軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

205 絵本の世界

「「のぁちゃんだぁ!!」」

木の扉から顔を覗かせ、にこっと満面の笑みを浮かべるノアと、後ろから楽しそうにこちらを覗く妖精さんたち。

ハルトとユウマの声に、ノアはふわふわと羽をはためかせこちらに飛んでくる。

そして僕たちの頬にぎゅっと抱き着き、いつもの挨拶。

可愛い挨拶に、とっても癒される……。

「ノア、久し振りだね!」

僕がノアを手の平に乗せてそう声を掛けると、ノアはコクコクと頷き、また頬にすりすりと抱き着いてくる。

可愛くて、ついつい頬が緩んでしまう……。

他の妖精さんたちも、トーマスさんやレティちゃんの下へ飛んでいき、頬に抱き着きご挨拶。

レティちゃんはウェンディちゃん以外の妖精さんたちに会うのは初めてで戸惑っていたけど、妖精さんたちには関係ないのか、もしくはウェンディちゃんに聞いていたのか、躊躇もせず抱き着いている。

オリビアさんはメフィストとレティちゃんに妖精さんたちが抱き着いているのを見て、可愛い……、と悶絶中だ。

「え、なん……、え……?」

「よ、妖精……?」

イドリスさん以外は妖精の存在を知らされていなかったらしく、こちらに来たダリウスさんたちが驚きの声を上げる。

だからキースさんもあんなに驚いていたのか……。

その声に反応して、妖精さんたちがふわふわとダリウスさんたちの方へと飛んでいくと、ダリウスさんの手の平にちょこんと降り立った。

そのあまりの可愛さに、ダリウスさんも口を開けたまま、ただただ感動している。

ブレンダさんとケイティさん、モリーさんとルーナさんはオリビアさんと同様に口元を押さえ、子供たちに抱き着く妖精さんたちを見て悶絶している。

意外だったのはカッコいいルーナさんだけど、妖精さんを見て感動しきり。

可愛いと何度も呟いていた。

「ゆ、ユイトさん……。どうしましょう……!」

ライアンくんはオロオロとするばかり。

そりゃあ、家の庭にフェアリー・リングを作ったとなると、大騒ぎになるよね……。

作った当の本人は友達に会えて嬉しいのか、よろよろとしながらも他の妖精さんたちと一緒に大はしゃぎ。

項垂れるライアンくんを見て、首を傾げていた。

「これは……、どうしようか……」

庭にあった木は以前の倍の大きさに成長し、ブランコのロープにも伸びてきた蔦が絡んでいる。

幸い、僕たちの家のお隣はカーターさんの家だけ。

カーターさんの家の庭からは丸見えなわけだし、元に戻らなければ説明に行かないといけない……。

そして木の根元にある小さな扉……。

開けたままのそこを覗くと神秘的な森の中……、

「えっ!? 梟さん!?」

「ホォ──……」

……ではなく、こちらに来たそうにしている梟さんが……!

