軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

311 王都でデート

まだ夜も明けきらぬ時間帯。

窓の外は薄暗く、トーマスさんとハルトたちもまだぐっすりと寝室で就寝中。そんな時間に僕は二階の大きなクローゼットと姿見鏡の前で、あーでもないこーでもないとオリビアさんの着せ替え人形になっていた。

「あ~、これも素敵ねぇ~! でも、あんまりキッチリし過ぎてても……。う~ん……」

王都に入る前夜、あの商人さん達からお礼としてもらった品の中にいくつかの衣服があり、どれも高級そうな生地で出来ている。

それを僕の手持ちの服に合わせては、オリビアさんはうんうんと唸っていた。

「オリビアさん、これやり過ぎじゃないですか?」

「あら、これくらい普通よ~!」

「コンラッドさんに貰った服は……?」

「やだ、ユイトくん! デートに他の人に貰った服を着るのはいただけないわ!」

「でもこれも商人さん達が……」

「これは食事のお礼だから良いのよ~!」

そう言うものなのかと僕は口を噤む。だって、オリビアさんが上機嫌だから……。

お礼の品を手持ちの服と合わせていくと、漸く納得がいったのかオリビアさんが満足そうに微笑んだ。

いつものアイボリー色のシャツに、お礼に貰った手が隠れるくらいの少し大きめのベージュ色のカーディガン。そしてブラウンのパンツを穿いて、鏡の中にはいつもとは少し違う僕の姿。ちょっとふわふわし過ぎてないかな?

「ほら! とっても素敵でしょ~? 羊毛(ウール) のカーディガンなんて暖かくて使いやすいじゃない!」

「肘回り、ダボダボしてないですか?」

「これが可愛いのよ~! ほら、キッチリしてるよりちょっと隙がある方がいいじゃない?」

「隙……」

少し服装を変えるだけで雰囲気もガラリと変わると、オリビアさんが引っ張り出した服を片付けながら楽しそうに話している。

「ユイトくん、髪も伸びたわねぇ」

「あ、そう言われれば……。切った方がいいかなぁ……」

前髪を引っ張ると、鼻先にかかるくらいに伸びていた。

「でもキレイだから勿体ないわねぇ……。後ろで結った方がいいかしら? あ、でも流しても素敵だし……」

座って座って、と促されるまま鏡台の椅子に腰掛ける。

ブツブツと呟きながら髪を弄るオリビアさんに身を委ね、僕は今日はどこに行くんだろうとアレクさんとのデートに思いを巡らせていた。

*****

「お、もう準備してたのか」

「そうなの。素敵でしょ~? 髪も弄っちゃったわ!」

丁度起きてきたトーマスさんと朝の挨拶を済ませると、オリビアさんが得意気に僕をトーマスさんの前へと連れて行く。

トーマスさんは顎に手を添え、上から下へと僕の姿を確認すると、ふむ、と頷き決まってるなと一言。まじまじと見つめながら、僕の肘部分を見てここが可愛いとピンポイントで褒めてくる。

その言葉にオリビアさんは一気に上機嫌だ。もしかしたらこれ、トーマスさんの好みなのでは……?

「ユイトは何でも似合うからな」

「トーマスさん、お世辞はいいです……」

「何言ってるんだ? 世辞なんて言わないぞ?」

「ふふ! 髪も伸びてきたし、前髪を分けて少しだけ後ろに流してみたの。可愛さも残っててこれならアレクも惚れ直しちゃうわね~!」

「ユイトは何でも似合うからな」

「トーマスさん、それ二回目です……」

そんな事を言いながら三人で一階へと降りていく。

「朝は外で食べるんだろう?」

「はい。アレクさんのよく行ってるお店に連れて行ってもらいます」

「アレクがいるなら大丈夫でしょうけど、いろんなお店があるからね。一人になっちゃダメよ?」

「そうだぞ? ヘンな奴もいるからな」

「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ~!」

二人とも心配性だなぁ……。でも王都の街はよく知らないし、逸れない様にアレクさんの傍から離れない様にしないとな。

すると、玄関からコンコンと少し控えめなドアノッカーの音が響いてきた。

「お、来たみたいだな」

「ユイトくん、コートも忘れない様にね!」

「あ、はい!」

トーマスさんもオリビアさんも、どうやらこのまま見送ってくれるらしい。

三人でそのまま玄関に向かい、扉を開ける。

「おはようございます!」

「おぉ~……」

「まぁ~……!」

「あ、やっぱヘンですか……?」

扉を開けると、そこには髪を後ろに撫でつけ、黒のチェスターコートを羽織ったアレクさんが立っていた。

「ここに来る前にステラとエレノアに捉まっちゃって……」

「いい仕事したわね、ステラちゃん達……」

「その髪型も似合ってるよ」

「あ、ホントですか? よかった~! いつもと違うから落ち着かなくって……」

照れ臭そうに笑うアレクさん。笑い方は一緒なのに、いつもの雰囲気と違って今日は凄く大人っぽい……。

僕が何も言えずにいると、アレクさんは僕の腕にあるコートを取り右手を握る。

「じゃあ、トーマスさん、オリビアさん! ユイトの事、今日一日お借りします!」

「えぇ、楽しんできてね!」

「ユイト、迷子にならない様にな」

「……あ、行ってきます!」

トーマスさんとオリビアさんに見送られ、僕たちは家の外へ。

ここから先は、アレクさんしか知らない。

「ユイト、今日はよろしくな?」

「は、はい! 僕もよろしくお願いします!」

手を繋いで歩き出すと、胸がドキドキと高鳴って煩い。

これは大変かもしれない……。

今日一日、僕の心臓がもつか心配だ……。