プロチラーエ) !」

集まった大気がカササギの姿を揺らめかせる。さらに可動式追加装甲が動き、厳重な防御を固めた。

直後、魔導飛槍がカササギを捉える。

風の護りが穂先をそらし、閉じられた装甲の上を滑った。火花をまき散らしながら、魔導飛槍が背後へと抜けてゆく。

「 小魔導師(パール) 、次は攻撃を!」

「ッ!」

息つく間もなく、飛翔騎士の本体が飛び込んでくる。複合型空対空槍の残った 騎槍(ランス) 部分を突き出し、カササギを串刺しにせんと迫る。

切っ先が小魔導師を捉える寸前、可動式追加装甲が間に割り込んだ。

魔導飛槍とは重さと強度が違う。騎槍が追加装甲を砕き割り、貫いてゆく。

騎槍が突き立ったまま、カササギが追加装甲を大きく振り回した。装甲を犠牲にして、攻撃を本体から逸らす。

槍の後を追って、飛翔騎士の本体が突っ込んでくる。全ての攻撃をいなされても、自身を鋼の鎚とするつもりだ。

迫る騎士を睨み、小魔導師が腕を突き出した。

「 炎よ、来たれ(イグニアーデレ) !!」

掌に、炎が生み出される。発生した爆炎の衝撃が、飛翔騎士を正面からまともにぶん殴った。

弾き飛ばされた飛翔騎士が、きりもみしながら吹っ飛んでゆく。

至近距離で魔法を放った小魔導師であったが、残った可動式追加装甲がその身体を守っていた。

渾身の攻撃をかわし、三人はそろって息をつく。

「あ、危なかったー! “三人”いなかったら、負けてたかも」

「素晴らしいですね。飛翔騎士もみんな強くなっている、さすがは僕の騎士団です」

「師匠よ。その騎士団に、明らかに全力で狙われていたがいいのか……?」

いまいち釈然としない小魔導師を他所に、二人は何故か楽しそうであった。

そうして全ての追撃をかわしたカササギは、いよいよ飛空船団へと接近しつつあった。

その時、飛空船団がにわかに騒がしさを増した。

法撃戦仕様機(ウィザードスタイル) が動き始め、魔導兵装の切っ先をカササギへと向ける。

ここから少しでも前進すれば、全船を挙げての法弾幕が彼らを出迎えることだろう。

「さて、さすがにこれを相手にするのは厳しい」

いかにカササギが軽快な機動性を持つとはいえ、物量ばかりはいかんともしがたい。そろそろ奥の手を使うべきか、エルが考え込んだところでアディが口を開いた。

「……ねぇ、撃ってこないよ?」

空は、静かなままであった。法撃戦仕様機はいれども誰も撃たず、飛翔騎士がさらに出撃してくる様子もない。

「ふぅん。では遠慮なく」

いくらか警戒しながらも、エルはカササギを進めたのであった。

一方、船橋は続々と舞い込んでくる大量の報告により前線さながらの忙しさの中にあった。

「飛翔騎士、出撃準備完了!」

「親方、迎撃準備も完了です! いつでもいけますぜ、つうかもう近い! ヤバイっすよ!」

「ディータイチョ、あんた出撃して……って、いないし!?」

部下たちの報告を耳にしながら、親方はじっと黙り込んでいる。

「親方? 撃ちますぜ!?」

「いいや。待て」

ようやく口を開いた親方の、予想外の言葉を聞いて部下たちの動きが止まった。いったいこの火急の場面で何を言っているのか、魔獣らしきものはもう目と鼻の先にいるというのに。

混乱する彼らの疑問には答えず、親方は船長席から立ち上がる。

「俺たちでカタをつける。お前たちは、余計な動きするんじゃあねぇぞ」

「ええっ!? っていうかどこに、親方ー!?」

部下の言葉を置き去りに飛び出した親方は、短い脚を動かし必死に走る。そのまま上部甲板まで上がると、腕を組んで空を睨みつけた。

煌めく虹色の円環に乗った、異形の物体が近づいてくる。それは魔獣のようでもあり、機械のようでもあった。さらには前方には巨大な人間そのものと言った姿も見え、まったく正体がつかめない。

だが、親方は直感的に確信していた。

その時、上部甲板の扉が開き、中から幻晶騎士が持ち上がってきた。深紅の装甲に双剣を手にした姿、グゥエラリンデだ。

「ディー、待ちやがれ! こいつは……」

「わかっている。マギジェットスラスタで空を飛び、エドガーの攻撃をかいくぐって見せる馬鹿なんて、“一人”しか心当たりがない。……いささか、奇妙過ぎる姿だけどね」

グゥエラリンデは剣を下に向け、攻撃の構えを解いた。

いくらかの緊張とともに待ち構える彼らの前に、虹色の輝きが近づいてくる。

カササギがついに、飛翼母船イズモの甲板へと降り立ったのだった。