軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

34 おてつだい大作戦③

「ただいまぁ~!」

後片付けがひと段落し家のダイニングで休憩していたら、ちょうどオリビアさんが帰ってきた。

「オリビアさん、おかえりなさい!」

「あら、あの子たちは?」

「疲れたのかぐっすりです」

「あらぁ~、今日は生地作り頑張ってたものね!」

オリビアさんは家のソファーでぐっすり眠る二人を見てニコニコしている。

あ、メイソンさんのベビー服作り、上手く出来たのかな?

「メイソンさん、大丈夫でしたか?」

「えぇ! 一度教えたら器用で手直しも要らなかったわ! エリザも他にも作ってみたら? なんて言うものだから楽しくなっちゃって、三着も作っちゃったのよ~!」

遅くなっちゃってごめんなさい、と申し訳なさそうに謝るオリビアさんには悪いけど……。エリザさんとメイソンさん、上手く時間を延ばしてくれてたんだな、と心の中で感謝した。

「今日はトーマスも遅くなるって言ってたし、明日に備えて早めに寝ましょうか?」

「そうですね。ハルトとユウマも慣れないことしたから、夕食の後もすぐ寝ちゃうと思います」

「じゃあ今夜は軽めに食べて、朝食を多めに取りましょ」

「はい。じゃあ、スープ作っておきますね」

さっき明日の分を仕込むときに夕食用の野菜も切っておいたからすぐに用意出来るな、と頭の中で段取りを決める。

「あら、私が作るわよ? ユイトくんも朝から疲れたでしょう?」

「大丈夫ですよ? オリビアさんも歩いてきたんだから、少しゆっくりしててください」

「ふふ、ありがとう。お言葉に甘えようかしら」

「はい! いっぱい、甘えてくださいね!」

「まぁ~!」

二人でふふっと笑いあい、オリビアさんは二人を起こさないように椅子に腰かけ、僕はお店のキッチンへ。

最近一人になると、ふと考えることがある。

こっちの世界に来る前の僕は、働く母の助けになればと家の手伝いをしていたけど、料理だって簡単に作れるものくらいしかしてなくて、自分で食べてもそんなに美味しくなかった。

最後の方は自分でも馴れてきたなと思ったけど、すぐに父に引き取られてあの生活になってしまった。

なのに今は、なんだか身体が使い方を知ってる様に動くんだよな。

……やっぱり、母と祖父母の知識のおかげなのかなぁ、とぼんやり思う。

女神様にお礼をするなら、やっぱり教会とかかなぁ?

僕にこうやって母たちの知識が残ってるんなら、ハルトとユウマもそのうち分かるようになるのかな……?

そんなことを考えながら、僕は夕食のスープをゆっくりとかき混ぜていた。

夕食を食べオリビアさんも弟たちもすでに就寝し、僕もベッドの上で明日のことを考えていたけど、そろそろ瞼が重くなってきた。

水を飲んで寝ようかとそうっと部屋を出る。すると、玄関の方で扉が開く音がした。

「トーマスさん、おかえりなさい」

「ただいま。まだ起きてたのか。今日はちゃんとお利口にしてたか?」

「ふふ、大丈夫です! もう寝ちゃいましたけど、ハルトとユウマもちゃんとお利口でしたよ?」

「そうか、それだけが心配だったんだよ。ユイトもたくさん準備していたんだろう? お疲れ様」

そう言って頭を優しく撫でられる。

胸の奥がじぃんと温かくなって、肩の力が少し抜けた気がした。自分でも気付かないうちに、ちょっと気が張っていたのかもしれない。

「スープなら残ってるんで温めましょうか?」

「いや、大丈夫だよ。身体を拭いて寝るから、ユイトももう寝なさい」

「はい……。じゃあ、トーマスさん、おやすみなさい」

「あぁ、おやすみ」

明日は美味しいって言ってくれるかな? 上手くいくといいなぁ、なんて願いながら、僕は弟たちの寝息が聞こえてくるベッドの上で、そっと目を閉じた。

*****

「おにぃちゃん! あさです! おきて~!」

「にぃに~! あしゃよ~!」

「ん~……」

昨日早めに寝た弟たちが、僕を起こそうと近くに寄ってくるのが分かった。

だけど僕は毛布に包まったまま起きようとしない。焦れたハルトとユウマがベッドの上を移動してくる気配を感じる。……今だ!

「二人とも、おはよ~っ!」

「「きゃあ~っ!」」

包まっていた毛布をばっと広げ、近寄ってきた二人を毛布の中へぎゅうっと閉じ込める。ハルトとユウマはきゃあきゃあ言いながら毛布から出ようと、僕の腕の中でもがいている。

朝からご機嫌なようで何より。お兄ちゃんは嬉しいよ。

三人ではしゃいでいるとオリビアさんが扉をノックして入ってきた。

あ……! うるさかったかな?

「んん……ッ! ……皆、おはよう! 朝から楽しそうね?」

毛布に包まって遊んでいる僕たちを見て、オリビアさんは一瞬スカートをぎゅっと握りしめていた。

「オリビアさん、おはようございます!」

「おばぁちゃん、おはよぅ、ござぃます!」

「ばぁば、おはよ!」

「さぁ、今日は忙しいわよ~! 頑張りましょうね!」

「「「はぁ~い!」」」

顔を洗って支度はバッチリ!

