軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

213 秘密の料理教室②

「ライアンくん、何か作りたい料理とかある?」

「作りたい料理……、ですか……?」

二人で調理器具を出しながら、今日作る料理を考える。

ん~、と目を瞑り、ライアンくんは真剣に悩んでいる様子。

「えっと、ハルトくんとユウマくんの好きなものを作る前提なのですが……。けど、たくさんあってどれがいいか分からなくて……」

「あぁ~……」

二人の好きな料理、いっぱいあるからなぁ~。

僕も昨日ライアンくんに言われてから考えたけど、色々ありすぎて悩んでたんだよね……。

「ユイトさんは、二人に作ってとお願いされた料理はありますか?」

「ん~、そうだなぁ~……。ハルトにリクエストされたのはグラタンかなぁ……。皆で分けながら食べるのが楽しいんだって。ユウマは……、やっぱりマイスかな?」

「ふふ、流れ星にもお願いしていましたもんね」

「あ、そうだったね! 朝食に出したら驚いてたなぁ~」

「とっても嬉しそうでした!」

他にも色々美味しいと言って食べているけど、ユウマは とうもろこし(マイス) が特にお気に入りだ。

流れ星にマイスをいっぱい食べたいってお願いするくらいだからなぁ。

もうすぐ旬が終わっちゃうから、若干心配なんだけど……。

ハルトは結構ガッツリ目が好きな気がするな。

ピザを作った時も、 じゃが芋(パタータ) をたっぷりトッピングしていたし、確かミートボールものせてた気がする……。

二人とも、今のところ野菜も好き嫌いなく食べてるからいつも助かるんだよな。

こっちに来てから、僕も野菜が美味しくてビックリしたし。

塩胡椒もあまり使わなくても十分味が濃くて美味しいし、クリスさんが持って来てくれたお米も凄く美味しいし……。

ハルトもユウマも、試食の時にご飯をお替りしていいか訊いてきたもんね。

「ライアンくんは何がお気に入り?」

「私ですか? ん~、どれも美味しくて悩みます……! えっと、えっと……、強いて言えばハンバーグ……、でしょうか……」

「あ~、美味しいよね! ん~……。どうせなら……、全部、合わせてみる……?」

「全部……、ですか?」

ライアンくんはキョトンとした顔で僕を見つめている。

ハルトの好きなグラタンと、ユウマの好きなマイス……。お米も使いたいし、あとライアンくんの好きなハンバーグも……。ちょっと欲張りかな?

