軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

47. 誰が犯人?

「今回の会談で、セリタス王国の農産物と我が国の交易路を結ぶ新たな協定を結べれば、両国の民の生活が豊かになると信じています。なぁ、ソフィア!」

殿下が事前で集めていた情報でも、確かに人が良いとの噂だった。しかし公的な場面での発言や顔見せが少なく、印象操作によるものだと考えていた。

陛下は人懐っこい笑みのまま、隣の女性……ソフィア王妃に同意を求める。

「……陛下のおっしゃる通りです」

控えめな雰囲気の王妃は首を縦に振った。白銀の髪が照明に透ける。

「セリタスの皆様との友好は、カピティアの宝ですから。ぜひ前向きにお話しできればと」

「そうですね。陛下、歓迎に感謝します」

国王と王太子では立場に差がある。しかし彼らは、殿下を同等として扱うつもりらしい。次代の王が誰なのか、誰が権力を持っているのかわかっているようだ。

陛下と殿下は握手を交わし、ソファに座る。

「最近はやっと春の兆しが見えてきて……」

当たり障りもない世間話の間、殿下は珍しく熟考していた。どう考えても、この男が首謀者には見えない。それでも、一連の事件は国家権力を行使しなければ不可能だった。

何よりも、レティが殺気を放っている。表情も硬い。幸い殿下が隠せる程度であり、カピティアの国王夫妻は気づいていないようだが、相当だ。

殿下が見抜けないほどに食わせ者なのか、それとも何か別にあるのか。

「では、交易について取引を再開してくださると?」

「ええ。そうしたいのですが、問題がありまして」

「問題……とは?」

陛下は不穏な空気に怯える。本心か、それとも演技なのか。どちらにしても厄介なことに変わりはない。

殿下はポケットから指輪ケースのような箱を取り出す。

「これをご存知でしょうか?」

「水晶玉? それにしては随分と、こう……小さい」

あまりにも動揺がない。嘘を吐いているようには見えない。その上、レティは黙っている。読めない状況に、殿下は話し続ける。

「災いの 核(コア) です」

「えぇ!?」

「無論、瘴気自体は取り除いてありますがね」

陛下はあからさまにホッとした。世間話の範疇かと思ったのか、態度を変えずに話し続けようとする。

「この間、魔物災害が起きたとお聞きしましたが……」

「その際に、 地(・) 中(・) から見つけたものです」

「地中……?」

風向きが変わり始めたのを、身に感じながら。

「本来魔物の中に存在するものが、ですよ」

殿下は暗に気づいているのだと伝えるが、ここでもまだボロが出ない。とんだ 幻影魔獣(たぬき) だ。

「レティシアの功績により大きな被害は出ませんでしたが、もし気づかなければ王都……いえ、国が滅んでいたでしょうね」

「な、なんてことだ……。今すぐ調べなければ、明日は我が国にも……」

「陛下、落ち着いてくださいませ」

王妃が嗜めるが、そんなことは関係ない。ただひたすらに、退路をなくしていく。

「口封じの魔法や分身魔法、証拠隠滅が図られていたが、他国と問題になるような事件やレティシアを狙った刺客がここ一年で多発していた」

殿下は畳み掛ける。レティは自分が狙われていた自覚がなかったのか、ほんの少し目を見開いた。

「陛下の即位後からだ」

その冷たい魔力に、陛下は腰を抜かす。

レティを傷つけた罪は深い。たとえ認めなかったとしても、殿下の中では関係者全ての処刑と国の吸収までの道筋が立っている。

「そんな……。クロヴィス殿下、カピティアにそんな意図はありません。なぁ?」

「ええ……我が国を陥れたい国の、策略ですわ」

他国との関係を悪化させ、陥れようとしていたのはカピティアだというのに。この後に及んで、まだそのようなことを言う。

殿下は呆れていたが、今まで黙っていたレティがぴくりと反応した。眼光は鋭く、より一層強い殺気が放たれる。その圧に、陛下は身を竦ませた。

「……貴女、嘘を吐くのがお上手ね」

レティはまっすぐに、ソフィア王妃を見つめた。不気味なほどに、王妃の表情は変わらなかった。