軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

334 あしすたんと?

「ほら、メフィスト。セバスチャンから離れよう?」

「んやぁ~っ!」

揺れる馬車の中、僕はセバスチャンの羽にすっぽりと顔を埋めご機嫌なメフィストを転ばない様に支えているんだけど……。

「アハハ! メフィストくん、夢中だねぇ!」

「めふぃくん、ずっと、うまってます……」

「だいちゅきだもんね?」

「あ~ぃ!」

鷲掴みにされているセバスチャンが可哀想だからと何とか手を離そうとするけど、小さな体のどこにこんな力があるのって言うくらい力が強い……。

普段のふわふわの指はどこに行ったんだ……。

《 ユイト、朝の約束だ……。このままでいい…… 》

「セバスチャン……」

「きゃ~ぃ!」

頑なに離そうとしないメフィストに根負けしたのか、そう言って大人しくされるがままになっているセバスチャン。

……自慢の羽は、今日もしっとりと濡れていた。

「まさかユイトくんに弟子が出来るなんてね~!」

「僕もビックリです……」

置物の様になっているセバスチャンの隣で、僕は今日あった出来事をトーマスさん達に報告する。弟子というと何となく気恥ずかしいけど、生徒とはまた違うよな……。

それに、皆の熱意に僕も知っている事を色々教えたいと思っていた。

「だからあの子達も一緒に待ってくれていたのか」

「そうなんです。僕が帰るまで話したいって、ずっと料理の事を話してました」

教会の外で迎えの馬車を待っている間も、ずっとレオンくんやカリーナちゃん達六人と話をしていたんだけど……。皆、孤児院の仲間にも美味しい料理を食べさせたいと熱意がすごく……。

「それで定期的に連絡を取り合う事になったのか」

「はい。毎回皆に王都まで来てもらうのはさすがに無理なので……」

「孤児院もシスターが一人抜けたら大変だろうしなぁ」

「そうね。教会の仕事に、子供達のお世話もあるものねぇ」

僕が王都に来たその帰りに皆の孤児院へ毎回一ヶ所ずつ寄る事も考えたんだけど、さすがにトーマスさん達にも相談しないといけないのでこの案はまだ仮のまま。

ネヴィルさんとシスターさん達とも話し合い、支援物資と共に僕のレシピも一緒に届けてもらえる事になった。

レオンくん達も納得してくれ、次に僕と会うまでに料理の腕を上げておくと張り切っていた。

「にぃに、おでししゃん?」

「すごいです!」

ユウマとハルトは僕に弟子が出来たと知って興奮気味。

きっと二人とも、自分の師匠を思っているのだろう。

ユウマは鍛冶屋のメイソンさん。

ハルトはアーロさんにディーンさん、そしてバートさんだな。

あ、メイソンさんにお土産も買わなきゃ! そろそろお孫さんも産まれる予定だもんな。帰ったら産まれてるかも……! 会うのが楽しみだ!

「皆、家族に美味しい料理を食べてほしいんだって」

「じゃあ、おにぃちゃん、ぴったりです!」

「にぃにのごはん、おいちぃもんね!」

《 うん! おりょうりのせんせいだもんね! 》

《 ゆいとのごはん、だいすき! 》

《 《 《 《 ねぇ~! 》 》 》 》

ハルトとユウマも、それにリュカ達も、僕に弟子が出来たと知りはしゃいでいる。そんな中、ただ一人頬を膨らませているのは……。

「おにぃちゃんのでし、わたしもなりたかったのに……」

《 れてぃ、げんきだして~ 》

最近お菓子作りに夢中のレティちゃんだ。

どうやら僕の一番最初の弟子(?)になりたかったらしく、ずるい! と拗ねている。妖精のニコラちゃんは、そんなレティちゃんをよしよしと慰めていた。

「あらあら。そんなにむくれて~」

「だってぇ……」

オリビアさんはそんなレティちゃんに苦笑いしつつ、そうだわ! と何か名案を思い付いた様だ。

「ふふ! レティちゃんはユイトくんの弟子にならなくても、助手の方がいいんじゃない?」

「じょしゅ……?」

オリビアさんの言葉に、レティちゃんは首を傾げている。

助手って、あの助手……? アシスタント的なあれだよね……?

「そうよ~? カーティス先生の助手のコナーくんみたいに、ユイトくんの料理の助手になればいいんじゃない?」

《 おりびあ、いいかんがえ~! 》

「でしょう?」

「──! わたし、じょしゅがいい……!」

そう言って、目をキラキラと輝かせながら僕に振り返るレティちゃん。そんな期待を込めた眼差しで見つめなくても……。

「そうだなぁ~……。レティちゃんが手伝ってくれるなら、僕も助かっちゃうかも……!」

「──……!」

僕の言葉に目をこれでもかと見開き、僕とオリビアさんを交互に見つめている。

家でもよく手伝ってくれてるし、レティちゃんの将来やりたい事が決まるまでお願いするのもありかな?