「そう、こんなのはどう?」

そう言ってライアンくんに説明すると、

「はい……、はい……。……わぁ! すっごく美味しそうです!」

「ちょっとボリュームはあるけど、二人とも喜びそうじゃない?」

「はい! 私も食べたいです!」

「よし! じゃあ決定だね!」

作る料理も無事に決まり、まずは材料の準備……! なんだけど……。

「あ、お肉が足りないかも……。また買い出しに行くから、先にソースを作っちゃおうか?」

「はい! よろしくお願いします、ユイト先生!」

「ふふ、先生に任せてください!」

二人で笑い合い、早速調理の準備。

使うのは強力粉と牛乳、バターに塩、胡椒。

そしてハンバーグにも使っているナツメグ。材料はこれだけ。

ナツメグもそろそろ在庫が切れそうなんだよね。

カビーアさんが来る前に無くなりそうだなぁ……。

「まずはバターを弱火にかけて溶かすところからだね。これがコンロ用の魔石だよ。こっちが弱火で、こっちに傾けたら強火になるからね」

「はい……!」

今日はライアンくんに一人で作ってもらう為、火を点けるのもやってもらう。

「ここに触れたらスイッチが入るよ」

「初めて触ります……!」

火を使うので、僕はライアンくんが火傷しない様に横に付いて教えていく。

初めて触ると言うコンロ用の魔石に、少し緊張気味の様だ。

だけど真剣な表情で小鍋を握り、バターが溶けるのをジッと見つめている。

「そろそろかな? ここに、この強力粉を入れて焦げない様に満遍なくかき混ぜてください」

「はい……!」

使うのは薄力粉でも良かったんだけど、ちょっとしっかり目のソースにしたいから今回はこっち。

「先生! これくらいですか?」

「ん、あともう少しだね。このソースがフツフツしてきたら火を止めてね」

「フツフツしたら……!」

ライアンくんはまたもや真剣な表情で中身をかき混ぜている。

しばらくすると、中身がもったりからさらさらな状態に変わっていく。

「あ……! さっきと違います……!」

「うん、良い感じ! じゃあ一旦火を止めよっか」

「はい!」

焦げない様に一旦火を止めて、今度はこれに冷えた牛乳を足してかき混ぜていく。

一気に入れて混ぜた方が早いけど、溢したりしたら危ないから、少量ずつ加えてダマにならない様にかき混ぜてもらう。

「さ、また火を点けて~……。この牛乳を少しずつ入れて、ソースを伸ばすような感じで混ぜてください」

「はい……!」

ライアンくんが牛乳を入れると、さっき混ぜていた中身が固まって団子状に……。

「あぁ……っ! 失敗ですか……?」

ライアンくんが不安気な声を上げるけど、これでいいのです!

「これでいいんだよ! この塊をね、牛乳を入れて伸ばして、って繰り返して滑らかなソースにしていくんだよ」

「な、なるほど……! これでいいんですね……!」

失敗じゃないと分かると安心したのか、ライアンくんのやる気も上昇。

またもや真剣にかき混ぜ始めた。

「ど、どうでしょうか……?」

しばらくかき混ぜていたライアンくんが、僕に最終確認をお願いしてきた。

小鍋の中には、とろみの付いた真っ白で滑らかなホワイトソース……!

「うん! 完璧! 後は塩、胡椒とナツメグを加えて、味を調えるだけ。よく出来ました!」

「や、やったぁ~!」

慣れない作業に緊張気味だったけど、最後は嬉しそうに笑みを浮かべてくれた。

完成したホワイトソースは、夕食の時間までバットに移して冷蔵庫へ。

ハンバーグ用のお肉は少し足りないから、買い出しの時に多めに買って来よう。

すると……、

「殿下………! ユイトくん……! ハルトくんたちが起きました……!」

「「えっ? もう!?」」

ディーンさんがこそこそと小声で僕たちに教えてくれる。

だけど、こんなに朝早く起きてくるとは予想外だった……!

「お二人の事を探してます……!」

「わぁ……! 早く片付けないと……!」

「あ、そうだ……! ライアンくん、ここに座ってて……!」

「え? あ、はい……!」

僕は急いで小鍋に牛乳を入れ、コンロで温め始める。

するとそこに……!

「あ~! いました!」

「いたぁ~!」

ハルトとユウマがパジャマ姿のまま、とことことお店の中へ。

足止めしてくれていたであろうサイラスさんも、二人の後ろからごめんと申し訳なさそうに僕たちに合図を送る。

「二人ともおはよう。まだ起きるには早いんじゃない?」

二人はおはようと挨拶した後、ぷくぅ~っと頬を膨らませ僕とライアンくんを見てこう言った。

「ん~ん、おにぃちゃんと、らいあんくん、さがしにきました」

「はるくんとねぇ、しゃがちたの~! にゃにちてたの?」

どうやら、朝起きて僕たちがいないから目が覚めてしまったみたい。

ユウマは寝起きだからか、舌っ足らずな口調がさらに輪をかけて……。

まぁ、可愛いから問題ないんだけど。

「ごめんね? 目が覚めちゃったから、ライアンくんとホットミルクを飲んでたんだよ。二人も飲む?」

「ほっとみるく、ですか? のみたいです!」

「ゆぅくんも~!」

「ふふ、じゃあちょっと待っててね?」

「「はぁ~い!」」

ホットミルクと聞き、ハルトもユウマもすっかりご機嫌に。

何とか二人の気を逸らす事に成功したかな……?

