軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

40話 我が名はアルベール

「アデミ、とりあえずこれを飲め」

虚ろな目をしているアデミに、俺は小瓶に入った液状の薬を渡す。

「ちと苦いぞ」

アデミは言われるままに小瓶の中身を煽った。

途端、目を白黒させてうめいた。

「まっ、ずぅぅぅぅ」

「悪いな、繊細な薬で味を調整するようなものを入れられなかったんだ」

「あ、え、なんか楽に……」

「一時的にスキルレベルを低下させる、まぁ一種の毒みたいなものだな。加護衝動を一時的に抑える薬としてワイルドエルフが作った薬らしい。悪魔の加護にも効いたようで安心したよ」

「ワイルドエルフの薬!? なんでそんな薬を!」

アルもアデミも驚いた顔をしている。

「加護を抑制するとか聖方教会に怒られるから秘密な」

俺が人差し指を口にあてて、そう言うと二人は何度も頷いた。

こんな状況にも関わらず、秘密を知れた興奮がわずかに表情にでているあたり、少年というのはタフな生き物だ。

「さて、リットの話じゃここらへんだということだが」

リットの任せていた調査は、ここ数日で一気に進展した。

なんでも優秀な協力者を見つけたらしい。

ビッグホークがアデミを監禁していたことも、アデミとアルを使って何を企んでいたかも、最終的な目的も、見事なほどに調べ上げていた。

確かによほど優秀な協力者だ。

流れの冒険者だという話だが……。

「赤い鞘の剣を身に着けているらしいが」

サウスマーシュの住民のほとんどが、ビッグホークの屋敷に集まっているため、あたりは静かだ。

物音といえば遠くから家で待たされているのであろう、赤子の泣き声が聞こえるくらい。

「ここで待っているとすれば、相当な隠形使いだな」

気配を全く感じない。

俺は警戒したまま、周囲を見渡す。

視線を右側にあるあばら家に向けた時、影からすっと人影が現れた。

浅黒い肌をした、人の良さそうな青年だ。

腰に赤い鞘に収められた異国風の拵えのロングソードを佩いている。

「あなたがレッドさんですね?」

「そういう君は、リットの言っていた協力者か。確か名前はビュウイ」

青年は爽やかな笑みを浮かべた。

だが、レッドは何か油断できない鋭さをこの青年から感じていた。

「はい、私がビュウイです。付近にアル君とアデミ君に化けさせた精霊をばら撒いてきましたので、多少は時間が稼げるかと」

「手際がいいな。あとは予定通りに」

「なんの話をしているの?」

俺とビュウイの話の意味が分からず、アルは不安そうに尋ねた。

「ビッグホークをやっつける相談さ」

俺がそう言うと、アルは目を丸くして驚いていた。

「置いてきぼりにして悪かったな、二人にもしっかり話しておかないといけないことだった」

この二人にも大切な役割がある。

いや、この二人がビッグホークを倒すのだと言っても過言ではないだろう。

その時、

「レッドさん」

ビュウイが短く、だが鋭く警告した。

「分かってる。11人か」

近づいてくる気配が11人。

うち9人は中々の隠密スキルの持ち主だ。おそらくストーカーデーモン。

リットが戦ったというデーモンだろう。

「私が半分受け持ちます」

ビュウイが剣を抜いた。

左手に剣を持ち、腰を落として、剣を持たない右手を前に突き出すようにして構える。

初めて見る構えだが、スキルだけに頼らない技術があることを感じさせる構えだ。

多分頼りになるのだろう……だが。

「ここは俺が抑えるよ。ビュウイはアル達をつれて先に予定の場所に」

「それは構わないのですが、大丈夫ですか? 相手の戦力はまだ未知数ですが」

「足止めするだけだからな。問題ないよ」

「……それはそうですね、分かりました。お二人は責任持って届けましょう」

「頼む」

「レッドさん?」

「何をすればいいかの説明は、こっちのビュウイってやつが説明してくれるはずだ」

「だ、大丈夫なの、敵が来てるって」

「ああ、絶対に大丈夫。俺達の勝ちは決まっている。さっ、早く行け」

ビュウイに目配せすると、ビュウイは2人の手を引いた。

「れ、レッドさん! また剣を教えて下さいね!」

「おう、約束だ」

ビュウイに先導されて、2人が離れていく。

にも関わらず、敵の気配はまっすぐ俺に近づいてきた。

「やはりか」

鎧の装飾によって左側が少し重いため、足音が均一ではなく僅かに乱れている。

俺はこの足音のリズムを知っていた。

1分も待たされずに、11人の影が姿を現した。

「やあアルベール」

「さんをつけろよDランク」

アルベールは切っ先の丸い処刑人の剣を抜いたまま、鋭い視線を俺に向けた。