軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

326 欲しい物

「ユイトくん、忘れ物はない?」

「はい! 大丈夫です!」

今日は僕だけ別行動の為、身支度を終えると約束に遅れない様に予定の時間よりも早めに家を出る事に。

「おにぃちゃん、はんかちもった?」

するとレティちゃんが、まるで信用ならないとジト目で僕を見つめている。

……うぅ、視線が痛い……。

「う……、大丈夫! 今日は忘れずに持ってるよ!」

「ほんと~?」

昨日はハンカチを忘れて、レティちゃんに怒られちゃったからなぁ……。

うん、ちゃんとポケットに入ってる!

それを見て安心したのか、レティちゃんも満足そうに頷いた。

「なくしちゃだめだよ?」

「はい……! 気を付けます……!」

レティちゃんがおまじないしてくれたハンカチ!

ちゃんと、肌身離さず持っておくから!

「皆もちゃんとついて来てね?」

《 だいじょうぶ! 》

《 ちゃんとかくれるよ~! 》

うん。ノアたちも全員揃ってるな。

《 きょうはぼく、ゆいとといっしょにいていい? 》

「うん! でも見つからない様にね?」

《 だいじょうぶ! 》

そう言って、ノアは僕の肩に座って姿を消す。今日一日、僕と一緒に過ごしてくれる様だ。昨日は二人にしてあげてと言うオリビアさんとの約束を守っていたみたい。

そしてそれぞれ、リュカはハルト、テオはユウマ、ニコラちゃんはレティちゃんに。リリアーナちゃんはメフィストを抱えるオリビアさんの肩に座って姿を消す。

オリビアさんと一緒に戸締りをし、使用人さん達に後の事をお願いする。

門の外ではトーマスさんとユランくんがサンプソンたちと一緒に僕たちが出てくるのを待っていた。

「ユランくん、そっちに座るの珍しいね?」

トーマスさんの御者席の隣にユランくんが座っている。いつもはこっちで僕たちと一緒に座っているのに。ハルトもユウマもそんなユランくんの後ろに移動し、興味津々だ。

「うん。こんな機会滅多にないし、ボクも覚えようと思って。トーマスさんに手綱の扱い方を教えてもらうんだ」

「じゃあ、慣れたらユランくんが御するの?」

「ん~、覚えたらやってみたいな」

「ぼく、のりたいです!」

「ゆぅくんも!」

「ホント? じゃあ頑張って覚えるね!」

「「うん! がんばってぇ!」」

ハルトとユウマの応援を受け、ユランくんも嬉しそうにはにかんだ。村に帰る時はきっとユランくんとドラゴンも一緒に帰るだろうし、もしかしたら御者席に座ってるかもなぁ~。

「セバスチャンはそこにいるの?」

《 ……危険が無いか、見張らないといけないからな 》

どうやらセバスチャンは、メフィストの涎を回避する為に幌の上に避難しているらしい。メフィストは上を見上げ不服そうだ。

「あぅ~……」

「メフィストが寂しがってるよ?」

《 う……。また、帰りにな…… 》

「あ~ぃ!」

それを聞き、メフィストは漸く笑顔を向ける。やっぱり、僕たちの言葉を理解しているのだろうか? 元はあの人だからなぁ。

……もしかして、本当は元のメフィストさんのままだったり?

「うぅ~?」

僕が見つめていると、メフィストは不思議そうな顔で僕を見つめ返す。クリクリの目にまろい頬。う~ん、可愛い!

( ……そんな訳ないか! )

「何でもないよ~? 今日は皆でお出掛け、楽しみだね?」

「あぃ!」

指を近付けると、可愛い指先できゅっと握り返してくる。クリームパンの様にふくふくとした手に、思わず頬が緩んでしまう。

「よし。皆乗ったな? サンプソン、行こうか」

《 あぁ、任せてくれ 》

幌の上にはセバスチャン、馬車の中にはレティちゃんに撫でられすっかりリラックスしているドラゴンもいる。他の馬たちは家で留守番。使用人さん達が世話をしてくれるから安心だ。

そして、ゆっくりと馬車が動き出す。

馬車と言っても席は無く、板張りにクッションを敷いているだけ。だけどその分、ドラゴンも乗れるから重宝している。

街で買い物をしても、たくさん詰め込めるし!

「オリビアさん、今日は何を買うか決めてるんですか?」

「えぇ。皆の服に靴も欲しいわね。あとユウマちゃんの本もあればと思って」

ユウマのスキルを誤魔化す為に、色んな国の言語で書かれた本を集めようと皆で話し合った。昨日は僕がやらかしたせいで本屋を探せなかったけど、僕も孤児院での予定が終わったら迎えが来るまでちょっと探してみようかな。

「ゆぅくんねぇ、ごほんたのちみ!」

「そうね。一緒に探しましょうね?」

「うん!」

「えほんも、ありますか?」

「そうね、他国の絵本ならユウマちゃんも読みやすいわね?」

「ん!」

「はるくん、ぜったいみつけよ!」

「うん! えほん、さがします!」

それを聞いて、レティちゃんとハルトは絶対に絵本を探そうと意気込んでいるみたい。二人とも、弟想いだな。

「ユイトくんは何か欲しい物はないの? 迎えに行くまでに見つかれば買っておくわよ」

「ん~、欲しい物……。変わった調理器具……、とか?」

ヴァル爺さんがくれたレンジとか、アイヴィーさんとお兄さん達が譲ってくれたパスタマシンとか……。あると便利な物が良いな~。

「調理器具……。あぁ、あのレンジみたいな?」

「そうですね。もしオリビアさんも見た事が無い様な物があれば、教えてください!」

「あら、買わなくていいの?」

「……だって、ホントに変な物だったら困るし……」

「ふふ! それもそうね!」

そんな事を話しながら、僕たちは馬車に揺られ目的地へと向かった。