どうやら扉が小さすぎて体が入らない様子。

羽の先だけがこちらに出ているけど、切なげに鳴く梟さんにハルトもユウマも扉を覗きながら困り顔。

「ふくろうさん、これないです……」

「しゃみちぃねぇ……」

「ホォ──……」

その様子に気付いたのか、レティちゃんもこちらへとことこと近寄ってきた。

メフィストも梟さんに会いたいらしく、トーマスさんに抱っこされながらこちらへと向かって来る。

トーマスさんも僕たちと一緒にしゃがみ込むと、扉の向こうにいる梟さんに気付きハァ……、と溜息……。

「“森の案内人”か……。これはさすがに……、可哀そうだな……」

「ホォ──……」

さっきから切なげにこちらを覗く姿に心が痛む……。

どうにかならないものか……。

ライアンくんによると、ウェンディちゃんは魔力を使い過ぎて今日はこれ以上使うのはムリらしい。

だとすると、梟さんはこっちに来れないままか……。

「妖精さんたちは、これを大きく出来たりとかしないかな……?」

ふと、ウェンディちゃんが作った扉なら、同じ妖精同士なら大きく出来るんじゃないかと思ったんだけど……。

僕の提案にノアは顔をフルフルと横に振り……。

「ウェンディは、この子たちの中でも一番魔力が強いそうだ。自分たちではどうにも出来ないらしい」

「そっかぁ……。難しいのか……」

トーマスさんがノアの通訳をしてくれ、これ以上はムリだと把握した。

梟さんが悲しそうにこちらを覗いている……。

何とかしてあげたいけど……。

「おにぃちゃん、めふぃくんに、ひろげてもらったら……?」

「え? メフィストに……?」

レティちゃんの提案に、僕とトーマスさんは思わず顔を見合わせる。

「わたしはむりだけど……。めふぃくんなら、できるかも……」

通常、人の魔力に自分の魔力を混ぜる事は出来ないけど、メフィストなら難無く出来るらしい……。

まぁ、勝手にレティちゃんの魔法陣広げるくらいだしなぁ……。

しかも妖精の魔力に混ぜるとなると、相当の魔力とコントロールが必要になるんじゃないかと。

確かにメフィストは、僕たちとは少し違うけど……。

「どうだろう……?」

「出来そうで怖いな……」

「メフィストちゃんなら、やりかねないわね……」

トーマスさんもオリビアさんも、もうそんな事では驚かないぞという顔をしている。

さすがにね、ウチの子たちは色々ヤラかしてるからね……。

「メフィスト……」

「あぅ~?」

僕が名前を呼ぶと、こてんと首を傾げ、なぁに? と言う様に僕を見つめている。

今は赤ちゃんだけど、分かるかなぁ……?

「この扉を広げる事って……、出来る……?」

僕が半信半疑で訊いてみると、メフィストは分かっているのかいないのか、にぱっと笑顔に。

そしてトーマスさんの腕に抱えられながら、小さな右手をその木に向けた。

「あ~ぶ!」

「うわっ!」

「きゃあっ!」

すると突然、突風が吹き荒れる。

ご機嫌で右手を翳すメフィストの腕からは、ハッキリとは分からないけど空気が渦巻いている様に見える。

その風の勢いに僕はハルトとユウマが転ばない様に抱き寄せ、思わず顔を隠す。

レティちゃんはオリビアさんに抱き寄せられ、ライアンくんはフレッドさんに、そしてそれを囲む様にサイラスさんたちが前に出て庇っている。

妖精さんたちも飛ばされない様に、近くにいたダリウスさんやグレートウルフたちにしがみ付いていた。

チラリと顔を上げると、トーマスさんはメフィストを抱えたまま体がよろけない様に踏ん張っている。

もしかしたら、凄い風圧が掛かっているのかもしれない……。

だけどその渦巻く風の先にある小さな穴は、見る見るうちに、どんどんどんどん大きくなっていき……。

ダメだ、これ以上は顔を上げていられない……!

僕はハルトとユウマをぎゅっと抱きしめ、風が落ち着くのを待つ事にした。

風が収まり、辺りはシンと静まり返っていた。

「あぃ~!」

そして聞こえてきたメフィストの楽しそうな声に顔を上げると、そこには人一人が通れるほどの大きな木の扉が……。

しかも、ちょっと模様が入ってオシャレになってる……!

「ホォ───ッ!」

そして開いた扉から、梟さんが飛び出してきた。

嬉しそうに羽をバッサバッサと広げ、僕たちの下へ歩いてくる。

その姿は愛嬌があって可愛らしい。

そして礼を言う様に、しゃがんでいるトーマスさんに抱えられているメフィストの頬に、頭をスリスリと撫でつけた。

これにはメフィストもキャッキャと手を叩き、大喜びだ。

「ふくろうさん! これました!」

「よかったねぇ! ゆぅくん、うれち!」

「ホォ──!」

梟さんの登場にハルトもユウマも大喜び。

グレートウルフたちも興味があるのか、梟さんの周りをウロウロと。

ノアも妖精さんたちもこれてよかったね、と言う様に、梟さんの背中に抱き着きはしゃいでいる。

こうして見ると、家の庭に現れた扉の付いた大きな木にグレートウルフの群れ、梟さんに妖精さんたちと、絵本から飛び出してきた感が……。

そこにハルトとユウマ、メフィストにレティちゃん、ライアンくんも加わると、さらに童話の挿絵に見えてくる……。

「トーマスったら、顔がデレてるわね……」

「ホントですね……」

その中心には、メルヘンな世界に取り込まれたデレデレと破顔するトーマスさんの姿が……。

突然の事に驚いたけど、トーマスさんが幸せそうで、何よりです……。