軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

261 小さな芽

買い物を無事(?)に終え、ブレンダさんはお店のテーブル席で、ハルトと一緒に仕込みの手伝いをしてくれている。

今やっているのは、野菜とおにぎりに肉をくるくると巻いていく作業。これは後で焼いて、 魔法鞄(マジックバッグ) に入れてもらう予定。

「つぎは、ここを、こうやって、まいていきます!」

《 くるくるまいて~! 》

「こうか?」

「そうです! ぶれんだちゃん、じょうずです!」

《 ぶれんだ、じょうず~! 》

「そ、そうか……? 私もそう思ってたんだ……!」

ハルトはブレンダさんを褒めては次、褒めては次と、次々と他の仕込みを教えていくので、こちらの作業も順調そのもの。

リュカの声は残念ながら聞こえていないけど、身振り手振りで伝わっているみたいで、皆楽しそうだ。

褒めて伸ばす……。褒められて伸びる……。

二人とも、こういうの、向いているのかもしれない……。

「おばぁちゃん、こっちできた!」

《 できた~! 》

「あら、二人ともありがとう! じゃあ次はこれを手伝ってもらえるかしら?」

「うん!」

《 まかせて! 》

レティちゃんとニコラちゃんは、オリビアさんと一緒に大量の 鶏の唐揚げ(フライドチキン) の仕込み。レティちゃんとニコラちゃんが下味を付け、浸け込み時間が経ったものからオリビアさんに渡し、オリビアさんがどんどん揚げていく。

道中、さすがに揚げ物は出来ないなと相談し、予め用意しておく事に。

今回は鶏肉の他に、軟骨と ぼんじり(テール) の唐揚げも一緒に用意。

味見をした(つまみ食いではない)オリビアさんが、これはお酒と一緒に出せそうだと太鼓判。

そしてレティちゃんも大好きな 里芋(ターロウ) の唐揚げ、ニコラちゃんたちが食べれる様に、 南瓜(キュルビス) や 茄子(エッグプラント) 、シイタケ、オニオンを使った野菜の唐揚げも仕込んでいく。

味見として一つ食べてもらうと、これだいすき! と二人とも満面の笑みだ。

「じぃじ、めふぃくん、りりちゃん、これみてぇ~!」

《 みてみてぇ~! 》

「あぅ~?」

《 ころころでかわいい! 》

「お、二人とも上手に丸めたな! おじいちゃんのはどうだ?」

「じぃじのも、まんまる! おぃちちょ!」

《 まんまるだぁ~! 》

「あぃ~!」

《 とーますもじょうず~! 》

「そうか! 嬉しいなぁ!」

そしてハルトとリュカ、ブレンダさんの隣の席では、トーマスさんがメフィストを膝に抱えながら、ユウマとテオ、リリアーナちゃんと一緒に、餅粉で練ったお団子をころころ丸めている最中だ。以前に試供品で貰った餅粉は全部使ってしまったから、また注文しておいたもの。

オリビアさんがどうしても食べたいと、みたらし団子にして持って行く事になった。

すぐ無くなる気がするから、ご機嫌なトーマスさんにいっぱい丸めてもらお!

「さてさて……、やっと仕込めますねぇ~……」

あらかた面倒な仕込みは終わらせたので、今からやっと、 こ(・) れ(・) に手を付ける事が出来る……。昨日買った分も、今からまとめてやってしまう。

「ユイトくん、顔怖いわよ……」

「おにぃちゃん、おかお、ゆぅくんたちにみせちゃだめ……!」

オリビアさんとレティちゃんには散々な言われ様だけど、気にしないもんね……!

そして僕が嬉々として取り出したそれに、オリビアさんは顔を 顰(しか) めている。

「それも内臓……、なのよね? エリザがオススメした……」

「はい! とっても美味しそうです……!」

「オイシソウ……?」

オリビアさんはまだ鶏もつ煮込みしか食べた事が無いので、その見た目のせいか顔が引き攣っている……。

ユイトくんが作るものは美味しいけど……! でも……! と頭を抱えている。

レティちゃんもオリビアさんと一緒に覗き込み、おいしいの? と半信半疑。

「これの専門店もあるくらい美味しいんですよ? そうだ、今夜はこれを使って焼き肉にしましょうか? それとも鍋がいいかなぁ~?」

「そ、そうね……! 食べてみないと分からないものね……!」

「わたし、おなべがいい!」

「じゃあ今日はお鍋にしようね!」

「うん!」

レティちゃんのリクエストで、今夜はお鍋に決定!

