軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

7 イーサンとお出かけ

私は九歳になった。

私とイーサンは今日、市場での買い物を頼まれている。母から頼まれたボタン、塩、香辛料をあれこれ。その他に「服を買っておいで」とそこそこのお金を渡されている。

人が来ない農園で暮らしていた頃は動きやすく洗いやすい服を母が縫ってくれていたが、王都に住むとなれば農民といえどもその服は少々みすぼらしいのだと言う。母によると今の我が家はまあまあ豊かになっているから人並みの服も買えるらしい。

イーサンは私の護衛のつもりなのか、小さな手で私の手をつないで離さない。実にかわいい。

頼まれた買い物を手早く終わらせて、私は古着屋を探した。大通りから一本入った通りには何軒かの古着屋があり、天井までぎっしりと服が並べられている。

「一番上の段の水色のを見せてください」

「あいよ」

店のおじさんは長い棒の先にフックがついた道具で天井近くにぶらさげてある水色のワンピースのハンガーを引っ掛けて大量の服がぶら下がっている棒から外して下ろしてくれた。

「初めてのお客さんだからサービス価格で小銀貨二枚にするよ」

「二着買ったら割引きしてくれる?」

「おや、しっかりしてるね。いいよ、二着で小銀貨三枚でどうだい?」

「じゃあ、この白いワンピースもお願いします」

「はい、まいどあり!」

肩から下げた大きな布のバッグからお財布を取り出してお金を払い、畳んだワンピースを袋にしまう。外出する時は日除けのために頭からすっぽりと白い布を被るけれど、中は動きやすいシンプルなワンピースを着ることが多い。

「さあ、次はイーサンの服を買うわよ」

「俺はいらないよ」

「だめ。今日はきれいな服を着たほうがいい場所に行くんだから」

母には新品の服を買いなさいと言われてお金を貰っている。だから古着を買って浮いたお金でイーサンの服も買えるし図書館の料金も払えるはずだ。

「このシャツとそこのズボン、それとこのサンダルもお願いします」

イーサンの服を隣の男性用古着屋で買う。

古着屋で買い物をするのは初めてだが、よく選べば十分に良いものが手に入るようだ。イーサンには白い麻のシャツと濃い灰色の膝丈のズボン、革紐で縛るサンダルを買った。

持参の布でイーサンの衣類と靴を包んで彼に持たせ、私達は公園の木陰に入った。

「今買った服に着替えて」

「俺?ここで?」

「そうよ早く。次は私が着替えるから」

事情がわからないままイーサンがおとなしく着替える。以前なら絶対に嫌がっただろうに、今のイーサンは私の言うことを聞いてくれる。

イーサンが着替え終わるのを待って私も着替える。

九歳とはいえ女の子が外で着替えるのは大問題だが、私は被っていた白い布をマントにして首から下を隠しながら手早く着替えた。

「終わったわよ。見張りをありがとう」

「わあ。アレシア、お嬢様みたいだ」

「これから行くところでは良いところのお嬢様と弟っていうつもりでいてね。余計なことは喋らないで。いい?」

「わかった」

「それと、そこに行ったことはまだ母さんたちに言わないで。そのうち私から言うから」

「わかった」

私は子分と化したイーサンを引き連れて公園を抜け、王宮の近くにある図書館へと向かった。

王立図書館は白い壁の品の良い建物だった。二階建てくらいの高さの中は全部吹き抜けになっている。

「初めてここを利用します」

受付の男性の前で私は上品なお辞儀をした。

受付の若い男性は子供二人だけの私たちを見て怪訝そうな顔をしたが、素早く私の身なりに目を走らせ、様になっているお辞儀を見て安心したようだ。

「ここに名前と住所を書いてください」

差し出されたカードに私が二人分の名前と住所を書いて差し戻すと、男性は「本を汚したり破いたりすると罰金ですから注意して」と言い、私とイーサンの利用許可証を作ってくれた。利用料金は一人につき大銅貨四枚だ。私は八枚の大銅貨を差し出した。利用料金の分は多めに残してあった。

「アレシア、ここが図書館?」

「そうよ、おしゃべりはひそひそ声でしてね。静かにしなさいって注意書きがあるわ」

「アレシアは字が読めるの?」

「ええ。勉強したから」

「ふうん」

本当は前世の知識があるから読めるのだが。イーサンは少し悔しそうな顔で私のあとに付いてくる。そうだ、この子に字の読み書きを教えてあげよう。

図書館では主に男性が本を読んでいた。女性は少ない。子供は私たちだけ。

まずはイーサンが退屈しないように動物図鑑と植物図鑑を選び、次に自分用にこの国の歴史書を三冊選んでから中央の机で読むことにした。この建物からの本の持ち出しは禁止だそうだ。

イーサンは生まれて初めて見る図鑑に夢中だ。よしよし。

私は歴史書を開き、自分の処刑後の歴史に目を通した。

(なんてこと!)

自分が処刑されたあとのシェメル王国の歴史を読んで、私は心底驚いた。