軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

103 “オリーブの樹” 臨時開店②

「……本当に、私もご一緒してよろしいのでしょうか……?」

我が物顔で村の通りを闊歩するモサッとした髪の男に、オドオドと声を掛ける青年と言ってもおかしくない顔立ちの男。

「なんだ、エドワードも一緒で問題ないだろう? なぁ、トーマス?」

「あぁ。心配しなくてもオリビアとユイトの事だから、多めに作って待っていると思うが」

「そ、そうなのですか……?」

青年の顔立ちをした男の名前はエドワード。

このユンカース領を治めている父から、今年領地を受け継ぎ、晴れて領主となった。

会食の場ではあの厭味ったらしい使いの男もいたが、どうやら我が孫のように思っているらしくエドワードを見守る目はオレとオリビアのそれと同じだった。

まぁ、愛情の注ぎ方が少し違うだけで、根本は同じなのだろう。

オレを見るとそそくさと隠れていたが……。

「エドワード、昨日も言ったが、“この視察の間は我を王族として扱わない様に”せっかくの休暇なのだからな!」

「は……、はい……」

ガハハと口を大きく開けて笑うバージル陛下に、困惑気味のエドワード。

陛下の後ろで呆れてものも言えないという表情をするのはイーサンだ。

後でたんまり叱られることだろう。

「トーマスおじさま……。私も仲良くできるでしょうか……?」

そう言ってオレの傍を離れないのはライアン殿下。

年の近いユイトたちに会うのが少し緊張する様だ。

「殿下、あの子たちにそんなに緊張しなくても大丈夫。特に下の子たちはまだ幼いから、遊んでやってくれると嬉しいのだが……」

「大丈夫でしょうか……? 私はサイラスとフレッド以外、あまり話したことが無いのです……」

そうだな、学園でも親しい者はいないそうだし……。

殿下の上の兄たちも大分上だったから、年の近いのはフレッドくらいか……。

「なら、ライアン殿下。うちの子たちは、殿下の初めての年下の友人、という事になるのかな?」

「……友人、ですか……?」

「公の場では難しいかも知れないが、ここでは少し気楽に過ごせばいい。たまには父上を見習ってもいいと思うんだが?」

そう言って大口を開けて笑っているバージル陛下を見ると、ライアン殿下も肩の力が少し抜けたようだ。

「……友人、なれるといいな……」

オレにしか聞こえない小さな声でポツリと囁くと、その頬はほんのりと赤く染まっていた。

「あっ! いいことを思いついたぞ!」

前を歩く陛下が急に立ち止まり、オレたちに向かって振り返る。

あの顔は何か悪戯を思いついたんだろう。

「その子供たちには私たちの身分は偽ろう! 面白そうだろう?」

頭を抱えるイーサンたちを尻目に、その顔は無邪気な子供のように笑みを浮かべていた……。

*****

「もうそろそろでしょうか……?」

「そうね、今回はきっとビックリするわよ~! ふふ、楽しみだわ!」

僕は店の扉を開けて、トーマスさんたちが来るのを今か今かと待っていた。

そんな僕の足元では、ハルトとユウマも同じように外を覗いている。

「おじぃちゃん、まだ、こないです……」

「もう暗くなってきたもんねぇ……」

「じぃじ、びっくりすりゅかなぁ?」

「そうだねぇ、美味しそうに出来たから、驚いちゃうかもね?」

そんな会話をしながら外を覗いていると、向こうからすごい速さで男の人が走ってくる。

何だろうと思っていると、僕たちの前で立ち止まった。

「こんばんは、私はアーロと申します。ユイト様とハルト様、ユウマ様とお見受けしますが?」

「は、はい……。こんばんは?」

「おにぃさん、こんばんは!」

「おにぃしゃん、しゅごぃねぇ! とってもはやぃの!」

「はは、ありがとうございます! もうすぐトーマス様たちがお見えになりますので知らせに参りました」

すごい速さで走ってきたのに、息切れもせずにすごいなぁと感心していると、アーロさんはハキハキとした口調でトーマスさんたちの事を教えに来てくれたみたい。

「あ、中でお水飲みますか? もう準備出来ているので……」

「いえ! 私は警護に当たりますのでご心配なく! お心遣いに感謝致します!」

そう言ってアーロさんはにこやかに笑うと、僕たちが覗く扉の横に移動し、片手を腰にぶら下がる剣に添えて正に直立不動という見本のように立っていた。

ハルトとユウマもかっこいぃと言って興奮している……。

「あ! おじぃちゃんです!」

「じぃじきたぁ~!」

「あっ! ハルト! ユウマ! 危ないよ!」

アーロさんが走ってきた道の向こうに、トーマスさんたちの姿が見えてきた。

ハルトとユウマは扉をするりと抜けて真っ先に走っていく。

そしてトーマスさんに抱き着くと、そのまま片手に一人ずつ抱っこされて歩いてくる。

「トーマスさん、おかえりなさい!」

「ユイト、ただいま。遅くなってすまないな」

「いえ、大丈夫です!」

トーマスさんの後ろには、ゾロゾロと体の大きい男性陣が……。

「あ、皆さん、初めまして! ユイトと言います。遠いところからお疲れさまでした! もう準備出来てますので、中にどうぞ!」

僕が笑顔でそう言うと、トーマスさんは満足そうにハルトとユウマを下ろし、僕の代わりにお店の扉を支えてくれた。

ふとトーマスさんの足元に、ハルトより大きい男の子が僕をジッと見つめているのに気付く。

この子が言ってた息子さんだな。

「こんばんは。疲れてない? 中にお料理揃えてあるから、一緒に食べようね?」

僕がしゃがんでそう言うと、その子は目を見開いてキラキラと嬉しそうに笑顔を浮かべた。

ハルトとユウマも躊躇もせずその子の手を取り、中へ案内する。

なんだか周りの人が驚いているけど……?

(……あっ! 偉い人の息子さんなんだった……!)

僕がやってしまったと肩をすくめ、恐る恐るトーマスさんと周りの人を見ると、なんだか髪がもさもさしたおじさんが、ニコニコと嬉しそうに男の子とハルトたちを見つめていた。

何とか怒られずに済んだのかな……?

僕はホッと胸をなでおろし、気を取り直して案内する。

「さ、どうぞ! 皆さん、今夜は楽しんでいってください!」