軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

76 素敵な新人店員さん

六時課の鐘が村中に響き始め、“オリーブの樹”開店のお時間です。

トーマスさんがスッと扉を開けると、鐘がチリンと鳴り、まず一組目のお客様。

もう常連になりつつあるフローラさん。

今日も仲良しのソフィアさんと一緒にご来店だ。

「いらっしゃいませ。フローラさん、ソフィアさん」

「いらっしゃいませ!」

「いらっちゃぃましぇ!」

入りやすい様に扉を支え、中へ案内するのはトーマスさん。

席の前では、ハルトとユウマがお辞儀をしてお出迎え。

「あらあら! 今日はこんな素敵な店員さんが出迎えてくれるなんて!」

「ホントねぇ、なんだか楽しくなっちゃうわ」

フローラさんとソフィアさんも、思いがけない出来事に表情が嬉しそう。

「今日は少し我が儘を言いましてね、新人なのでお手柔らかにお願いします」

「おねがい、します!」

「おねがぃちまちゅ!」

三人でペコリとお辞儀をし、早速お席へご案内。

もう注文の決まっていたフローラさんとソフィアさんは、小さい店員さんに優しく注文をお願いしてくれている。その心遣いがとっても有難い。

「ちゅうもん、いただきました!」

「いたらきまちたぁ!」

「はい、ありがとうございます! ハルト、このお冷を零さない様に持って行けますか?」

「はぃ! だいじょうぶ、です!」

「ユウマはこのお手拭きを持って行けますか?」

「はぁい! ゆぅくんだぃじょぶ!」

「では、お願いします」

「「はぁい!」」

フローラさんとソフィアさんの注文は、オムレツのチーズ入りと、トマトクリームパスタ。いつものサンドイッチじゃないんだな、と少し驚いてしまった。今日は違うメニューに挑戦するらしく、とっても楽しそう。二人で分けるから取り分け用の小皿も用意。

オリビアさんはパスタ、僕はオムレツを調理し始める。二人に訊いて、パスタは少し柔らかめに茹でる事にした。

「とってもいい匂いねぇ」

「ぱすたのきじも、おにぃちゃん、つくってます!」

「おむれちゅ、とってもおぃちぃの!」

「あらぁ、そうなの? 食べるのがもっと楽しみになっちゃったわねぇ」

そんな会話が客席から聞こえてくる。オリビアさんと二人でほんわかしてしまった。こういうのも楽しくていいかもしれない。

僕たちが調理をしている間に、二組目のお客様。

トーマスさんがサッと扉を開け対応している。

もしかして、お客様が来るの気付いてたのかな……?

「いらっしゃいませ。何名様ですか?」

「えっ!? トーマスさん!?」

「うそぉ! すっごく似合ってるわ!」

二組目はカーターさんと奥さんのアイラさん。二人ともトーマスさんが出迎えてびっくりしてる。

「ハハ! 照れるから止めてくれ。二名様でよろしいでしょうか?」

「はい! 二人です」

「ではこちらの席にご案内致します。どうぞ」

席の前ではまたハルトとユウマがぺこりとお辞儀。

「いらっしゃいませ!」

「いらっちゃぃましぇ!」

それを見たアイラさんは両手で口を押さえ、器用に小声で叫んでいる……。

たぶん周りに迷惑をかけないようにかな?

「私、こんなに可愛い店員さん初めて見たわ……!」

「おきゃくさま、おひやを、どうぞ!」

「おきゃくちゃま、おて…、ふき? どぅじょ!」

「ありがとう。今日は皆でやってるんだ? 楽しそうだね?」

「はい! とっても、たのしいです!」

「ゆぅくんも! たのちぃ!」

「「かわいぃ……!」」

アイラさんとオリビアさんが、同時に小声で叫んでた。

「ハルト、オムレツ出来たから、フローラさんたちの席までお願いしてもいいですか?」

「はい! だいじょうぶ、です!」

「気を付けて、お願いします」

「はい!」

ハルトは、前回のイドリスさんたちの時に何度か料理を運んだから、慣れている……、かな?

ユウマは危ないので、注文とお手拭きをお願いしている。それでも嬉しいのか、ずっとにこにこしているのでホッと一安心。

「パスタ出来上がったわ」

「あぁ、オレが運ぼう」

「ありがとう。この小皿もお願いね」

「あぁ、わかった」

パスタはお皿が少し熱いのでトーマスさんが運んでいる。片手にパスタ皿と小皿をのせて席に向かう姿はとっても様になっていて、まるで高級レストランみたい……! 行った事はないんだけど……!

「お待たせ致しました。トマトクリームパスタです。こちら、器が熱くなっておりますのでお気を付けください」

「まぁ、ご丁寧にありがとう」

「ふふ、今日はなんだかドキドキしちゃうわぁ」

「素敵な店員さんが、こんなにたくさんいるんだものねぇ」

「ありがとうございます。では、フローラさん、ソフィアさん、ごゆっくりどうぞ」

少し微笑んで礼をする姿がとってもカッコいい……!

僕もあんな風になりたいな、なんて憧れてしまう。

カーターさんたちの料理を席に運び終えたところで、トーマスさんがスッと店の扉を開けた。そこには今まさに、扉に手をかけようとしていたイドリスさんの姿が。

「いらっしゃいませ。ご予約のイドリス様ですね? お待ちしておりました」

お辞儀をして出迎えたトーマスさんに、イドリスさんたちは目を見開いて驚きを隠せない様だ。

……誰も言葉を発しない。大丈夫かな?

「………なんで、お前がいるんだよぉおおお!!!」

うん、イドリスさんは今日も賑やかそうだ。