「……じゃあ、いいの……?」

「うん。可愛い妹に助手になってもらえるなら、僕も心強いよ」

「~~~っ! わたし、がんばる!」

やったぁ~! とハルトとユウマに抱き着き、喜びを抑えきれない様子だ。レティちゃんの普段は見れないあまりのはしゃぎ様に、トーマスさん達も笑い出しドラゴンも楽しそうに鳴き出した。

「れてぃちゃん、うれしそうです!」

「えてぃちゃん、よかったねぇ!」

「うん!」

レティちゃんに突然抱えられたメフィストは、う~? と目を真ん丸にして驚いていたけど、レティちゃんの笑顔につられてにこにこだ。

一瞬だけメフィストから解放されたセバスチャンはホッとしている。

そんなレティちゃんをオリビアさんたちと一緒に微笑ましく眺めていると、胸元に朝は着けていなかったであろう、可愛らしいブローチが……。

「あれ? レティちゃん、そのブローチ可愛いね?」

そう声を掛けると、メフィストを抱えご機嫌なまま大きく頷く。

「これね! はるくんとおじぃちゃんが、ぷれぜんとしてくれたの!」

「ハルトとトーマスさんから?」

「そうです! れてぃちゃんに、にあうとおもって! ね、おじぃちゃん!」

「あぁ、そうなんだ」

トーマスさんと内緒でプレゼントしたらしい淡い色の果実のブローチ。トーマスさんによると、ハルトが贈りたいと言い出したらしい。

ブローチを差し出された時、あまりに突然の事にレティちゃんは泣き出してしまったという。それを聞くとレティちゃんは恥ずかしそうにメフィストを抱き寄せていた。

「そうなんだ……。すっごく似合ってるよ」

「ほんとう? わたし、きょうはうれしいことたくさん……!」

ゆめみたい! そう言って、レティちゃんはずっと笑みを浮かべている。

「それにね、きょうはみんなで、いっしょにおどったんだよ!」

「え? おどった……?」

踊ったって……。何かお祭りでもやってたのかな?

そんな疑問が顔に出ていたのか、トーマスさんとオリビアさんが笑いながら教えてくれた。

「あぁ、昼間にな」

「そうなの。私達の隣にいた人達がジョングルールでね。何か荷物を広げてるなぁ~と思ってたら、突然歌い出して」

「皆で音色に聴き入ってたんだが……」

「ドラゴンちゃんが音に合わせて踊り始めちゃってね?」

「クルルル!」

ジョングルールとは大道芸人の事らしく、ドラゴンは音に合わせて踊り子さん達と一緒に踊り始めたらしい。ハルトとユウマもそれに続き、広場はあっという間に人で溢れ返ったって。

ナニソレすっごく楽しそう……! 僕も一緒にいたかった……!

「みんなでおどるの、とっても、たのしかったです!」

「どらごんしゃんとね、おちり、ふりふりちたの!」

「「ねぇ~?」」

「クルルル~!」

ドラゴンと一緒に踊るだなんて、そんなの絶対可愛い……。

あぁ~、カメラがあればなぁ~……。永久保存なのに~……!

「ユイトくん、トーマスさんも踊ってたよ」

「え……!? トーマスさんも……!?」

「こら! ユラン!」

笑いながらユランくんが教えてくれた衝撃の事実に、僕は口が開いたまま……。

まさかトーマスさんも踊るだなんて……!

「じぃじ、じょうじゅだったの!」

「おじぃちゃん、おばぁちゃんとおどったの!」

「みんな、たのしそうでした!」

「あぃ!」

皆、昼間の出来事を思い出して興奮しているのか、鼻をふんふんとさせ教えてくれる。どうやら広場にいた人達で相当盛り上がったみたいだ。

ユランくんもメフィストを抱え、レティちゃんと一緒に踊ったらしい。

「いいなぁ~……」

皆、楽しそう……。思わず本音がポロリ。

料理を教えるのも楽しいけど、僕も一緒にいたかったな……。

「あら、今度はユイトくんが拗ねちゃったわね……」

「ホントだな。機会があったら次はユイトも一緒に踊ろうか」

「にぃに、いっちょにおどりゅ?」

「ぼく、おしえてあげます!」

「ゆぅくんもねぇ、おちえてあげりゅね!」

「クルルル!」

ドラゴンもボクが教えてあげる! と言わんばかりに僕の顔をペロリと舐める。そんなに拗ねてる様に見えたかな?

でも、そんな機会があったら今度は僕も参加したい!

「皆、約束だからね!」

「「「はぁ~い!」」」

「クルルル~!」

そんな騒がしい僕たちを乗せ、馬車はゆっくりと通りを進んで行く。

次の目的地は僕には内緒らしい。

面白いものがあったのかな? 今から楽しみだ!