軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

194 お米の流通計画

「皆さぁ~ん! お待たせしました~!」

そう言ってテーブルにドンと鍋を置くと、皆が鍋を覗き込むように集まってくる。

「さ、湯気で火傷しない様に少し離れててくださいね? では、オープン!」

鍋の蓋を開けると、そこにはふっくらつやつやのお米たちが……!

「わぁ~! つやつやです!」

「おぃちちょ!」

お米が炊き上がり、トーマスさんに抱えられながら鍋の中身を覗くハルトとユウマは大興奮。

だけど、お米を食べた事のない皆はイマイチ反応が薄いような……。

「確かにキレイだけど……。これがそんなに美味しいの……?」

「にわかには信じがたいですが……」

初めて見るお米に対し、どう反応していいか分からない様子。

皆の顔が困惑気味……。ちょっと残念……。

「ばぁば! おににり、おぃちぃの!」

「おむらいすも、おいしいです!」

ハルトとユウマも美味しさを分かってもらおうと奮闘中だ。

よ~し! これは実際に食べてもらわないとダメだな!

僕は人数分のお皿に、炊き立てのお米を少しずつ盛っていく。

「皆さん、僕はちょっと準備してくるので、先にお米の試食をお願いします! よ~く噛むと甘味が出てきますから!」

「準備……?」

「ユイトくん、何をするの……?」

「えへへ……! とってもいいものです!」

「いいもの……?」

皆が首を傾げるけど、これは出来上がるまでのお楽しみ!

残ったお米を鍋ごとキッチンへ持っていき早速準備に取り掛かる。

さぁ! 作るぞ~!

あ、メフィストの離乳食も作っておこうかな~。

「はるくん、ゆぅくんのとってぇ~!」

「うん! あついから、きをつけてね!」

「うん! ありぁと!」

ユウマはハルトに強請って、ほかほかのお米を盛った皿を取ってもらっている。

二人とも久々のお米に顔が嬉しそう。

「「いただきます(まちゅ)!!」」

フーフーしながらパクリと頬張ると、二人の顔が途端に破顔した。

「「ん~!! おいし~!!」」

二人の幸せそうな顔が見れて僕もすっごく嬉しい!

パクパクと頬張り、二人のお皿はすぐに空になってしまった。

それを見ていたオリビアさんたちもゴクリと息を呑む。

あ、サイラスさんたちもやっとお米を口にしてくれた……!

「おにぃちゃん、もうちょっと、たべてもいい……?」

「ゆぅくんも……! おこめ、おぃちぃの……!」

二人はわざわざ僕の所まで来て、お替りを食べていいか訊いてくる。

いっぱいお替りすればいいのに、可愛いなぁ~!

「いいよ! でもおにいちゃん、今とってもいいもの作ってるんだけどなぁ~?」

「「いぃもの~?」」

「うん、二人も喜ぶと思うんだけどなぁ~? その前に食べるとお腹いっぱいになっちゃうけど……。どうする?」

「「う~ん……」」

二人は互いに顔を見合わせ相談中。

「ぼくたち、がまんします!」

「にぃにのごはん、たのちみにちてりゅね!」

そんな可愛い事を言いながら、二人はとてとてと味見をしているライアンくんとレティちゃんの下へ向かう。

二人がおいしい? と訊くと、もちもちしておいしいと好評みたい。

タレの準備は終わったけど、もう時間も遅いしお菓子は朝に作る事にした。

だからここからは夕食の準備だな。

その後はオリビアさんとアーロさん、ディーンさんと明日のバーベキューの仕込みが待っている。

けっこう時間が掛かりそうだ……。

「クリスさん、すみません。呼び止めちゃって……」

「いえ、大丈夫ですよ。コメでどんな料理を作るか興味もありますし」

せっかくだし、クリスさんたちにもここで夕食を食べてもらう事に。

僕が作るものが気になるのか、カウンター席に座りジッと観察している。

その二つ隣の席に座っているフレッドさんも僕の動きを観察している様で、何だか落ち着かない……。

さっきまで二人の雰囲気が少し怖かったんだけど、こうやって関心のある物をずっと観察しているところは少し似ているような気がする。

もしかしたら、仲良くなれるんじゃないのかなぁ……?