ユウマはまだ噛み切れないから鶏肉を入れた鍋も用意して、ノアたちが食べれる様に野菜だけのも作らないと……。

ふふふ……。今夜は楽しみだなぁ~!

「おにぃちゃん、おかお……」

《 こわぁ~い…… 》

*****

「ノア、遅いなぁ~」

「ホントねぇ……」

夕食の準備も終え、テーブルにはノアとセバスチャン以外、皆揃っている。

昼前にちょっと出掛けてくると言って、庭の扉から“フェアリー・リングの森”に帰ってしまったんだけど……。

「ちょっと庭の方見てくるので、皆で先食べててください。あ、ユウマはこっちのお肉食べてね」

「うん!」

「ハルトもレティちゃんも、お肉飲み込めなかったら、無理しないでユウマと一緒にこっちのお肉食べてね」

「「はぁ~い!」」

オリビアさんとトーマスさんに任せ、僕は庭にある大きな木の下へ向かう。

「二人とも、どこ行ったんだろ……」

こんなに遅くなるなんて、何かあったのかな……?

心配だけど、リュカやリリアーナちゃんたちがいつも通りだから、大丈夫……?

僕は大きくなった庭の木を眺めながら、“フェアリー・リングの森”へと繋がる扉をそっと撫でる。

「わ……!」

すると、扉の周りが淡く光り、木の根元に生えている茸も次々に光り出した。

驚いて思わず扉から離れると……、

《 遅くなってしまったな 》

《 あ! ゆいと~! ただいまぁ~! 》

扉から飛び出してきたのは、セバスチャンと、その背中に乗る笑顔のノア。

「二人とも、遅いから心配したんだよ? もう皆、先にご飯食べてるから行こ?」

《 ごめんなさい~! 》

《 すまない…… 》

しゃがんで二人にそう言うと、申し訳ないとしょんぼりしてしまう。

反省してるみたいだから、これ以上はいいかな?

「ん? ノア、それ何?」

ノアの小さな両手には、土と一緒に、小さな小さな何かの植物の芽が……。

《 これね、うぇんでぃにあげるの! 》

「ウェンディちゃんに? あ、お土産?」

《 うん! 》

「なかなか会えないもんね? 喜んでくれるといいね」

《 うん……! 》

暗くて気付かなかったけど、よく見るとノアの顔も体も土で汚れている。これはご飯の前に洗わないと……。

「ノア、ご飯の前に体洗おうね」

《 わかった! 》

「セバスチャンもね? 自慢の羽が汚れちゃってるよ」

《 む……! 本当だな。わかった 》

セバスチャンの水浴びは周りがビショビショになるから気を付けないと……。

二人の頭を優しく撫でると、家の方から美味い! と、大きな声が聞こえてきた。あれは絶対ブレンダさんだ。近所迷惑になるから注意しとかなきゃ……。

《 げんきだね~! 》

《 ふむ、元気でなによりだ 》

二人にも元気だと感心されるブレンダさん。あの様子だと、どうやら気に入ってくれたみたいだな。

「ユイトく~ん! 早くいらっしゃい! 体冷えちゃうわ~!」

「はぁ~い! じゃ、行こっか」

《 うん! 》

オリビアさんに呼ばれ、ノアを手に乗せ家に向かう。

セバスチャンはひょこひょこと僕の隣を歩いてる。

《 今夜は何かな? 肉だと嬉しいが…… 》

「今日はね、モツ鍋と水炊きだよ。食べれるかなぁ? セバスチャンの口に合うといいんだけど」

《 おなべ! ぼくおやさいすき~! 》

《 私は初めてだな。楽しみだ 》

「食べれなかったら違うの作るからね」

《 ありがとう 》

三人でお喋りしながら歩いていると、また家の中からブレンダさんの声が聞こえてきた。

今度はさっきより控えめだけど……。

明日から王都。

楽しみだけど、本当は少しだけ不安もある。

……着くまでの五日間、何事も無く、無事に過ごせます様に……。