サイラスさんもディーンさんも、おぉ……! と感心した様に僕を見つめている。

お二人の分も用意しないとね?

「はぁ~、久し振りに飲んだかも……」

「私もですよ。温まりますね……」

サイラスさんとディーンさんは、ホットミルクを飲んで体が温まってきたのか、ホッと一息。

ハルトとユウマ、ライアンくんもカップを両手で持ち、コクコクと美味しそうに飲んでいる。

「はぁ……、おいしいです……!」

「ぽかぽかしゅる~!」

「あ、二人とも白いお髭が出来てます!」

「「らいあんくんも~!」」

「えっ!? 本当ですか!?」

三人はお互いに出来た牛乳の髭を見て笑いあっている。

そのほんわかする光景に、ついつい笑みが零れてしまう。

「「あ……」」

「え?」

不意にサイラスさんとディーンさんの気まずそうな声が聞こえ、お二人の向く方へ振り向くと……。

お店と家とを繋ぐ扉が開き、そこから顔を覗かせていたのは……。

「おにぃちゃんたちだけ、ずるい……!」

「(コクコク)」

「えぇ~?」

頬を膨らませたレティちゃんとウェンディちゃん。

そしてそんな二人をあらあら、と宥めているオリビアさんだ。

その後ろからはメフィストを抱っこしたトーマスさんと、交代で寝ていたフレッドさんとアーロさんも起きて来た。

まだ早いのに、結局全員が起きて来ちゃったのか……。

「わたしもいっしょに、のみたかった……!」

「(コクコク)」

二人とも頬を膨らませたままだ。

「ふふ、そうよねぇ? どうせなら私たちも一緒に過ごしたかったわよねぇ?」

「あ~ぶ~!」

「えぇ~? メフィストまで……。ご、ごめんなさい……?」

何故か僕が謝っているんだけど……?

機嫌が直る様に、僕は追加でホットミルクを温める事に……。

「ふふ、ここはいつも賑やかで楽しいです!」

「あら? それには殿下も含まれてるのよ?」

「え? 私もですか?」

「そうだな。殿下もすっかりここにも馴染んだな」

考えてみたら、ライアンくんたちが来てからもう三週間。

色々な事があったなぁ……。

「王都を発つ前は、まさか妖精と契約するとは、誰も想像もしてなかっただろう?」

「「「「確かに……」」」」

トーマスさんの言葉に、サイラスさんとディーンさん、フレッドさん、アーロさんも大きく頷いた。

ウェンディちゃんはライアンくんの肩に座り、何故か誇らしげ。

「殿下、城に戻ったら皆で祝ってくれるそうですよ」

「えっ!? 本当に……?」

フレッドさんの所持している通信用の魔法板に、イーサンさんから連絡が入ったそうだ。

「はい、決定事項だそうです」

「ハァ……、そうか……」

溜息を吐くライアンくん。

どうやら、自分の事で目立つのは苦手みたいだ。

「まぁ、帰ってくるのを皆楽しみにしているだろうな」

「そうね、殿下だけ長引いちゃったものねぇ……」

「殿下は学園もありますし、帰ったら忙しいですよ」

「むぅ~……、頑張るよ……」

やっぱり、王子様は忙しいんだなぁ……。

王都に帰っても、体を壊さない様に気を付けてほしいな……。

「ふふ、ハルトちゃんもユウマちゃんも、殿下と仲良くなれてよかったわね?」

「はい! らいあんくん、いちばんの、おともだちです!」

「ねっ! おともらち!」

「グゥッ……!」

ハルトとユウマの無垢な笑みに当てられ唸るライアンくんに、トーマスさんたちはこちらへようこそと言う様な満面の笑みを浮かべ、ライアンくんを見つめていた。

だけど……、ライアンくんのお礼の料理、無事に完成するのかなぁ~……?

一抹の不安が胸を過るが、一過性のものと信じて僕は買い出し用メモを書いていく。

もちろん、ハンバーグ用のお肉も余分にね。

どうか、このサプライズが無事成功します様に……!