軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

②⑧

その答えを聞いて三人は唖然としている。

ローズマリーはそんなに驚かれるとは思わなかったため予想外の反応に驚くばかりだ。

「どうかしましたか?」

「リオネルに嫌なことをされたのかしら?」

「いいえ、まったくありません」

「もしかして見た目がローズマリーのタイプとは……」

「いいえ、リオネル殿下は完璧だと思います。素晴らしい王太子です」

それはリオネルと共にいたら自然と理解できることだ。

リオネルはとにかくモテるし、老若男女に大人気だ。

特にローズマリーと同じくらいの歳の少女たちには熱視線を送られている。

その中性的な顔立ちも、ぱっちりとした目も長いまつ毛も大聖堂に飾られていた彫刻のように美しくて完璧だ。

彼が通れば黄色い声がそこら中に響き渡るし、剣の腕もかなりのもので彼に敵うものは国内にはいないらしい。

肩書きも王太子で魔法の力も強いとあらば、男性としての魅力も十分すぎるくらいだ。

むしろローズマリーから見て、リオネルは何でもできてしまうし、心も広く優しく強くて欠点が一つも見当たらない。

そんなところが完璧すぎて恐ろしい。

リオネルと同じ歳で、ローズマリーの身近にいたのはクリストフだ。

どうしても彼と比べてしまうのだが、グリンピースとステーキくらいの差はあると言ってもいいだろう。

それでも三人はリオネルとの結婚を拒否したことを疑問に思っているようだ。

だが、ローズマリーが断ったのには明確な理由があった。

「なら、どうして……」

「もしわたしがお二人の娘になったら、リオネル殿下はお兄さんなります。兄妹では結婚はできないと思います」

「「「……!?」」」

「それともカールナルド王国ではバルガルド王国とは違う制度があるのでしょうか?」

ローズマリーの認識している家族とはそういうものだった。

もしかしたらカールナルド王国にはローズマリーが知らないルールがあるかもしれないが、考えた結果このような形に辿り着く。

「いや……我々の言い方が悪かったようだ」

「言い方ですか?」

「リオネル、すまなかった。ローズマリーにきちんと説明しておいてくれ」

「はい、任せてください。それからローズマリーが勘違いしないようにしっかりと説明いたしますから安心してください」

「そうしてちょうだい。けれどローズマリーのこういうところも純粋で可愛いわ……。リオネル、彼女を色々な悪意から守っていきましょうね」

「もちろんです。ローズマリー、後でしっかり説明するから安心してくれ」

「…………? わかりました」

額を押さえて反省する国王、両手を合わせてうっとりとローズマリーを見つめている王妃。

リオネルは申し訳なさそうにしていたが、ローズマリーは彼の説明を待つことにした。

食事が終わり、夜の月を見上げながらローズマリーはリオネルと中庭を散歩をしていた。

ローズマリーは彼によく外に連れ出してもらってから、外に行くことが大好きになっていた。

夜風はひんやりとしていて気持ちいい。

月に照らされた草花はいつもとは違って見える。

(美味しそうではありませんが、なんだかとても幻想的で綺麗です)

ローズマリーは中庭のベンチに腰掛けながらリオネルとのんびりと月を眺めていた。

月が今日のデザートに食べたアイスクリームのように美味しそうだと思っていると……。

「先ほどの父上と母上の話なんだが……」

「はい、説明をよろしくお願いいたします」

「娘になるというのは、僕と結婚して義理の娘になるという意味で言っていたんだよ」

「……ギリノムスメ?」

義理の娘と聞いてもパッとしないローズマリーだったが、リオネルが丁寧に説明してくれた。

「なるほど。勘違いをして申し訳ありませんでした」

「いや……」

ローズマリーはリオネルのわかりやすい説明に納得していた。

やっと意味を理解したローズマリーだったが、このような話にはまだ疎いため、言い回しが違うだけで勘違いしてしまうこともしばしばだ。

クリストフやミシュリーヌ、教会の人たちにも『頭が固い』『食べ物のことしか頭にないのか』とよく言われていたが、ローズマリーは教えられた知識しかないだけである。

「「…………」」

リオネルには迷惑をかけてばかりで申し訳ない気持ちだった。

二人の間には気まずい空気が流れている。

鳥の鳴き声や草花が風に揺れる音が聞こえてきて瞼を閉じていると……。

「ローズマリー、僕は君と結婚したいと思っているんだ」

「それは……カールナルド王国のためにですか?」

「……!」

淡々と返事をするローズマリーにリオネルは大きく目を見開いた。

魔法樹には聖女の力が必要不可欠だ。

国王や王妃もローズマリーを受け入れてくれてくれてはいるが、何か利益がなければ出会ってすぐに結婚しようとは思わないだろう。

それにバルガルド王国でローズマリーは散々、教会の人たちにそう言われていた。

「クリストフ殿下ともそのような理由で婚約したと聞きました。わたしは別に構いません」

「ローズマリー……」

「わたしはまだまだ利用できるということですから」

「…………」

つまりこの生活がまだ続けられるということだ。

ローズマリーがそう言うとリオネルはとても悲しそうに眉を寄せる。

(わたしは、また間違えてしまったのでしょうか)

リオネルはベンチから立ち上がると、ローズマリーの前に跪く。

手をそっと掬うように持ち上げた。

リオネルの行動が理解できずに、ローズマリーは首を傾げた。

「リオネル殿下、どうしましたか……?」

「ローズマリー。今は信じられないかもしれないが、僕は君を利用しようだなんて思っていないんだよ」