まぁ、今は余計な事は言わないでおこう……。

それよりも……。

「お二人とも、お米の味はいかがでしたか?」

肝心なのは味の感想! 気に入ってもらえたら嬉しいんだけど……。

「えぇ、見た目よりも弾力もありますし、コメ本来の甘さとでも言うのでしょうか? とても美味しく頂けました」

「少量でも腹に溜まる感じはいいですね。これなら騎士団の訓練時にも使えそうです」

「何より日持ちもして腐りにくいのがいいですね。原価も比較的安いので、これを普及させれば子供たちにも満足に食べさせられるのではないかと」

「それは賛成です。子供たちは国の宝ですから」

「「む……」」

この二人は案外、気が合うのかもしれない……。

「あら、ユイトくん。トマトソースを使うの?」

僕がフライパンで具材を炒めていると、お米の味見を終えたオリビアさんがやって来た。

「はい、これで炒めるととっても美味しいんです!」

「まぁ~! 本当ね……! すっごくいい匂い!」

と言っても、この人数分だから結構な量なんだよね……。

「あとは何をすればいいの?」

「え? 手伝ってくれるんですか?」

「当たり前じゃない! それで? 私は何をすればいいかしら?」

「じゃあですね……、これを……、こうして……」

「ふんふん……、大丈夫よ! 任せてちょうだい!」

「はい! お願いします!」

オリビアさんにお願いして大量の卵をボウルに割ってもらう。

その間に僕はご飯とトマトソースで炒めた具材を混ぜ合わせ、さらに炒める。

その匂いにつられてか、皆がカウンター席の周りに集まりだした。

「おにぃちゃん、とっても、いいにおいです!」

「ゆぅくん、はやくたべちゃぃ!」

「もうすぐ出来るよ~! あ、皆でテーブルの上、片付けてもらってもいい?」

「「はぁ~い!」」

「私はお皿を集めます!」

「わたし、てーぶるふいてくる……!」

ハルトとユウマ、ライアンくんにレティちゃんは仲良く四人でテーブルを片付けに行ってくれた。

アーロさんとディーンさんは、買ってきたお肉や野菜を丁寧に冷蔵庫に仕舞ってくれている。

トーマスさんはメフィストを抱っこし機嫌が良さそう。

サイラスさんは、子供たちと商会の人二人と一緒にテーブルを片付けてくれている。

そして、フレッドさんとクリスさんはと言うと……、

「ならば、このコメを孤児院への支援物資の枠に取り込めるか確認してみましょう」

「そうなると枠に通った場合、コメを作る人手も足りなくなりますね……」

「そちらも商業ギルドや職業紹介事業に正式に募集してもらえば、求職中の方も集まるのではないですか?」

「コメを栽培している地域は王都よりも北にあるので……。移住も可能な方を募るしかないですね……」

「あとは配送ルートですね。それは規模的にもそちらの商会が担う事になりますが……」

「それは心配無用です。各領ごとに商会専用の配送ルートと休憩所がありますから」

二人とも真剣な顔をして、コメの流通を考えているみたい……。

まぁ、おにぎり一個分でもかなりお腹に溜まるから力仕事してる人たちにもいいと思うな。

孤児院にも送るって言ってるけど、育ち盛りの子供たちには具材を混ぜて工夫した方がいいかも知れない……。

「フレッドさん、クリスさん、お米を送るならお鍋も必要になりますよ? あと、炊き方も最初に何人かに教えた方がいいかも知れません」

「炊き方……。確かに……」

「そうですね……。孤児院だと量も多くなるので、慣れるまでは大変かもしれませんね……」

顎に手を当て、考え出す二人。

さっきまでとは雰囲気が違って面白い……。

「そうだ!」

すると、フレッドさんが良い事を思いついたとばかりに嬉しそうな顔を僕に向ける。

「王都に来る際、ユイトさんが炊き方をご教示頂けないでしょうか?」

「ぼ、僕ですか……!?」

「はい!」

突然の事に、僕も、さらには隣で調理しているオリビアさんもビックリ……。

「ユイトさんなら色々調理方法も知っていらっしゃいますし、適任かと!」

「それはいい考えですね」

クリスさんもうんうんと頷いている……。

さっきまで火花が散っていたはずなのに……!

だけどそんな大役……、他に適任者がいるんじゃないのかな……?

「ユイトさん、どうでしょうか……? もし通れば、の話にはなるのですが……」

そう言いながらも、フレッドさんは今にもキュ~ンと泣きそうな顔をして僕を見つめている……。

マズい……、以前に見たフレッドさんのもふもふの耳と尻尾の幻覚が……。

「ユイトさん……」

「ユイトくん……」

もう……! クリスさんとオリビアさんまで……!

「ハァ……、分かりました……。お力になれるかは分かりませんが、炊き方と簡単なレシピなら……」

「本当ですか!? ありがとうございます!」

僕が了承した途端、フレッドさんはにっこりと笑みを浮かべメモを取り出した。

その顔はしてやったりの顔だ……。

……あ! さっきのあれは、さては演技だったな!

僕がフレッドさんを見つめると、ふふふと不敵な笑みを浮かべた。

フレッドさんのその変わり様に、オリビアさんも、いつもは表情の動かないクリスさんも驚いて口が開いたままだ。

「ふふ、ユイトさん……。王都に来たら忙しいですね……!」

軽やかにペンを走らせ、僕は紙を手渡される。

なになに……?

「日程未定……。決まり次第順次連絡……。コメ調理講座……、講師、ユイト……」

「よろしくお願い致しますね! ユイト先生!」

にっこりと笑うフレッドさん。

この人は絶対に敵に回しちゃいけないと、僕はこの時心に決めた……。