ハルトとユウマ、そして自分の寝癖も直したし、今日は完璧!

「おはよう、三人とも朝から元気だな」

「トーマスさん、おはようございます! 今日は皆さん、いつ頃来られるんですか?」

「今日は九時課の鐘が鳴ったら仕事を終わらせるとイドリスが言い張っていたからなぁ……。ん? ほら、危ないからじっとしなさい。……そのあとには、来ると思う」

「わかりました! 楽しみにしていると伝えてください!」

「あぁ、伝えておくよ。ありがとう」

ちなみに僕がトーマスさんと会話している間に、ハルトとユウマがおじぃちゃん、おはよぅと言いながらトーマスさんの横に座ろうと椅子によじ登り、それを危ないと抱えてトーマスさんは二人を自分の両膝に座らせている。

ほんと、誰がどう見てもおじいちゃんと孫だね。

朝食を食べてトーマスさんを見送り、ついに仕込みの最終段階……!

気合を入れて頑張るぞ!

僕はまず、冷凍していたピザ生地を全て冷蔵庫に移し、昨日のパスタ生地の続き。オリビアさんは じゃが芋(パタータ) やトマトのカット、そしてハルトとユウマには昨日茹でてマッシュしたコロッケ用のパタータを丸める作業をお願いした。

「ハルト、ユウマ。こういう風に中にチーズを入れたものと、 とうもろこし(マイス) を混ぜたもの、お肉を混ぜたものを作るからね。まずはこのチーズを入れて、ころころ丸めてくれる?」

「「はぁ~い!」」

二人は黙々とコロッケを丸める作業をしている。唇がとんがっているので真剣だ。とても可愛い。オリビアさんもそんな二人を見てニコニコしている。

「ユイトくん、カット終わったからトマトソースを仕込んでいくわね。何かあったらすぐ教えて?」

「はい、わかりました」

オリビアさんはパスタ用とピザ用のトマトソース、 にんにく(ガーリク) ・ 唐辛子(チィリ) 入りと、ガーリク・チィリ抜きの二種類を作る予定。

材料は同じだけど、ハルトとユウマも食べれるように鍋を別にしてくれるそう。

僕は昨日休ませた生地を切り分け、一つずつ麺棒で薄~くなるまで伸ばし、生地に打ち粉をして三つ折りにし、包丁で食べやすい幅にカットしていく。

食べる直前に茹でるので、今は一人前分ずつに分けて打ち粉をしておく。細くは切れなくてきし麺みたいになったけど、確かこんなパスタもあったはず! 気にしない。

パスタ麺は出来たので次の仕込み。

今度はマヨネーズとタルタルソースだ。マヨネーズは三日前に一度作ってみたけど、すっごく腕が疲れたな……。

しかも今回は多めに作るので大変だ。卵黄とお酢、油と塩を混ぜて大量のマヨネーズを作り、タルタル用の茹で卵を食感が残るように粗目に刻んでいく。

オニオンをみじん切りにし、茹で卵の入ったボウルの中へ。そこに先程作ったマヨネーズとお酢、砂糖、塩を少し入れて全体を混ぜ合わせ味を調える。

「オリビアさ~ん、このソース味見してくださ~い」

そう言って、スプーンにタルタルソースをのせてオリビアさんの下へ。トマトソースをかき混ぜているので、そのままあ~んと言ってオリビアさんに味見してもらう。

オリビアさんは目を見開いて美味しい! とビックリしていた。気に入ってもらえたようで安心した。

時間のかかる仕込みはひと段落したかな? ハルトとユウマの様子を見てみると、三種類のコロッケのタネがバットに綺麗に並んでいた。

「おにぃちゃん、ころっけ、おわりました!」

「きれぃにできちゃよ!」

「ほんとだ! 二人とも上手だね! 美味しそう!」

二人は褒められると、また満足そうにエッヘン! と胸を張ってポーズを決めた。何度やっても可愛いな。

コロッケは揚げる直前に衣をまぶすから、ひとまず冷蔵庫へ。

野菜もお肉も仕込んだし、あとはハルトとユウマにピザのトッピングをしてもらうだけ。

「ハルト、ユウマ、お待ちかねのピザのトッピングだよ!」

「ぼく、おぃしぃの、つくります!」

「ゆぅくんも! まいしゅ、いっぱぃのせりゅ!」

「じゃあまず、トマトソースを塗っていきましょ~!」

「「はぁ~い!」」

オリビアさんが仕込んでくれたトマトソースを、ピザ生地にたっぷりと満遍なく塗っていく。ハルトとユウマもちょっとはみ出たけど、今のところ順調に塗れているようだ。

トッピング用の具材を作業台に並べ、一応のお手本を見せる。あまり載せすぎると具材に火が通らなかったりするから気を付けて、あとは好きな具材をのせてね、と伝えると二人は楽しそうに盛り付け始めた。

トーマスさんたちが来るまでもうすぐだ。

僕の初めてのお客様! どんな人が来るのかな?

練習はしたけど上手く接客できるかな?

緊張と不安でドキドキするけど、今は楽しみの方が大きいかもしれない。

あぁ、はやく来てほしい! 僕はそれが待ち遠しくて仕方なかった。